2-7 オーダーメイド
夕飯を済ませ、向条はシャワーを浴びることにする。
(早めにシャワー入って帰ってきたらすぐ寝れるようにするか)
正直所々油まみれで気持ちが悪いというのもあるのだが・・・・
向条はふと滝斗達が言っていたことを思い出す。
(峠・・・か・・)
向条は正直どんなものなのかは想像がつかない、なんせつい先月まで何もそんな世界に興味など無かったのだから。
それ以前に、あの車の事が気になってしょうがない
素人ながら自分なりにも努力はした。滝斗だって精一杯力を注いだだろう。
しかしそれでもエンジンは目覚めるだろうか。
実際まだエンジンは掛けていない
普通なら真っ先に掛けるであろう、だか向条がそれを止めた。
何故だか今このエンジンに灯をともすべきではないと感じたのだ。
走行しているうちにシャワーから出ると時刻は8時20分を回っていた。
少し急ぎ目に準備をしていると外からクラクションが聞こえる。
多分滝斗だろう。
家から出るとそこには赤いKP61スターレットが停まっていた。
後部座席に見慣れた顔と運転席には最近知り合った顔がいた。
「コウちゃん、早く隣に乗りなよ」
軽く頭を下げつつ車に乗り込む。
「じゃあショップに向かうぞ。そうそう、お前さんのハチロクだが暫定仕様でセッティングをしておいた。コンピューターはフリーダムを使ってる。代金はいいからな、どうせお古だ。」
フリーダムとは学習機能を持ったコンピューターだ、ハチロクの古いお馬鹿の頭脳では話にならない、ハチロクには定番過ぎるほど使われている。
そんなこんなの話をしているうちにショップに付いてしまった。
峠でシェイクダウンという事だ、カウンターから滝斗は二つのキーを持ってきてくれた。
トヨタのキーホルダーとが付いたハチロクのキーと何もついていない灰村のR32のキーだ。
「たっちゃん、俺は表にR32持ってってるよ」
「分かった、じゃあコウちゃん。ハチロクの復活といこうか?」
これからあの`心臓`に、`エンジン`に灯を入れることになる。
ガレージに向かうと、
一台の`ハチロク`が、
そこに眠っていた。