今から間に合う!おいしいニンニクをプランターで作ろう
見切り発車で始まってしまったこの連載だが、たくさんの人が読んでくださったようでやっぱり喜ばしい。おっさんが中学生のようにはしゃぐ姿は不審と呼ぶ他ないのだが、PV数は100を超えてブックマークも感想も頂いている。いつも本当にありがとうございます。
家庭菜園を始めたいあなたへ 第3弾は、11月10日現在でもぎりぎり間に合い、農薬いらずの香味野菜の王様、ニンニクについて話そうと思う。
ニンニクをおすすめする理由は2つある。まず1つ、ニンニクは根っこが短いこと。プランター栽培では根が長い植物ほど育てにくい。
前回のピーマンが上限ギリギリで、それ以上に根を強く深く伸ばす野菜、例えばトウモロコシなどはプランター栽培では土の量が足りないため適さないと言える。できなくはないのだが悲しいほど小さい実しかならないのでやっぱり露地栽培にするべきだ。
ニンニクはその点、根が浅く土の量はそれほど必要ない。栽培期間は長いが店で売っているような大きな美しいニンニクになるかもしれないのだ。
さあまずは資材から揃えていこう。プランターはピーマンと同じく、6リットル以上の白っぽいものをつかう。白いものがないときは、テラコッタのプランターだと温度の急激な変化を防げるだろう。ニンニクは土の中に育つ野菜なので、あまり急に暖かくなったり寒くなったりさせたくない。
使う土は、前回のピーマンと共通の野菜用培土。本格的なニンニク栽培と違い、最初に植える数の少なさもあるので、収穫量を減らす要因はなるべく避けたいところだ。
そして、ここからは新しい資材が必要だ。土とともにプランターに入れる腐葉土を合わせて買おう。ニンニクは土の中の有機物の多い少ないで大きさが変わる。どうせなら大きいものを狙いたいので、有機物である腐葉土を植える土に混ぜ込みたいのだ。
腐葉土は1リットルの使い切りから20リットルの大容量までいろいろある。今回は3リットル程度欲しい。大は小を兼ねるで大容量を買ってしまうのも1つの手だろう。
では植えるプランターの準備まで説明してしまおう。
プランターに半分、野菜用培土を入れて、もう半分は腐葉土を入れる。あふれそうなほどの量だが大丈夫。水を1リットル撒いてシャベルでこぼさないようそっと混ぜると、腐葉土が水の重みで少しずつ沈みちょうどよい量になる。
これでプランターは準備完了だ。次は種ニンニクの話をしよう。
家庭菜園でニンニクを育てる人がなかなかいないのは、ひとえに、種ニンニクと呼ばれるニンニクの球根がたいへん高価だからだ。
私が買うときはホワイト六片種を球からばらしたものを100g、種苗店で買うのだが、それで1200円を超える。八百屋のニンニクを買ったほうがいいかと頭の片隅で思うものの、結局年間トータルでは自分で作った方が安く上がる。ニンニクは虫食いもなければ病気にもかかりにくいので植えたあとが楽なのである。
種ニンニクはお店の人に聞いて、作る場所の気候に合ったものを選ぼう。
私の畑はたまたまホワイト六片種が合っているが、暖かい地域ではまた別の優れたニンニクがあるのだと聞いたことがある。
合ったものを植える方が品質、収量ともによくなるので、ぜひこの品種を!とこだわるよりは、うちの畑には何が合うんだろう?という考え方で柔軟に作った方が、後々収穫した時に嬉しい結果が待っているだろう。
さあ種ニンニクも揃えたところでいよいよ植え方に移ろう。種ニンニクの植え方は実に簡単。とがったほうが上側で根っこをむしった跡があるのが下側だ。ここは文章よりも、ネット検索してもらったほうが方向は分かりやすいだろう。
その種ニンニクを皮付きのままそっと培土の上から指で押し込んでやる。芽の部分が上を向き、ニンニクの全体が土に埋まればそれでOKだ。ニンニクは根っこが短いので、6リットルのプランターの中に10粒程度植えてかまわない。そのすべてが素晴らしいニンニクに育ってくれるはずだ。
植えたあとの世話はそんなに難しくない。芽が出るのを待ちながら土の表面が乾くごとに土の表面が濡れる程度水をくれてやればOK。約1週間ほどで芽が出てくるのが見えるだろう。
さて、ニンニク栽培の不思議なところはここからだ。ニンニクの冬越しの話である。
芽が出たばかりのニンニクは、なんと本州最北、青森の強烈な冬もへっちゃらの強い耐寒性を有するのだ。だから青森のニンニクは名の知れたブランドになっている。ヒトも頑張って育てているがニンニクもまた、己の生態に沿って精いっぱい頑張っている。2つの頑張りがうまく合わさってのニンニク名産地なのだ。
実は秋に栽培を始め、芽が出た状態で冬を越える野菜はいくつかある。私の書いたエッセイの中ではタマネギもそうだ。
百姓として毎年作っていてもやっぱり不思議だ、あんな小さな苗のどこに厳しい冬を越える力があるというのか……すげえなぁお前ら。
あっ、いつの間にか脱線してる。もとに戻そう。
プランターのニンニクは、芽が出たらその状態で冬越しさせよう。先程書いた通り芽が出ただけの状態ならどんな冬でも越えられる。逆に大きく育った状態だと耐寒性がなくなっていて枯れる。
だから植える時期が多少、遅くなっても慌てなくて大丈夫だ。11月20日くらいまでに植えられればいいのだ。芽が出たのを確認したら、あとは水不足で枯らさないようにだけすればいい。土の表面が乾いたなと思ったら、表面が濡れる程度の水をやる。それだけ忘れなければいい。
寒い冬の、正月、大寒、節分を超えて、2月の雨水、3月のひな祭りころからニンニクはぐんと成長し始める。ニンニク栽培の後半戦だ。ここから初めて、肥料をあげよう。私は何の植物にでも使える即効の液肥を薄めて使うが、生産者さんによって何を使うかは本当に色々ある。ご家庭であれば肥料無しで通してみるのも面白い。球はかなり小さくなるが、貯蔵性がぐっと増してほぼ1年間使えるニンニクが採れる。私が聞いて驚いたのは、ウチは節分の前後に尿素を使うよと言った生産者さんの話。尿素は水にすぐ溶ける超即効性の肥料で、値段も高いし、強力な効果と引き換えに使い所がかなり難しい。雪が残っている状態ではさらに難しいはずなのだが、その農家さんはタイミングが肌でわかるようで毎年素晴らしいニンニクを収穫していた。すげぇ……。暇庭が頭スッカラカンで尿素なんか使ったら、せっかくのニンニク、腐らせること間違いなしなのに。
また脱線してる。もとに戻そう。
肥料は2月20日ころに1回、3月20日ころに1回。それで私は肥料をあげるのはやめる。これは地域によっていろいろなので、これが正しいとは自信を持って言えない。ただ、4月以降の肥料はやめよう。暖かい時期の肥料は、球は大きくなるがカビによる病気を呼び寄せてしまう。欲張った果てに病気で大きくなりきれないニンニク。こんなのは本末転倒だ。
ニンニクは暖かくなると俄然勢いを増して、ゴールデンウイーク頃から少しずつ、花芽が出てくる。最初は分かりにくいかも知れないが、茂った葉っぱの真ん中からひょろ〜んと長い茎が伸びてくる。それが花芽だ。花芽はつまり、食材としてもなじみのあるニンニクの芽である。中華料理でおなじみのあの食材は、ニンニクの花芽なのだ。
ニンニクの芽は本当においしいので、食べない選択肢はない。花芽を確認したらハサミで切り取る。茹でてしょうゆで食べるのもおいしいし鶏むね肉と塩コショウでさっと炒めてもこれまた美味い。新鮮なニンニクの芽は甘みが段違いだ。食べたとき感動すること間違いなしだろう。
ニンニクの芽に舌鼓を打ったら、ニンニク栽培は終盤だ。花芽に栄養がいかなかった分、ニンニクは球が大きく育ってくる。終盤、ニンニクは日に日に大きくなり、ある日、ニンニクの葉先が黄色く枯れてくるのを見つけるだろう。おめでとう。ニンニクの半年に及ぶ長い栽培のゴールだ。葉先から黄色く枯れ始め、1週間くらいで葉全体が枯れる。根元にはうまそうな、大粒のニンニクが見事にできているだろう。
葉先が枯れ始めるのを確認したらニンニクを収穫して良い。プランターから引き抜いて、茎と葉っぱをハサミかカッターなどで切り取ると、スーパーで見かけるおなじみのニンニクの形になる。根っこは取ってもいいが、気にならなければつけっぱなしで構わない。直射日光の当たらないところで一ヶ月位、ゆっくり干す。
新鮮なニンニクも新物ならではのみずみずしさがあっておいしいし、陰干ししているとどんどんニンニクらしい強い香りが出てくるはずだ。6月はじめに収穫して、風味のピークになるのは7月はじめころだろう。
7月は夏バテの心配が出てくる時期だが、その時にごく薄切りにしたニンニクを、豆腐やナス、きのこと一緒に焼いて、焼き肉のタレで食べると、夏の常連だった夏バテもどこかへいってしまう。夏の焼き肉シーズンにも重宝するだろうし、カレーにみじん切りで入れてもパンチが出るし、ニンニクとは本当に様々使い道があって良い香味野菜だ。それを自分で育てるのは実に楽しいはずだ。
いかがだっただろうか。ニンニクは意外にも楽に作れる野菜だ。なにより、今から動き出しても問題なく間に合う。やってみようと思う方、ぜひ来年の収穫を楽しみにして、気長に育ててみてほしい。
以下5段階評価によるニンニクの評価
暑さに耐える力★※¹
寒さに耐える力★★★★★☆※²
育てやすさ★★★※³
※¹ニンニクは実は暑さには弱い。栽培期間が冬〜6月はじめなのであまり気にすることはないが、4月に高温に当たると球がかわいそうなほど小さくなる。4月に高温が予想されるときは、その日だけ日陰に移したり室内に避難させておこう。
※²本文中に書いたが芽が出たばかりのニンニクは非常に強い耐寒性を誇る。マイナス8℃でも枯れないことを経験済み。
※³初期投資が高い。種ニンニクを入れてだいたい3千円ほどか。その後は楽なので総合的には普通くらい。始めてしまえば悩むことはない。栽培期間は半年と長いため、総合的には星3つにした。




