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転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!  作者: DAI


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第4話


 ウエス国の森の中。


「モック、待って! 」

「リリィ、捕まえてみろキー! 」

リリィとモックが追いかけっこをしている。

「今日の紅茶も美味しいわね」

ロッキングチェアに座って紅茶を飲みながら、2人の追いかけっこを見ているのはエルフのフィーネだ。


「待てー! 」

「捕まらないキー! 」

家の周りをグルグルと走り回っている。

「よく、飽きないわね」

フィーネが欠伸をしながら、つぶやく。


「キー!」

「キャー!」


ドーーーーン!!


家の裏で、何かが壊れる音がした。

フィーネが起きだして、家の裏に歩いていく。

「もう、面倒くさいわね。今度は何をしたの? 」

モックとリリィが申し訳なさそうにうつむいている。


離れの小さな倉庫が粉々に壊れていた。

「私の薬草の倉庫が!! 」

フィーネが珍しく声を荒げる。

フィーネは薬師だった転生経験を活かして、森の中で薬草を摘み、薬を調合して、町の人に売っていた。

この倉庫は、薬の材料の薬草や調合した薬を保管する建物だった。

「何てことしてくれるのよ!時よ戻れ、リバース! 」

倉庫が見る見るうちにもとに戻っていく。


「フィーネ、ごめんなさい」

リリィとモックは反省しているようだ。

「壊すのは勝手だけど、リバースでも戻せないものがあるんだから、気を付けて」

フィーネはそういうと、ロッキングチェアのところに戻っていった。

「紅茶が冷めちゃったわ」

そういうと、魔法で湯を沸かし紅茶を淹れなおした。

「うーん、いい香り」

フィーネがまどろみかけたその時、

「ねえ、薬草のことを教えて! 」

リリィがフィーネの顔を覗き込んでキラキラした目で言う。

「面倒くさいなあ、じゃあ、これでも読んでみたら? 」

フィーネが手を上げて動かすと、家の中から一冊の本が飛んできた。

その本はリリィの手に収まった。

「これは、薬草の本ね! 」

「そう、それを読んで勉強したら、立派な薬師になれるかもね」

フィーネは、そういうとうたた寝を始めた。

リリィとモックは自分の部屋で本を読み始めた。


しばらくして、


「フィーネさん!すいません、薬をいただけないですか? 」

男の人の声だ。

フィーネは、体を起こして、その男性の方を見た。

人間の20歳くらいの男性。農夫だろうか?身長は高くスラっとした体形をしている。なかなかのイケメンである。

「オルガじゃない。久しぶりね」

「フィーネさん、ご無沙汰してます」

「今日はどうしたの? 」

フィーネがオルガに聞くと、深刻そうな顔になった。

「実は、母の具合が悪いんです。それで、薬を貰えないかと」

「どんな症状? 」

「高熱が出て何日もうなされてるんです」

フィーネは立ち上がって裏の倉庫に向かった。オルガもついていく。

「とりあえず、熱さましの薬と抗菌薬をあげるわ」

フィーネは、2つの小さな袋をオルガに渡した。

「ありがとうございます!これ、お代です」

オルガから代金を受け取る。

「お大事にね」

フィーネはオルガに手を振ると、またロッキングチェアに戻った。

「また、宜しくお願いします! 」

オルガは丁寧にお辞儀をして、森の中に消えていった。


そこに、リリィとモックがやってくる。

「ねえねえ、今の人は誰? 」

リリィは興味津々だ。

「オルガって言う、町で農夫をしてる人よ」

「フィーネの彼氏? 」

リリィが聞くと、フィーネは飲みかけの紅茶を噴出した。

「ち、違うわよ!歳だって全然違うし、向こうは人間だし……」

珍しく、フィーネが顔を赤くしている。

「フィーネは、オルガのことが好きなのね? 」

リリィは、子供なので遠慮がない。

「いい人とは思うけど、それだけよ」

リリィとモックは、にやにやしている。

「この話はおしまい! 」

「つまんないのー」

リリィとモックは部屋に戻った。


「まったく、リリィったら……」

フィーネは紅茶を一口飲んで、昔のことを思い返していた。





フィーネには、初恋の人がいた。相手はもちろんエルフ。

エルフの里の幼馴染で、子供のころから一緒に遊んでいた。


とある夜、エルフの里が魔物の群れに襲われた。

「フィーネ!逃げて! 」

両親と離れ離れになったフィーネは、逃げる途中に信じられない光景を目にする。

巨大な一つ目の魔物がエルフを喰っている。そのエルフはフィーネの幼馴染だった。彼は最後の力を振り絞ってフィーネに言った。

「フィーネ、ありがとう。大好きだよ」

そして、魔物に一飲みで喰われてしまった。

フィーネは叫んだ。そして、逃げた。





「……また、嫌なことを思い出しちゃった。長生きするのも辛いわね……」

フィーネは、また、紅茶を一口飲むと、遠くに目をやった。

鬱蒼とした森の間から、青空が見える。その空は、エルフの里の空に似ていた。

「あんな思いは二度としたくないわ」

フィーネは、そうつぶやくと、まどろみの中に落ちていった。






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