婚約者は、義妹を初恋の君と思っている。
名前を借りました
フィクションです
私の初恋の人は、義妹を初恋の君だと思っている。
せっかく初恋の人エキスカ王子と、婚約できたと思ったのに…
婚約者の私ヘーベルより、義妹のコントラを見つめる王子の目が、とても優しい。
私とのお茶会に割り込んでくる金髪で水色の目のコントラに、いつも話し掛ける金髪で紺色の目のエキスカ王子。茶髪に茶色の目の私とは話さない。
これでは、どちらが婚約者が分からない。
「君と、ここで出会ったね」
エキスカ王子が、庭を散歩しながら言った。
「そうだっけ?そうかも」
隣を歩くコントラは、適当に返事した。
花が咲き誇る庭のベンチに座り、婚約者と義妹の話を、聞くとはなしに聞いていた。
コントラは、その時はまだ、この邸にはいなかったでしょ。
とは言わなかった。
「ここで、よく2人で話したね」
エキスカ王子は、応接室のソファに座ってお茶を飲みながら言った。
「そうね」
コントラは、また王子に合わせて適当に答えた。
エキスカ王子が思い出話をするたびに「それは私です」と言いたくなるが、今のエキスカ王子には何を言っても無駄だろう。
コントラが初恋の君の振りをしているから余計に。
王子は、私とは話をしないし、目も合わせない。初恋の君と思い込んでいるコントラを好きなのだ。
だから、初恋の君との恋を邪魔する、婚約者の私が嫌いなのだ。
いつか、本当の事を知る日が来るのだろうか?
その時、2人はどうするのだろう?
最初は、2人は、物陰に隠れて抱き合っていたが、段々と人目を憚らなくなってきた。
「お義姉様〜エキスカ様をちょうだい!愛し合ってしまったの!」
コントラは、王子と初めて会った日に、一目惚れしたものね。
エキスカ王子も、コントラが美人だったから『コントラが婚約者なら良かったのに…』と呟いたことは忘れない。
だから、段々とコントラを初恋の君だと思い込んでいったのだ。そして、コントラが初恋の君だと確信してしまった。
私は、これ以上2人を見ているのが辛くて、王子とは婚約を白紙にし、他の男と結婚した。
しばらくして、コントラとエキスカ王子が婚約した。
※※※
「初めて会ったのは、ここだったよね?」
初恋の君で婚約者のコントラ嬢に、私エキスカは思い出を語る。
ここは、ルートチップ邸の玄関前。門から玄関までの道の横に、花壇の花が咲き誇っている。
「はい」
笑顔の彼女。
コントラ嬢と婚約できて良かった。
あれ?違う…
初めて会ったのは庭だ…
泣いている女の子に、庭で出会ったのだ。
王城に戻り、執務をしていると、ふと思い出した。
今までも、色々と話していて違和感があったので、元婚約者のヘーベルに聞いてみることにした。
ヘーベルを王城に呼び出したのだ。
※※※
「8年前、ルートチップ邸の庭で、こっそり泣いていたのはコントラだよな?」
他に誰かいる?との意味を込めて言う、コントラしかいないと思い込んでいるエキスカ王子。
わざわざ呼び出して、それか。
「あの子は、5年前にルートチップ家に来たのですよ」
私は答えた。
「え!?」
驚く王子。
「あの子が邸に来たのは5年前です。8年前に母が亡くなり、その後、後妻とともにやってきました」
母が亡くなり、庭で泣いていた私に優しく声を掛けてきたエキスカ王子。
王子の母である側妃様が、私の母と友人だったから、お忍びで私の様子を見に来た時に、王子も連れてこられたのだ。
その後、父が再婚し、連れ子の義妹ができた。
「え?じゃあ、私の思い出の令嬢は…!?」
やっと分かったの?
「私ですね」
私は真顔で言った。
「え…!?嘘だろ?」
「あの時に邸にいたのは私だけです」
「何故言わなかったんだ!?」
「何故言わなかったか?殿下がコントラとずっと一緒にいて、私の話など聞かなかったからです」
私を無視していたじゃない。私は呆れて王子を見た。
「そんな…」
「私が殿下の思い出の令嬢だと言って、信じましたか?」
「…それは…」
「コントラを初恋の君だと思い込んでいたでしょう。言っても無駄だと思いました」
「言ってくれれば…」
言ったらどうなるか。
「嘘つき呼ばわりなさったでしょうね」
「…どうしてだ?私の初恋の君の話はしていただろう!?何故自分だと言わなかったのだ!?」
「私とは話をしないし、目も合わせない。貴方はずっとコントラのそばにいてコントラとだけ話していましたね。私の婚約者だったのに」
それで、どうやって話せと?
嘘つき呼ばわりされるだけだ。
つまり、王子のことは、全く信頼していない。
「初恋の君の振りをしていたコントラの話しか聞かなかったでしょう?」
自分のしたことを思い出せ。
「それは…」
王子は目を逸らした。
「王子との出会いは、私にとっても大切な思い出でした」
「それなら…」
やり直せるとでも思ったのか?
王子が一目惚れしたから、と、側妃様が、わざわざ身分が低い私と婚約させたのに。
いつの間にか、初恋の君をコントラだと思い込み、台無しにしたのは王子なのだ。
「私は今、きちんと私の話をきいてくれる人に大切にされ、愛されて幸せに過ごしています。貴方は、もう過去なんです」
だから、もう話し掛けないで。
「そんな…」
愕然とする王子。もう手遅れなのよ。
「いつまでも過去に縋ってないで、現実を見てください」
「待ってくれ」
「どうぞコントラとお幸せに」
私は、王城の応接室を出た。
結局、王子は別の、侯爵令嬢と結婚した。
コントラは身分も低いし、マナーも常識も知らなかったから、王子妃には相応しくない、と、国王や大臣達から反対され、王子妃に相応しい令嬢が選ばれたのだ。
初恋の君ではなかった、と、捨てられたコントラは、領地に引き籠もった。
どうでも良い王子のことは忘れて、私は愛する夫プローブと、幸せに暮らした。
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