2-1 オーダーメイド
7月23日
向条は今今はもう使われていないガレージにいた
あの日、7月16日
向条と喜誉はスクラップ置き場を見終わり、二人で滝斗のところに向かった。
それは頼みごとがあったからだ。
1つ目は、一応の車を決めたため、場所と工具を貸してほしいこと
2つ目は、どこに手を入れればいいか教えてほしいこと
最後の3つ目は、 乗りたいと思う車を探してほしいこと
滝斗にこの事を話すと快く了承してくれた。
その後は車の制作方針を決め、機材と車を運び出し週末に作業するというものだった。
しかし一つだけ問題があった。
「裏のハチロクはどうするんです?」
「裏にあったハチロクレビンか、アレは使い物にならないぞ? 外見はなんとかなりそうだがエンジンフレームにクラックは入ってるわボディももうさび付いてるからな。」
--アレはもう抜け殻だ。最後にそう呟いた
しかしそうなるとハチロクをどうするのだろうか
裏のスクラップには原型を留めていない事故車しかほかに無い
「なぁ、たっちゃん。奥にあるハチロク使えばいいんじゃないのか?」
喜誉は口を挟む
すると滝斗は手をたたいて何かをひらめいたようだった。
「そうか!、確かにアレならもう使わないからな、週末にまた来い。3ドアだがいいもん用意しといてやるから」
そういって家に帰り、週末にまたきたというわけだ
店に行くと滝斗が待っていた「よくきたな」と言った。
するとすぐに滝斗は工場の奥へ2人を連れていく
そこには最近ではあまり使われていないガレージがあり、その傍らにブルーシートが掛けてある、車。があった
これだ、といって滝斗はブルーシートを取る
その下には30年前の車にしては信じられないほど綺麗なホワイトの2ドア前期型ハチロクレビンGT-APEXがあった。
「どうだ?綺麗なもんだろう?」
自慢げに滝斗は言う
しかし向条はそんな声は耳にも入っていない
ただ見とれていた
ハチロクとしては新車並に綺麗だろう
外見を一通り見て回るが錆一つ無い
それどころかダッシューボードの割れはもちろん、内装は日焼けによる色あせ、シートの擦れすらないような極上物だった
ホイールも純正のものが付いていてこれまた綺麗すぎて不自然なくらいだ
そこまで見ると次はエンジンを見てみたくなった
しかしエンジンルームを見ようとすると滝斗は様子を伺ったのか口を開いた
「残念ながらコイツのエンジンは無いよ」