根菜なのに簡単!冬の小カブの育て方
いよいよ、「家庭菜園を始めたいあなたへ」も最終回となった。今まで紹介した作り方の中に、役に立ったよ暇庭!というものがもしあれば、それ以上に嬉しいことはない。
さて、最終回にあたって何を紹介するか?実は悩みに悩んで丸2日書き始めることができなかった。
なるべく今始められるもの……と考えていたが秋冬から始める野菜は実はそんなに多くなく、さらに言えば簡単なものが少なかったりする。ほうれん草……うーん小松菜の二番煎じでは……そら豆……うーん難しいし種まきにはもう遅い……。
煮詰まった結果ちょっと別のことに集中しようと昨日の午後からわが家の里芋を袋詰めし、直売所へもっていった。
答えはいつだって売り場にあるものだ。見つけたのだ。トリを飾る野菜を。
「冬カブ!これだぁ!」
北国である私の暮らす地域では、冬カブをわざわざ作る人は少ない。けれど、年末年始の縁起物としてカブをかつお出汁でゆっくり柔らかく煮て、「病をカブらない」だとか「冬(富裕)の根」だとか、そういう言葉遊びで食べたりするのだ。また、冬のカブはおいしいし、特に小カブは野菜の中でも数少ない、いつでも思い立ったときに始められるとても優秀な野菜だ。この連載の趣旨に立ち返る意味でも、小カブの育て方を書こう。そう決めた。
いつものことだが前置きが長くなった。早速初めていこう。
まずは資材から。
8リットルか、それ以上の大きめのプランターを用意したい。カブはかなりスペースを取る野菜なので、プランターが大きいほうが収穫できる数が多くなる。
それから、もはやレギュラーとなった野菜用培土。6リットル以上の体積が確保できればOK。そして今回は準レギュラーの腐葉土も使おう。これは2リットルくらい。そして肥料は今回は何の野菜にも使える液肥を使う。カブは成長もなかなか早いのでゆっくり効く肥料だと間に合わなかったりする。
カブの種はなるべく、「時なし」と書いてあるいつでも蒔いて構わないものを使おう。これがカブのいいところ。ほぼ1年間、プランターならいつでも始められる野菜なのだ。また、大概は小カブの種を扱っているが、地域によってバスケットボールのような大きさになる大カブの種もあるようだ。大きいとさすがにプランターには収まらないので必ず小カブにしよう。
さあ、資材を揃えたら、土づくりだ。野菜用培土6リットルに腐葉土2リットルを混ぜ合わせる。よく混ざったら、今回は種まきより前に液肥を土に混ぜてしまう。水1リットルに大さじ1くらいの液肥を入れて薄め、土に混ぜ込む。混ぜ込んだら二晩放置して土と腐葉土、液肥をなじませよう。
今回特例で肥料を先入れするのは、カブは同じアブラナ科の小松菜と違い、たいへん肥料が好きな植物だからだ。
野生に育つカブの原種は、たっぷり肥えた肥沃な土でとても早く育ち、栄養を蓄えてすぐに花を咲かせるようにする生存戦略をとっている。ちゃんと比べたことはないが、体感だけならアブラナの仲間で最速で花が咲いて種ができるのはカブだ。そのスタートダッシュ用の肥料を用意してやるのだ。
出来上がった土にシャベルですーっと1列、深さ2センチ程度の溝を作って、種をパラパラ蒔いていこう。
小松菜の蒔き方よりももう少し間隔をあけて、根っこが太るスペースも考えながら蒔くと種が無駄にならない。余った分は冷蔵庫に入れるとほぼ1年間種として使える。
種を蒔いたら土をかぶせ、ジョウロで水やりをする。種と種周りの土が濡れればOK。
カブは発芽も大変早い。種蒔きから2日で芽が出始め、5日でほぼ出そろう。出そろったら液肥を水500mlに小さじ1杯溶かしたものを追肥する。水やりは土の表面が乾いたら湿らせる、を繰り返す。
そうこうしているうちに双葉から本葉が出てくる。ここで種蒔きから10日前後。少し早いのだが徐々に間引きをしていこう。5cm間隔ごとに1本残るように育ちの遅いものから引き抜く。まだ葉っぱだけだがカブの葉っぱはやわらかく食べるにも適する。みそ汁に入れてもいいしよく洗ってサラダに入れてもいい。寒い時期のおいしい葉物として活躍してくれる。
間引きが終わった時点で約2週間ころか。ここで2回目の追肥。500mlの水に大さじ1杯、やや濃いめの液肥を作り2日間に分けてくれてやる。これでカブらしい成長の早さがさらに促される。2日に1枚程度本葉が増えていき株そのものが大きくなる。と、種蒔きから3週間ほどすると、すでに根っこが少しずつカブの形に太り始めているのがわかるはずだ。
ここで最後の追肥。200mlの水に大さじ1杯の液肥。濃い液肥を最後に2日間に分けて与える。カブはどんどん大きくなる。種蒔きから1ヶ月で根元が盛り上がり食べる部分が見えてくる。
そして種蒔きから40日経ったらもう収穫して構わない。こう書くと種から育てて40日で食べられるカブはやっぱり生育サイクルが早いのだ。根菜の中でも最速クラスだろう。江戸時代初期までは、生育に時間のかかる大根よりも冬野菜としてカブが重宝されていたというが、なるほど頷ける。だって稲刈りでドタバタした後で作り始めても正月に間に合うのだから。
さて、育て方としてはこんな感じで、肥料の追加がやや多いだけでそんなに難しくはない。そして、冬に採れるカブは、とてもおいしいことを皆様に伝えたい。
大抵の野菜がそうだが、寒さに当たると細胞内の水分が凍らないよう糖分を溶かし込んで融点を下げる。キャベツやブロッコリーにもよく見られる現象だ。カブも例に漏れず、甘みとうまみを葉と根にギュッと凝縮し、冬を乗り切ろうとする。なので冬カブは他の季節に流通するカブと比べても断然甘みが強いし、煮物にしたときの歯触り、舌触りがきめ細かくて本当に美味い。
先ほどからしきりに煮物と言っているように、冬のカブは煮物のほうが美味い。カブの煮物は所によってはあまりなじみがないようで、漬物にするのが当然と言う方もおられるかと思う。だが、冬の甘みとうまみたっぷりのカブはぜひ、かつおかまたは昆布の出汁のみで煮てみてほしい。顆粒だしでやってもいいしめんつゆを薄めたものでもかまわないのだが、冬カブの煮物は身体を芯から温めてくれるし、なにより大根で替えの効かない味わいがある。一度でいい。やってみてほしい。出汁のうまみとカブ自身の甘みがじゅわっと広がるあの感覚は、煮物でなければ味わえないものだ。もちろん漬物にしてもおいしい。冬よりは春に収穫する、より風味の軽めなカブのほうが漬物には向くだろう。春の浅漬けシーズンに味わうカブの浅漬けもまた、季節を強く感じられる実に豊かな食のあり方だと思う。
さて、家庭菜園で採れたてを食べる、を目指してきたこの連載も、これにて全8品目の紹介を終える。
私は最初から最後まで決して優れた書き手では無かった。それでも、読んでくださった方、評価をくださった皆様、感想を書いてくださった皆々様、おかげさまで最後まで書ききることができました。本当にありがとうございました。
もちろん、野菜はまだまだ何十という品目があるし、品種を含めれば数百にのぼるだろう。私は家庭菜園についての、ほんの入り口を紹介したに過ぎない。
今まで家庭菜園をやったことがなかった方、ぜひこれをきっかけにして始めてみてはいかがだろうか。そして、もし楽しさを覚えたのなら、どんどん野菜作りにチャレンジしてみてほしい。その野菜たちは身体を支える糧に、また、心を豊かにする栄養としても、とびきりすぐれたものを私たちにくれるはずだから。
以下、5段階評価によるカブの評価
暑さに耐える力:★★★※¹
寒さに耐える力:★★★★※²
作りやすさ:★★★※³
※¹暑さへの耐性は普通くらい。32℃までは問題ないが33℃前後から成長が歪になったり影響が出始める。
※²寒さには強い。霜にあたっても平気。ただし根っこ部分が凍結する場合があるのでマイナス3℃より冷える日は夜だけ屋内に退避しよう。
※³特別な資材は要らず作りやすい。特に冬は害虫の心配が少ない。間引きと追肥の手間を踏まえて総合の評価は普通くらい。




