表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!  作者: DAI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/60

第55話


ここはウエス国の森の中。


「待てー!」

「待つキー!」

「待つキキー!」

「おいらを捕まえてみな!」

リリィたちは、ウエス山での冒険を終えたばかりにも関わらず、元気に追いかけっこをしている。


イブはロッキングチェアに座って、それを眺めていた。

「子供は元気で良いな。それにしてもフィーネは遅い。何をしてるんだ?」

町に薬を届けに行ったフィーネは、まだ帰っていなかった。

「まさか、何かあったんじゃないだろうな?」

流石のイブも心配になってきた。


すると、森の中から人影が出てきたフィーネだ。心ここに在らずという感じで、顔は紅潮し、ぼんやりと歩いている。

リリィたちが、フィーネに気付いた。

「あっ、フィーネ!お帰りなさい!」

「お帰りキー!」

「お帰りキキー!」

「フィーネ、お帰り!遅かったな!」


フィーネは、4人の言葉に反応せず、真っ直ぐに丸太小屋に歩いた。

リリィは、不思議な顔をする。

「リリィ、どうしたんだ?」

ハクも首を傾げる。


「フィーネ、お帰り。遅かったな」

イブか声を掛けるが、反応が無い。

フィーネは、そのままロッキングチェアに座った。が、視線は宙を見ていて、ピントが合っていない。心なしか口元は緩んでいる。

「フィーネ!何かあったの?」

リリィがフィーネに話し掛けるが、反応がない。

「ねえ、フィーネ!」

リリィがフィーネの目の前で手を振る。が、無反応だ。

「目がハートになってるな。さては、良いことがあったな」

イブが言う。

「良いこと?」

リリィが、イブに訊ねる。

「良いことは良いことだ」

「何だかよくわかんない」

「リリィもおとなになれば分かる」

リリィは納得していない様子だ。


「リリィ、紅茶でも飲むか?」

イブが言うと、フィーネはやっと応えた。

「頂こうかしら。」

「リリィ、フィーネに紅茶を淹れてやってくれるか?」

「わかった!」

リリィはキッチンに行き、紅茶を淹れた。

「はい、フィーネ。紅茶だよ」

「ありがとう」

フィーネは、リリィに礼を言い、紅茶を一口飲んだ。

「リリィの淹れた紅茶は、美味しいわ」

フィーネの言葉にリリィは驚く。

「フィーネ、やっぱり変だよ!」

「私はいつもと同じよ」

そう言うものの、やはりぼんやりしている。

「フィーネにもついに春が来たか」

イブが笑いながら言う。

「春?」

リリィは不思議そうにイブを見た。


その日、フィーネはずっとこんな感じであった。


その夜。


フィーネはキッチンで魔法を使って料理をしている。

リリィたちは、それをリビングで待っている。が、なかなか料理が出来ない。

「遅いね」

リリィが言う。

「そうだな。おいら腹減ったぞ」

ハクは、待ちきれない様子だ。


「お待たせ。今日は、フィーネ特製オムライスよ」

鮮やかな黄色のオムライスがテーブルに並ぶ。

トマトケチャップをかければ出来上がりだ。

「さあ、食べましょう」

「いただきます!」

早速、ハクが頬張る。

「これ、中のご飯が美味しいな」

「チキンライスよ、周りの卵と一緒に食べて」

「これもまた、日本を思い出すな」

イブも美味しそうに食べている。


「ねえ、フィーネ。町で何かあったの?」

リリィがオムライスを食べながら、フィーネに聞く。

「町でオルガに会ったの。」

フィーネの顔が赤くなった。

「それで?」

リリィが前のめりになる。

「オルガと一日中デートした」

フィーネの頭には、青い蝶の髪飾りが光っている。

「楽しかった?」

リリィが、聞く。

「凄く楽しかった。それで、私たち正式にお付き合いすることになった」

フィーネの顔が更に赤くなる。

「やったじゃないか!フィーネ」

イブも嬉しそうだ。

「フィーネとオルガは結婚するのか?」

ハクが遠慮無しに聞いてくる。

「結婚は、まだ先の話ね。したいとは思うけど......」

「フィーネ、おめでとう!オルガとならお似合いだよ」

リリィも嬉しそうだ。

「お似合いキー!」

「お似合いキキー!」

モックとドンキーも祝福している。


丸太小屋はお祝いムードに包まれた。



食事の後、

いつも通りフィーネたちはロッキングチェアに座り、のんびり紅茶を飲んでいる。


「フィーネ、よく決心がついたな」

イブがフィーネに話し掛ける。

「随分迷ったけど、オルガの告白を受けることにした。これは、私の覚悟」

フィーネは真剣な顔で言う。

「100回目の転生のことは、オルガは知ってるのか?」

「オルガには、まだ話してない」

「そうか......」

イブは黙ってしまった。

「たとえ未来に私が居なくても、オルガには幸せでいて欲しい。だから決心したの」

フィーネの瞳からひとすじの涙が流れた。

「フィーネ、本当にすまない」

「イブは悪くないわ。これは私が決めたこと」

フィーネは涙を拭った。

「今度は私は誰に転生するのかしら?」

「それは、まだ分からない」

イブが答える。

「オルガに近い人なら良いな」

フィーネはつぶやいた。

「そうだな」

イブもつぶやいた。


夜空には満天の星。

瞬く星たちがフィーネには滲んで見えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ