第81話
ここは、ウエス国の森の中。
夕食前の寛ぎの時間。フィーネたち"女子チーム"は、長旅の疲れを癒すため露天風呂に入っていた。
「きーもちいー!」
リリィが足を伸ばしてバタバタしている。
「リリィ、飛沫がかかるから止めて。」
フィーネが嗜める。
「私、お風呂にみんなで入るのは初めてなので、恥ずかしいですわ......」
エリーゼは体を隠すようにして小さくなっている。
「大丈夫、大丈夫!直ぐに慣れるよ、エリーゼ。」
スザクが笑ってエリーゼの肩を揉んだ。
「エリーゼはお嬢様育ちだからな。仕方ない。」
イブは小さいアイリスを抱えて湯船に浸かっている。
「みんなでお風呂。たーのしー!」
リリィが両手でエリーゼにお湯をかけた。
「きゃあ!リリィさん、やりましたわね!」
エリーゼも負けずに反撃する、が、リリィはサッとかわし、ホウオウにかかった。
「やったわね!エリーゼ!」
ホウオウがかけたお湯は、エリーゼとスザク、イブにかかった。
「お姉ちゃん、覚悟!」
スザクは手桶にお湯を入れて反撃する。
「ちょっと!みんな、止めなさい!」
フィーネが止めようとするが、最早手遅れ。水掛け合戦が始まってしまった。
「面倒くさいなぁ......」
フィーネは静かに露天風呂の隅に逃げた。
「にゃあ!」
いつの間にか猫の姿に変身していたエリーゼが体を震わせて水を飛ばす。
「エリーゼ!待つのですわ!」
アイリスがエリーゼの身体に馬のように跨っている。
「行きますわにゃあ!」
猫なのにお湯をものともせず、犬かきならぬ猫かきで泳いで行く。
「もう...好きにして...」
フィーネは、もう諦め顔だ。
露天風呂で遊び疲れた"女子チーム"は、全員並んでロッキングチェアで泥のように眠ってしまった。
「女の子たちは、すごく楽しそうだったな。羨ましい。」
ゴブローがつぶやく。
「おいらも混ざりたかったぞ。」
ハクが無邪気に笑う。
「ハク、それはダメだ。気持ちはわかるけど」
オルガが顔を赤くして言う。
「まあ、みんな頑張ったんだ。たまには羽目を外すのも良いだろ。」
ゴブローが腕組みしながら言う。
「さて、晩御飯を作ろうかな。」
フィーネは立ち上がり、両手をかざした。食材や調理道具が宙を舞い、手際よく料理されていく。
あっという間にテーブルに料理が並んでいく。
「うわぁ!美味そう!」
ハクが涎を垂らしている。
「本当にフィーネさんの料理は美味しそうだ。」
オルガが言う。
「実際、美味しいからな。」
ゴブローが頷きながら言った。
「んん、良い匂いがします...」
エリーゼが目を擦りながら起きてきた。
「うわあ!これは美味しそうですにゃ!」
エリーゼが目を輝かせる。
リリィたちも起きてきた。
「さあ、みんな!夕ご飯よ!」
フィーネが手を叩いて皆を起こす。
皆、起きてきてテーブルにつく。
フィーネ、リリィ、モック、ドンキー、イブ、オルガ、ゴブロー、スザク、ホウオウ、ハク、アイリス、そして、エリーゼ。
丸太小屋は、いつの間にか大所帯になっていた。
フィーネは改めてテーブルに座った皆を見る。
「面倒くさいけど、良いものね...家族って...」
小さく呟いて笑った。
「あ、フィーネが笑ってる!」
リリィが笑って言う。
「笑ってなんかないわよ。さあ、食事を始めましょう。」
「フィーネ、照れてる!」
「て、照れてなんかないわよ!」
フィーネは赤くなった。
「でも、ありがとうね。リリィ。貴方のお陰よ。」
「なに?フィーネ、もう一度言って。」
「嫌。」
「えー!ケチ。」
リリィは、頬を膨らませた。
「もう、待ちきれないよ!いただきます!」
ハクが料理に手を出した。
「いただきます!」
皆、一斉に食事を始めた。
「やっぱりカレーライスは美味いな!」
イブがカレーを頬張る。
「このお料理美味しいですわ!お城には無いものばかり。」
エリーゼは感激している。
「日本の料理を元にしてアレンジしたオリジナル料理よ。」
フィーネが得意げに話す。
「日本?」
エリーゼが聞く。
「こことは違う世界。異世界よ。」
フィーネが答えると、
「よく分からないですが、とにかく美味しいですわ。」
エリーゼの手が止まらない。
「お酒もあるぞ!」
ゴブローが酒瓶を片手に叫ぶ。
「イブとアイリスは、呑んじゃダメだよ。」
ホウオウがグラスを取り上げる。
「わたくしも呑みたいですわ。」
「僕も呑みたいぞ。」
イブとアイリスが言う。
「二人ともお酒が入ると喧嘩するからダーメ!」
スザクが嗜める。
「お水も美味しいキー!」
「お酒じゃなくてお水を飲むと良いキキー!」
モックとドンキーが言う。
「流石の女神様も、ドリアードの子供には敵わないね!」
リリィの言葉に皆一斉に笑った。
こうして楽しい食事も終わり。
食後のティータイム。
「何だかこの平和がずっと続きそうな気がする。」
スザクが言う。
「スザク。油断は禁物よ。敵は今も動いてる。」
ホウオウが自分に言い聞かせるように言う。
「魔神教。あいつら、きっとまたリリィを狙って来るぞ。」
ゴブローが言う。
「その時はまたやっつけるさ。」
オルガがつぶやいた。
「歌の特訓を急がないとですわね。」
アイリスが言うと、
「私、頑張るよ!歌、上手くなる!」
リリィが決意を新たにした。
「......」
フィーネは、一人、物思いに耽っていた。
ウエスの森の木々が騒めいた。漆黒の闇の気配を察知するように......




