表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!  作者: DAI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/93

第5話

ここは、ウエス国の森の中。


この世界――エルドランド大陸は、

大国《エルドランド=サウザン同盟国》を中心に、

ウエス国・ノーザリア国・イストリア国といった小国が点在している。


千年ほど前。

魔物の神――魔神が討たれてから、

世界には強大な魔物はほとんど姿を消した。


それ以来、

人々は「平和」を当たり前のものとして生きている。


「キー!」

「待ちなさい! モック!」


今日もリリィとモックは、小屋の周りを元気いっぱいに駆け回っていた。

それを、いつも通りフィーネはロッキングチェアに揺られながら、半分眠った目で見守っている。


平和で、のどかな一日のはずだった。


――その音が、すべてを破った。


ドカーーーーン!


大地を揺らすような爆発音。

フィーネは、跳ね起きた。


町の方角を見ると、黒い煙が空へと立ち上っている。


「……これは、嫌な予感がするわね」


そう呟くと、フィーネはすぐに裏の倉庫へ向かい、薬袋をいくつも手に取った。


「フィーネ、あの煙は何かしら?」

「分からないけど……町で何か起きたのは確かね」

「爆発、怖いッキー……」


モックも、枝の体を小さく震わせている。


「二人とも。出かける用意をしておきなさい」


その声に、リリィとモックはすぐに頷いた。


――その時。


森の奥から、煤にまみれた男が現れた。


「オルガ!」

「フィーネ……すまない。町まで来てくれないか」


肩で息をし、相当急いで走ってきた様子だ。


「何があったの?」

「町の火薬庫が爆発した」


ウエス国の町は、宝石の産出で成り立っている。

山から宝石を掘り出すために使う爆薬――

その保管庫が、何らかの原因で爆発したのだという。


「……分かったわ」


フィーネ、リリィ、モックはオルガと共に町へ向かった。



森を抜け、町が見えた瞬間。

空気が変わった。


火薬庫と思しき建物からは、まだ火の手が上がり、

黒煙が重く立ち込めている。


「フィーネ、けが人がいるんだ」

「わかったわ。傷薬と、呼吸を楽にする薬を持ってきてる」


オルガは薬を受け取り、けが人のもとへ駆けていった。


「フィーネ……」

リリィが、そっと背中に隠れる。


「あなたたちは、ここにいなさい。私は火を消してくる」


二人が頷いたのを確認し、フィーネは火薬庫へ向かった。


熱気が、肌を焼く。

近づくだけで息が詰まりそうだ。


フィーネは両手を掲げ、淡々と詠唱する。


「――水よ、出でよ。ウォーター」


空から大量の水が降り注ぎ、

炎は徐々に勢いを失い、やがて完全に鎮火した。


「……?」


その瞬間、

ほんのわずかだが――

人為的な魔力の痕跡を、フィーネは感じ取った。


(……気のせい、ね)


違和感は、すぐに霧散した。


「フィーネ! 本当に助かったよ!」

町人たちが、次々と礼を言う。


「これで、一安心ね」


フィーネは、リリィとモックのもとへ戻った。


「薬のおかげで、けが人も大丈夫そうだ」

「それは良かったわ」


オルガは少し躊躇ってから、言った。


「……お礼と言っては何だけど、一緒に食事でもどうかな。奢るよ」


フィーネは一瞬考え、リリィとモックを見る。


「この二人も一緒なら」

「もちろんだよ」



オルガの家は、石造りの二階建てだった。

年季は入っているが、どこか落ち着く家だ。


「前にも来たけど、いいお宅ね」

「そう言われると嬉しいな」


オルガは照れながら、紅茶を淹れる。


「我が家特製の紅茶だよ」

「……悔しいけど、美味しいのよね」


「うん! 美味しい!」

「この町の水は美味しいキー」


「……こんなふうに、他人と関わるのも久しぶりね」


フィーネの呟きは、小さかった。



夕方。

町の酒場ブルークリスタル


賑やかな喧騒、笑い声、食器の音。

それらは、確かに“平和”そのものだった。


「今日は、じゃんじゃん食べて飲んでね!」

「ありがとう」


乾杯の音が響く。


「フィーネって、お母さんみたいね」

「親子じゃないわよ!」


――結局。


酔いつぶれたオルガを、

フィーネが背負って家まで送り届けることになった。


「……重いわね」


それでも、

彼女の足取りは、どこか軽かった。



森へ戻る帰り道。


夜風が、静かに頬を撫でる。


(……平和、ね)


だが、

昼に感じた、あの微かな違和感が――

胸の奥で、まだ消えずに残っていた。


「のんびりしてるだけじゃ……だめ、か」


フィーネは、そう呟いた。


それはまだ、

決意にも、覚悟にもならない。


けれど確かに――

世界が、再び動き出す前触れだった。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ