第86話
ここは世界の何処かにある深淵の国。
ホウオウ、スザク、アイリスの三人はフウジンと対峙していた。
倍程の大きさになった身体、四本の腕、大きく伸びた角、そして、三つの目。完全に化け物と化したフウジンは、その理性をも失いかけているようだった。
「スザク、ホウオウ!殺してやる!」
フウジンが、四本の手に持つ風神剣で切り掛かってきた。
「防御せよ!バリア!」
アイリスが防御魔法を唱える。
カキン!
ホウオウがその剣を防ぐ。そして後ろへと飛び退いた。
「スザク!接近戦は不利よ。遠くから狙って!」
「わかったわ!姉さん!」
ホウオウが持っていた弓矢をスザクに向かって投げた。
スザクはそれを受け取り装備する。
「これでも喰らえ!」
スザクが弓を射る。
シューッ!ザクッ!
「グワーッ!」
フウジンが目を抑えて苦しんでいる。
左目に矢が突き立っていた。
「やったわ!」
すかさずホウオウがフウジンに斬り込む。
「やーっ!」
ザンッ!
フウジンの右腕を一本、切り落とした。
フウジンは苦しんでいる。が、
「サイクロンアタック!」
物凄い風が刃となって襲い掛かる。
スザク、ホウオウ、アイリスは身体を必死に守るが、無数の風の刃で斬りつけられる。
「クッ!負けるか!」
スザクはジリジリと前に進む。
「キャーッ!」
体の小さなアイリスは飛ばされてしまった。防御魔法が解けてしまう。
「このっ!」
スザクはフウジンに近づき、短剣で斬りつけた。狙いは足だ。
低い体勢で足の腱を斬りつける。
「!?」
フウジンは堪らず膝をついた。
「チャンスよ!姉さん!」
スザクが叫ぶ。ホウオウは剣を構えフウジンの首めがけて振り下ろす。
ザクッ!
しかし首が太過ぎて切り落とせない。
フウジンは手でホウオウを払いのけ、刀が首に刺さったまま、立ち上がった。
「よくも、やったわね。殺してやる」
「ストームインフィニティ!」
無数の小さなつむじ風がスザクとホウオウを襲う。
身体中を切り裂かれる。
二人は体を丸くして耐えるしかない。
「クッ、このままじゃ失血死する!」
その時、
「お待たせしましたわ!聖なる刃よ!魔を滅せよ!ホーリーソード!」
アイリスの手に現れた聖なる光の刃。それをフウジンに向かって勢いよく投げた。
ザンッ!
フウジンの胸に突き刺さり、光に包まれて行く。
「グワーッ!苦しい!熱い!嫌だ!死にたくない!」
フウジンは苦しんでいたが、小さな光の点になり、消えた。
「勝ちましたわ!わたくしたち!」
アイリスがホウオウの所に飛んでいく。
「う、く、あ、アイリス、ありがとう。」
ホウオウは気を失ってしまった。
「今、手当しますわ!ヒール!」
アイリスの回復魔法で傷が癒えていく。
「次はスザクさんですわね。回復せよ!ヒール!」
スザクの傷も回復していく。
「二人とも、良く頑張りましたわ。意識もすぐに戻るはず。」
アイリスはスザクの頭を撫でた。
「メルティナさん......お遊びが過ぎますわ。あんな酷いことをするなんて。」
アイリスはつぶやいた。
見上げた先には、漆黒の魔神城がそびえ立っている。
フィーネたちは、魔神城の入り口に辿り着いていた。
「ここが魔神の城......」
ゴブローが見上げながら言う。
「どんな罠が待っているか分からない。ここからは慎重に行こう。」
オルガが言う。
「一応、念のために。防御せよ!バリア!」
イブが防御魔法を唱えた。
「さあ、皆、行きましょう。」
フィーネが先頭を行く。
巨大な扉は開け放たれていて、その中は外よりも更に薄暗い。長い廊下が続いていて、その左右には松明が灯されている。一面真っ黒い廊下に炎の赤だけが鮮やかに見える。
一歩ずつ慎重に歩みを進めていく。
廊下はまるで永遠に続いているかのようだ。
「これ、どこまで続いていますのかにゃ」
エリーゼとリリィはしっかりと手を繋いでいる。
「なんだか吸い込まれそう。」
リリィがつぶやく。
「おいら、疲れてきたぞ。魔神はどこだ?」
ハクが言う。
「ヤツの気配は感じるが......」
イブが言う。すると、
「見ろ!先に何かあるぞ!」
ゴブローが廊下の先を指差した。
だんだんとそれは近づいてくる。
「あれは?」
「階段だ!」
大きな階段が目に入った。
その上にはまた、大きな扉がある。
すると、
パチパチパチ。
拍手が鳴り響く。
「よく、ここまで辿り着きましたね。エルフ。いや、フィーネさん。」
聞き覚えのある声。丁寧な言葉遣い。
「お前は......!」
「ビャッコ!?」
「お前は、ぼくが粉々に砕いたはずだ!何故生きている?」
イブが驚いて聞く。
「メルティナ様のお陰でね。私の身体にはスペアがあったんですよ。」
「スペア?身体の代用品か!」
オルガが言う。
「フィーネさんは、まだ『家族ごっこ』をしてたんですね。飽きもせず。」
ビャッコは笑いながら言う。
「ビャッコ。また私に倒されるなんて可哀想ね。もう私は優しくないわよ。」
フィーネは、怒りを抑えるように拳を握っている。
「さあ、宴と参りましょう。私の口に合えば良いんですが。黒波動剣!」
ビャッコの左右の手に黒いオーラに包まれた剣が現れた。
「ビャッコ。わたしもあなたをを許さない。」
リリィが言う。
「リリィさん、今度こそあなたを手に入れますよ。覚悟しなさい。」
ビャッコが構えた。
フィーネたちと、復活したビャッコの戦いが始まろうとしていた。




