ショートショートII「葉書」
誰かがそっと流したのでしょう。たくさんの空きビンにまじって、浜辺でビンが月の光を受けて輝いていました。
あてもなく歩いていた女の子が、それを見つけて手を伸ばします。女の子が掴むと、冷たかったビンはだんだんと温もりを持っていきました。
中には牛乳色をした葉書が入っていました。女の子はビンを開けようとしましたが、開きません。それでもなんとか葉書を読もうとして、ビンの外から眺めました。
しばらくして女の子はうなずくと、メモ帳を取り出して、ゆっくりと破りました。鉛筆で何かを書き付け、そばに落ちている空きビンに入れました。海にビンを入れたあとには、波のかすかな音だけが繰り返されています。
女の子は月明かりのもと、いつまでもビンを見送っていました。