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『GLアイドル』外伝「そして第二の……」

「あ~、嫌になっちゃうよなー。こういうの見ると」


 その日、タレント事務所ゆうきプロダクションの会議室に集った女性アイドルグループ『ラビッツ』のメンバー、竜堂りゅうどうアキラは深いため息をついた。


「どうかしたの」


 隣に座っていた、雪のように白い肌をした華奢きゃしゃな美少女、瀬能せのうりんが声をかけた。


 褐色の肌に、整髪剤でツンと立った緑色のミディアムヘアーが野性的なアキラと、白肌に、ピンク色の髪をゆるりとポニーテールにしたりん。


 一見すると、お互いに共通点はなさそうに見えるが、なぜかグループの中でも近くにいることが多い。


「これ見る? りん。あんまりいい気分しないと思うけど」


 そう言いながら、アキラが自分の携帯に表示されている画面を見せた。


 そこには、SNS上で、『ラビッツ』メンバーへの誹謗中傷や卑猥な単語がずらりと並んでいる。


「……ひどいわね」


 りんが眉根をひそめる。


「あかんでー。そんなん、ブロック、ブロックや!」


 アキラとりんのやり取りを、先ほどからちら見していた、加賀亮子かがりょうこが話に割って入ってきた。


 関西弁を扱う、姉御肌のしゃきしゃきとした性格の亮子は、こんなのなんてことない、とばかりに手を伸ばして、アキラから携帯を奪おうとする。


「取・る・なー!」


「ブロックするだけやん。別に他のとこいじらんし」


 アキラに阻止され、ちぇっと口を鳴らし、自慢の長い金髪をくるり、と指でもてあそんだ。


「亮子に渡したら、きれいさっぱり私のアカウントごと消されちゃうよ」


「失礼なやっちゃ」


 そんな二人を、ぽつんと見守るりん。取り残された感はあったが、不思議と温かい気持ちがふわりとわいた。


「まっ、想定内のことよ。グループ五人で再出発、って言ったって、スキャンダルグループっていうレッテルが簡単にはがれるわけじゃないわ」


 状況を把握した林理央はやしりおが、うざったそうに言う。


 茶髪でボブヘアーの、はっきりとした美少女顔のこの少女は、だが見た目でぽわんとなると痛い目を見るほどの、きつめの性格だ。


 ガールズアイドルグループ『ラビッツ』は、元々八人組で、みんな十代のメンバーで構成され、人気を博していた。


 だが、三人ものメンバーが立て続けに異性スキャンダルを起こし、人気は急降下し、CDを出すのも危うい状況に追い込まれた。


 結局は、スキャンダルを起こしたメンバーたちは話し合いの末、脱退し、五人組として再出発したばかりだ。


「ワタシたちへの評価は、マイナスからのスタート。それは、覚悟の上」


 五人目のメンバー、氷上ひかみコウが、毅然きぜんと言い放つ。


 モデル体型のすらりとした高身長で、銀髪ショートに、ブルーのカラコンをしているこの少女は、そのクールな外見とうらはらに、熱い意志を秘めている。


「それはわかってるけどさー。私たちは、スキャンダル起こしてないじゃん!」


 納得いかない、という顔をするアキラ。


「客からしたら、同じに見えるでしょうよ。あたしたちは、やってませんって言ったって、それ信じられるかっていう話」


 理央が、努めて冷静に言った。


「そういう不満が、ネット上に渦巻いてるのね。……わたし、怖い」


 りんの表情がくもる。


「有名になることの負の側面やな。……でも、うちらを応援してくれる人たちも、まだいる。そっちを見て頑張るしかないで」


 亮子の目に、闘志が宿っている。


「そう。すべての人たちに好かれるのは無理だし、なる必要もない」


 コウはそう言って、歯を食いしばった。そんなコウの姿を見て理央は、


「……そうは言っても、傷つくけどね。人間だから」


 小さく声にし、コウの背中をゆっくりとさすった。


「めげるなー! 若人わこうどー!」


 会議室のドアが、バーンッと開く。


「プ、プロデューサー!?」


 突如、出現したその女性の迫力に、メンバー全員がしゃきっと背筋を伸ばした。


「誹謗中傷なんのその。ざっしゅざっしゅと踏みならして、上向いていくのよ!」


「……はいっ!!」


 一同が声をそろえた。


「よろしい。それでは、あなたたちに、このグループの新しい売り出し方を提案するわ」


 先ほどまで暗くなっていた会議室の空気は一変した。


 『ラビッツ』の未来を見据えた話がこれから始まるのだ。


「それは…………」


 敏腕プロデューサーが提案したその先の言葉に、メンバーは全員唖然とする他なかった。

プロデューサーの提案とは?

→ヒント:タイトル

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