未来の終点
「暑い……。」
朝、8時半だというのに全身から汗が吹き出してくる。
今日もこれから仕事か……そう思うと足が重くなる。
僕は飲食業の仕事をしている。
わかりやすく言うとファーストフードだ。今年の春、バイトから社員になった。
ずっとフリーターをしていた僕に店長が声をかけた。
「社員になってみないか?」
その言葉で僕の人生は変わった。
お世辞にもいい就職先とは言えなかった。
給料は少ないし、労働時間は長い。
それに暑い。でも自分に合っている仕事なのか、嫌だとは思わなかった。
しかし今日はいつもより暑い。
仕事に行く道さえも苦痛に思えた。
「あちぃ………。なんとかしてよぉ!」
無意味な独り言を言う。昨日までの雨が湿度を上げて余計に暑い。
職場についた。
ドアを開けたら冷たい風が体を吹き抜けた。
「うぉぉ!涼しいじゃん!」
「おはよう!今日は暑いねぇ!」
パートの真下さんがいた。どこにでもいそうな普通のおばさんだ。
ただファーストフードで働いているおばさんはなぜかみんな元気で明るい。なぜだ?
「なんか疲れた顔してるねぇ!若いのに!」
僕は今20歳。
若くても疲れるっつうの!
「暑いからじゃないっすかねぇ?」
僕は仕事を始める準備をしながら言った。
準備といっても帽子をかぶるだけだけど。
「今日は店長がいないからきっと大変だよ。」
この店の社員は二人だけだ。店長と僕だけしかいない。
「よしっ!俺の店!」
っと小さく喜んだ。
高木昌と書いてあるネームプレートをひっくり返した。
これで今日は仕事に来てますよっ!と言う合図だ。あまり意味のないシステムだ。
今日も仕事が始まってしまった。
いや、始まった。
お客さんの出入りは激しく朝から好調な売り上げだ。
あんまり売り上げが悪いと店長に軽くもんくを言われる。
そんなの知らねっつうのに。
でも今日は安心だ一時間ごとの目標売り上げをすべて上回っていた。
二時半になり、やっと一時間の休憩をとることができた。
「今日も彼女のお弁当ですか?」
僕の一個下のバイトの女の子が話しかけてきた。清水未来だ。
真ん丸な目が印象的な明るい子だ。
「別にいいじゃんか!」
僕は照れ笑いを浮かべながら言った。
「毎日お弁当を作ってくれるなんて優しい彼女なんですね!」
「節約好きなんだよ!別に作ってほしい訳じゃない。」
僕には二年近く付き合っている彼女がいる。
それで今年の始めに同居することになった。
家賃49000円の狭いアパートだけど別に不満はない。
僕はそれ以上その話しをしているのが耐えられなくなったので、テレビをつけた。
画面の中ではニュースキャスターが慌ただしくニュースを読んでいる。
一瞬、またテロか?そう思った。
だけどどこか違う様子だった。 その時、
「高木くぅん!ちょっと混んできちゃった!手伝って!」
真下さんに呼ばれた。休憩中でも忙しくなったら手伝いに行かなくてはいけない。
「はぁい!」
めんどくさっ!心の中でつぶやいた。
テレビのスイッチを切って手伝いに行った。