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その願い事、晒し者につき

七夕から一時間四十五分ほど遅くなりましたが、七夕ネタです

「タナバタ? あぁ、東国のイベントだよな」

 ロリサメの出身である東の国には独自の風習があり、タナバタというイベントもそのひとつだ。

「ご主人様、ご存知でしたか?」

 ロリサメにしては珍しく驚いているようだった。

「タードってよくわからないことをどうしてか知ってるのよね」

 シエルがロリサメが持ってきた笹を見ながらつぶやくように言った。

「どういうわけか、俺の前世は知識を詰め込んでいたらしくてな。東国の風習についてもある程度は把握している。ところで、シエル、お前は何をしているんだ?」

「あ、タードもこれは知らないの? このネマガリダケの笹は笹の中でも珪酸が少なくて歯ざわりがいいのが特徴なのよ」

 とシエルが笹を口に咥えながら自慢げに言った。

「シエル、あまり笹を食べるなよ。この笹はタンザクというものに願い事を書いて吊るすためにあるんだ。決してタナバタの日にだけ食べるおやつじゃないぞ」

「え? そうなの?」

 本気で笹のことを食事と見ていたらしいシエルが驚いて尋ねた。

 ロリサメが頷く。

「はい。こちらの短冊という紙に願い事を書きます。短冊は私が稼いだポイントを元にご主人様に購入していただきました。皆で願い事を書きましょう」

 と言って、シエルは計十二枚のタンザクを取り出し、うち三枚ずつを俺に渡し、そして三枚は短冊に吊るした。

「ロリサメ、そのタンザクは?」

「こちらの短冊はアドミラさんにはもう書いてもらいましたので」

 へぇ、アドミラの願い事か。

 少し気になるな。

 俺はタンザクを見る。


【タードのセクハラが少しマシになって欲しい】

【野菜に美味しく育ってほしい】

【■■■■■■■■■■■■料理が上手くなるように】


 三枚目は何か書いて消しているな。

 でも、こういうのって大抵裏から覗けば丸見えだったりする。

 そして、消された内容はこうだった。


【タードがあたしの料理を美味いと言って欲しい】


 うん、いいな。アドミラの見え見えなツンデレ成分がきっちりタンザクにも書かれている。

 さて、俺も万年筆を使い書くとするか。

 と思いながらも、ロリサメのタンザクを覗き見る。


【無病息災】

【家内安全】

【武芸上達】


 ……優等生すぎるな、本当に。

 武芸上達が一番力強く書かれている。

 これはオチとしては弱いなと、俺はシエルのタンザクを見ることにした。


【毎日美味しいご飯が食べたい(二日に一回でもいいです)】

【タードに真面目に働いてほしい】

【胸が大きくなるように】


「うん、これぞシエルだ」

 俺が思わず頷くように言うと、シエルが顔を赤くして、「もう、タード、見ないでよっ!」と隠すように言った。

 あとで笹に吊るして飾ることをこいつは忘れているのだろうか?

「タードは何を書いたの?」

「今から書くんだ。まぁ、俺はお前等と違って願い事というのとは少し違うがな」


 と俺はタンザクにその文字を書いた。


【俺の思いのまま生きる!!!】

【変な願い事を叶えて俺の邪魔をするな】


 俺の願い事は俺自身で叶えるからな。そして、最後に、


【シエルにほどよく不幸がふりかかるように】


 と書いてやったら、シエルにしこたま怒られた。

 全く、シエルには適度な不幸があったほうが最終的に幸せになれることに気付いていないのだろうか?

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