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【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!  作者: DAI


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第91話


ここは世界の何処かにある深淵の国。

魔神城の奥。


フィーネが居ない。


その事実を飲み込めないまま、ここにいる皆がただ茫然としていた。


「フィーネ......」

リリィとエリーゼは抱き合いながら泣いている。

スザクとホウオウも涙を堪えることが出来ない。


オルガは膝をつき床を叩いている。

ゴブローはただ立ち尽くしている。


ハクも座り込んでうなだれている。


「まだ、終わってないぞ!リリィ!エリーゼ!」

イブが叫んだ。その視線の先、魔神ザハークがむくりと起き上がる。


「まだ、生きてる!?」

ホウオウが愕然として言った。


「よくも......やってくれたな......忌々しいエルフめ......」

ザハークは全身の皮膚が焼け爛れ、息も絶え絶えの状態ながら、まだ生きていた。そして、身体の再生が始まっている。


「また再生するぞ!どうする?」

ゴブローが言う。


「リリィさん、エリーゼさん、今こそ歌う時ですわ!」

アイリスが促す。


「リリィ、エリーゼ。今は泣いてる時じゃない。フィーネの死を無駄にするな。」

イブが二人の背中を押す。


「リリィ、歌いましょう!」

エリーゼがリリィの手を引いてザハークの方にあるきだす。


リリィは戸惑っていたが、覚悟を決めた。


リリィとエリーゼは、手を繋ぎ並んでザハークと対峙した。


「小娘二人に何ができる......」

ザハークが言う。



(リリィ、あなたなら出来るよ)

フィーネの声が聞こえた気がした。


「私たちは私たちにしか出来ないことをする!」

リリィは、大きく深呼吸した。


そして、歌い出す。



"三日月は、空に浮かぶ船

半月は、揺りかご

満月は、神の導き

新月の夜は、空に願おう"





「!? その歌を歌うのをやめろ!」

ザハークが苦しみ出す。





"月の表は 光り輝き

月の裏は 深淵を纏う

二つの月は 大いなる導き

二つ重なりて 扉を開かん"





「や......め......ろ......」

ザハークの身体が足先から塵と化していく。それは全身に広がり、頭だけが残され床に落ちた。

そして、最後に残された頭も消えた。



リリィとエリーゼは、しばらく茫然としていたが、ザハークが消滅したことを確信して泣きながら抱き合った。


「やったな!」

ゴブローとオルガは肩を組んで喜びを分かち合う。


「姉さん!ザハークを倒したわ!」

スザクとホウオウも抱き合った。


ハクはホッとした顔で立ち上がった。


「やりましたわね、イブ。」

「そうだな、アイリス。」

イブとアイリスはハイタッチしてよろこんだ。



すると、真っ黒な空間が変化していく。

天井と大きなシャンデリアが現れ、真っ白な壁、大理石の床、豪華な玉座が現れる。

異次元空間が、元の姿に戻ったようだ。


「魔神城が元の姿を取り戻したのね。」

ホウオウが言う。


カランカラン。

何かが床に落ちた。


「これは......」

オルガがそれを手に取る。

それは、青い蝶の髪飾りだった。

オルガがフィーネに買ってあげた思い出の品だ。

「フィーネさん......」

オルガは涙を堪えてそれをポケットに入れた。


リリィたちはザハークを倒した喜びとフィーネを失った喪失感を胸に、家路についた。


深淵の国を抜け、ウエスの森に帰り着いた時には、数週間が経っていた。


「お帰りキー!」

「お帰りキキー!」

丸太小屋に着くと、モックとドンキーが出迎えてくれた。


「ただいま。モック、ドンキー。」

リリィがモックとドンキーを抱きしめる。

「リリィ、元気ないキー。」

モックが言うと、リリィの目から涙が溢れ出す。

「リリィ、どうしたキー......」


イブがフィーネの死をモックとドンキーに伝えた。


それから、


リビングに皆集まり、一息ついても、心の真ん中に穴が空いてしまったように、誰も何も話さず、ただ時間だけが過ぎていった。


夕方になり夜になっても、皆心ここに在らずという感じで、魔神を倒したというのに世界の終わりが来たかのようだ。


目を閉じれば、最後のフィーネの笑顔がこびりついて離れない。


フィーネが居ないという事実は、あまりにも重く、受け入れ難い残酷なものだった。


その夜。皆眠れぬ夜を過ごした。


空には美しい満月が輝いていた。


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