その果実、とても食べ頃につき
シエル、ロリサメとセクハラ――もとい紹介をしてきたので、次はクワメイドを紹介しないといけないだろう。
「ということで、クワメイドはどこだ?」
ベビースライムをぷにぷにと弄っているシエルに尋ねた。
「アドミラ? アドミラならゴブリンの村にいるわよ」
俺に視線を向けず、シエルはそう答えた。
「ゴブリンの村? なんで?」
「ゴブリンに野菜作りの指南をしているみたい」
……本当にあいつは農作業が好きだなぁ。
でも、ゴブリンの村か、ちょっと厄介だな。
理由あって、俺はゴブリンたちに嫌われている。本当に些細な理由なのだが、配下のくせにゴブリンたちは俺の命を狙ってくる可能性もあるから、あまり近づきたくない。
「些細な理由って、ゴブリンの子供を人質にとって脅して仲間にすれば、そりゃ嫌われるでしょ」
「うるせぇ。そもそも俺ってゴブリンの言葉も知らないんだよ。ということで、シエル。俺を頭に乗せて行け!」
「ねぇ、アドミラに急ぎの用がないなら、アドミラが帰ってきてからにすれば?」
「急ぎの用はあるんだよっ!」
「急ぎの用って?」
「あいつの胸が揉みたい」
「……私、今ベビースライムを弄るのに夢中だから――ってきゃぁぁぁ、タード、お願いだから溶解液を吐くポーズをしないで!」
「わかったら俺を乗せてとっとと行きやがれ」
と俺はシエルの頭に乗っかる。
こいつの帽子は突起物がふたつついてはいるが、乗り心地はかなり安定しているからな。
あと、曲がりたい方向に引っ張れば、シエルが自動的に曲がる仕組みに――
「タード、私の帽子は手綱じゃないからね」
先手を打って言われてしまった。
やるな、シエルのくせに。
迷宮の出口のうち、裏口に当たる場所から外に出るとすぐのところにゴブリンたちの村がある。
シエルの魔法のおかげで完成した土壁の家が並んでいる。
そして、第一ゴブリン発見だ。
毛のない猿のような外見、赤いターバンに革の腰蓑のみという原始的な姿のそいつは、森で採ってきたらしい山ぶどうをザルのようなものに入れて運んでいた。
「よぉ、精が出てるな」
俺が声をかけると、ゴブリンは歯茎を見せて威嚇して、何かを言ってきた。
「凄い歓迎だな。ゴブリン特有の挨拶か?」
「『お前に飲ますゴブ酒はないぞ、とっとと帰れ』って言ってるわよ」
「ならこう言ってやれ。そんなもん飲まなくてもこっちはポイントでワインを飲めるからいらねぇよって」
「嫌よ、そんなの――」
シエルが口答えをしたので、触手を伸ばして額をぺしんと叩いた。
ちなみに、ゴブ酒とはゴブリンが噛んで吐き溜めた山ぶどうが自然に発酵してできる酒のことで、マニアの間では珍酒として扱われている。
味は渋味が強く、市販のワインと比べると天と地ほど不味いそうなのだが、その渋味がいいと言う人間も多いそうだ。
「それより、アドミラに会いにきたんでしょ?」
「あぁ、そうだった。アドミラはどこにいるんだ? って聞いてくれ」
「わかったわ」
とシエルがゴブリンに尋ねると、ゴブリンはシエルに対しては笑顔で、
「お前に話すことなんてないって言われたか?」
「普通に教えてくれたわよ。ねぇ、タード。いい加減にゴブリンと仲直りしたら?」
「仲直りもなにも、こいつら全員俺の配下だからな。頭を下げるのはこいつらの方だろ」
「……もう……みんないいゴブリンなのに」
とシエルは口を尖らせて言った。
そして、シエルの案内された先に彼女がいた。
金髪ツインテールの美少女。白と黒を基調としたメイド服を着ていて、その巨乳っぷりは服の上からでもよくわかる。
精霊ニンフであり、アドミラ・シオンの名を持つ少女は、今日も元気にクワを振るっていた。
クワメイドの二つ名は伊達じゃない。
「お? タードじゃないか。何しに来たんだい?」
一応俺を敬っているようだが、相変わらず乱暴な言葉遣い。まったくもってメイドらしくないが、丁寧な言葉遣いはロリサメの役割でもあるからバランスを考えるとそれも悪くないと思っている。
「用事がなかったらこんなところに来ない――アドミラ、お前の口から、お前の横にいる奴らに言ってくれ。武器を下ろせって」
鉄製のクワを持ったゴブリンが俺に対して威嚇している。
超硬化を持っている俺にとってあの程度の武装は屁でもないが、いい気分はしない。
「わかったよ、ちょっと待ってな」
とアドミラはゴブリンの言葉で何かを説明。
「よくあんな複雑な言葉を覚えたよな」
「慣れよ、慣れ。タードもゴブリンと一緒に生活してみたら?」
「色気も何もない生活は断る。シエルと一緒にいた方がまだマシだ」
「マシって……」
シエルが嘆息をついている間に、話は纏まったらしい。
ゴブリンたちが散っていき、俺たちだけが残った。
「もう大丈夫だよ」
「そうか、じゃあ早速だが、尻を揉ませろ」
「……え?」
自分が何を言われたのかわからなかったようで、アドミラが一文字で疑問を投げかけた。
「俺はお前の魅力的な胸ばかり揉んでいて、尻を揉んでいないことに気付いてな。俺は胸が好きだが、尻が嫌いというわけではない」
「まぁタードがそういう奴だってのはあたしも理解していたけどね――トマト食べるかい?」
「あぁ、投げてくれ」
とアドミラが畑に実っていたトマトをもいで投げた。
それを俺は触手でキャッチしてそのまま体の中に取り込んだ。うん、みずみずしくていいトマトだ。
「おいしいだろ? 秋にはスウィートポテトも収穫できるようにするつもりだよ」
「ポテトか。それもいいな――便秘解消になるらしい」
「スライムって便秘とかなるのかい?」
「どうなんだろうな? 溶解液が詰まったりしたら困るが」
と俺が考えていると、アドミラは、
「じゃあ、続きは夜ってことでいいかい?」
「だな。ぶっちゃけゴブリンの村でセクハラしても俺が落ち着かん。そうだ、夜はお前、屋敷の自分の部屋にいろ。夜這いというのも楽しみだ」
「わかったよ。じゃあ牛乳でも用意して待ってるからね」
「おう、必ずだぞ」
と言って、俺はシエルの頭の上に乗り、迷宮へと戻っていく。
これが俺とクワメイドことアドミラの日常。俺と彼女の間でセクハラ行為はもう日常茶飯事だ。
今日は父の日で乳の日なのでアドミラが担当です
と言っても、2017年6月18日段階では、この小説は一般公開されていないので、読者の一人満足なんですけどね
ちなみに、おっぱいの日は8月1日で、いいおっぱいの日は11月08日、
パイの日は3月14日(円周率=パイ)だそうです。