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とにかく作りやすく暑さにも強く栄養満点、ピーマン

突然だが皆さんは、ピーマンはお好きだろうか?

年少の子供たちの嫌いな野菜として長らく君臨するピーマンだが、大人になってからは食べられるようになったとか、そもそも品種改良で食べづらさの元である苦味や青臭さが年々軽くなっていったりで、苦手を克服されるケースも多い野菜だ。


作る側としては、嬉しいことが一つ。ピーマンは本当に育てやすいのだ。暑さに強いし虫にも食われにくい。有機栽培の入門としても、まずピーマンからという場合があるくらいだ。


ということで前回に続きプランター野菜の第二弾、ピーマンを今回紹介しようと思う。小ねぎと違って今から植えるわけにはいかないが、来年の春から始めて夏のあいだずっと新鮮なものを食べることができる。


ではまずは、ピーマンに必要な資材から説明する。プランターは6リットル〜8リットルの体積が入るものを用意しよう。ピーマンは根を長く密に伸ばす性質があるため植木鉢では狭い。必ずプランターが必要だ。ピーマンは暑い時期に食べる野菜のため、プランターはなるべく色の白い物を使いたい。直射日光で根っこが焼けるのを防ぐためだ。


次に土。これも適当なものを使っても構わないのだが、ここでは野菜用培土を買って使うとしよう。採れる量が安定する。


100均ではさすがにこれらは揃えられなくなってくる。ここからはホームセンターの出番だ。東京でも十分な品揃えがあることは我が姉に聞いて確認済み。デカいリュックサックがあると大量の培土を買っても持ち運びは楽だろう。プランターはリュックサックには入らないので諦めよう。手に持って帰るのは何も恥ずかしいことではない……本当だ。恥ずかしくないったらないのだ。

あと、忘れてはいけないのは肝心のピーマンの苗を1本買うこと。最近のホームセンターではじつに良い苗が手ごろな値段で売っている。実がつきだすと晩秋に寒さで枯れるまで次々成ってくれる。ありがたいことである。


これらを春、桜が散り終えたら揃えに行こう。買い揃えたらいよいよピーマン栽培の始まりだ。


先程述べたプランターに、土を入れる。9分目までなるべくたっぷり入れよう。ピーマンは水分も肥料もそれなりに消費する性質を持つため、水分と肥料のタンクになる土の量も多いほうが楽になる。

土を入れたら平らにならして、真ん中に手かシャベルでピーマン苗の土の部分がすっぽり入るだけの穴を開け、買ってきた苗を入れて軽く土をかける。植え終わったら最初の水はたっぷりあげよう。今回は1本植えの想定なのでだいたい1リットルくらい。ジョウロがあるとなおいいが別にペットボトルで水やりをしても構わない。土が抉れないようにだけ注意だ。


植え終わったら、しばらく水やりしては様子を見る。土の表面が乾いてきたと思ったら200ml程度をくれてやる。コップならなみなみ1杯、ペットボトルなら半分より少し下ぐらいだ。


肥料をやりたいところだがプランター栽培のピーマンはつぼみが見えてから肥料をあげ始めたほうがトータルの収穫量が多くなるので、最初のうちは我慢。少しずつピーマンの背丈が伸びてきて、約20センチから30センチになると、つぼみが出てくるはずだ。そうしたらいよいよ肥料をあげる。肥料はホームセンターの店員さんに聞いても良いが、暇庭はピーマンには必ずこれと決めている肥料がある。


それは、()()の肥料。バラ用とか、花壇のお花向けとか、そういうのがどこのホームセンターにもあるはずだ。私はもっぱらバラ用を買うが、これが1番実のつき方がスムーズなのだ。


ピーマンの白い可憐な花をこれはこれで綺麗じゃないのと愛でながら、プランター1つにつき大さじ1の花用肥料をあげよう。根本にやるのではなく土の表面に均一にパラパラとやるのがいい。肥料をあげてから3〜4日経つと、花の咲くペースが上がってきているのがわかるだろう。

肥やしは1週間に1回、大さじ1の量をあげるのがいいだろう。ピーマンは肥料の消費がかなり激しい。実がつきはじめると水も大量に消費し始める。ここからの水やりは基本的に毎日。朝に500ml程度あげよう。それでも暑さでしおれるなら夕方にも500ml。するとピーマンはどんどん花を咲かせながらどんどん実るようになる。


食べきれないと感じたら肥料をあげるのをやめて、収穫も遅らせよう。ピーマンに取り遅れは存在しない。緑色のピーマンは、熟せば鮮やかな赤ピーマンになる。自分で作った新鮮な赤ピーマンのおいしさは格別だ。今までのピーマンの概念をひっくり返してくれるかもしれない。


タイトルにも書いたが、ピーマンはたいへん暑さに強い。今年の夏、わが家の畑は気温39℃を記録した。あらゆる植物が異常を起こし、暑さを嫌うトマトなどは文字通り死にかけていたのだが、そんな中ピーマンだけは葉がしおれることはあってもゴーヤと共にえんえんなり続け、暇庭家の夏の食卓をたった一株で支えきったのだ。こないだの霜でついに枯れたが、あのピーマンには感謝してもしきれない。


となると、春から栽培を始めたら夏中新鮮なピーマンを食べられるし、秋も霜が降りるまでは実がなり続ける。数ヶ月分のピーマンを買わないで済むとしたら、やや初期投資は面倒だが元は取れると言っていいのではないだろうか。


なお、枯れたピーマンは茎が硬いので、土から引き抜いたら頑張って折るか、カッターで数センチの長さに切って燃えるゴミへ出そう。ピーマンの根と茎はごくまれに野菜に伝染する植物ウイルス病にかかることがあり、放置は推奨されない。全然そんなつもりもなかったのに、自分のプランターから発生した病気が、近所のピーマン生産者の畑で蔓延してしまい、知らずに大迷惑をかけるという恐れがあるのだ。


さて、冒頭でも触れたが世にピーマン嫌いは少なくない。なぜこんなにもピーマンは嫌われるのだろうか。

苦い味?青くさい臭い?たぶんどちらも正解で、しかし、それだけではピースが1つ足りない。


『嫌い』を作る上で肝心なのは、幼い頃に繰り返し食べることを強いられたから、ではないのか?と私は考えている。大人には平気なあの味も、子供には強烈に感じられるものだ。だのに両親含めた大人たちは、頑なにそれを食べろと強いてくる。その経験がなおさらピーマン嫌いを加速させるのだろうと思う。


ではもう一つ先へ問いを進めよう。我々大人はなぜ嫌がる子供にピーマンを食べることを強いるのか。

ここが核心だと私は信ずる。ピーマンとは、ややクセのある味と引き換えに、野菜として基本的な栄養の数々をたっぷり含み、かつ安価で食べることができる極めて優秀な野菜だからだ。


味は万人には受けづらいが、その実に詰まった栄養は豊富の一言だ。


緑黄色野菜として認められるだけあって、βカロテンがたっぷり。そしてビタミンCも1個のピーマンに約30mgも含まれている。レモンより多くないか?と思った方、その通りである。レモンは1個20mgだから、単純に1個で比べるとレモンの1.5倍のビタミンCが含まれるということだ。

さらに、ビタミンCと合わせて取ると抗酸化力を増すビタミンEも含んでいる上、ビタミンB群もB12を除いてほぼ全てカバーしている。


詳しくは検索してみてほしいが、その数値を他の野菜と比べると、いかにものすごい栄養価かありありと分かる。ピーマンより優れた栄養価の野菜は、まずない。あったとしてもいわゆるスーパーフードのような、あまりなじみのない野菜であることが多いだろう。マルチビタミン系のサプリメントと見比べると、さらにピーマンの優秀さに舌を巻くはずだ。たかがピーマンごときが、人工的に栄養を補うことを狙った、よくできたサプリメントにも迫る栄養を含んでいる。プランターでピーマンを簡単に育てられることの意義は、我々が思う以上に大きいはずなのだ。


ちょっと脱線したので元に戻ろう。

子供に栄養のあるものを食べさせたいと願うお父さんお母さんは多い。しかしまこと残念ながら子供にピーマンの味は美味と感じにくいものだ。


だから、無理せず食べさせるメニューを暇庭からもひとつ贈りたい。何を隠そう私自身のピーマン嫌い克服の第一歩になった記念すべき料理だ。


といっても難しいことはない。豚ひき肉か、あるいは牛と豚の合い挽き肉と、おろしにんにく、小さく刻んだピーマンを、砂糖としょうゆの甘辛い味付けで炒め合わせるだけだ。だまされたと思ってやってみてほしい。ニンニクの香りであの青臭さをやわらげ、ひき肉の脂肪分で苦みを覆い隠し、しょうゆの塩分で強引に1つの料理としてまとめてしまう力技。

味付けはしょうゆの代わりに味噌でもおいしい。最後に胡椒を振ってもアクセントになっておいしいし、カレー粉をいれるとたちまちドライカレーになってこれもおいしい。


私はこの料理がきっかけとなり少しずつピーマンを食べられるようになったのだ。今も好きではないが食卓に出されれば食べるのに困ることはない。思いもよらぬことだが、食べ物の苦手を克服すると、ソレが入った料理が不意討ちで出てきた時にテンションがガックリ下がるあのなんとも言えぬ心の落ち込みを回避できる。これは間違いなく人生にプラスにはたらいた。好き嫌いをなくすことは、結局そういう気分の問題に帰結するのかも知れない。


と、脱線ばかりで本当に長くなってしまったが、ピーマンはプランターで育てられる野菜の中でもトップクラスの栄養価を誇り、かつ現代の灼熱の夏にも耐えうる。大量に採れてしまいどうやって食べるか頭を悩ますのもたまにはいいだろう。来年はぜひ、プランターでピーマンを作ってみてほしい。


以下5段階評価によるピーマンの評価

暑さに耐える力★★★★★☆※¹

寒さに耐える力★※²

育てやすさ★★★★※³

※¹気温39℃でも開花、着果できる高温耐性がある。だが毎日の水やりだけは忘れないように。


※²寒さには弱い。気温15℃を下回ると成長はぐっと遅くなる。約4℃で枯れる。


※³初期投資はまあまあ金額大きいか。およそ2千円ほど。その後は楽なので評価は高め。

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