表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/60

第3話


 ウエス国は、国土のほとんどが森で覆われている。そこで暮らす人々は「森の民」と言われるほどだ。そんなウエス国の森の中。一人の少女がブツブツ文句を言いながら歩いていた。


「もう、フィーネのバカ! 何がのんびりよ。私は冒険がしたいの! 」

 この少女はリリィ。森に一人で住んでいるエルフのフィーネと暮らし始めたばかりだ。

「毎日、家でじっとしてて、何が楽しいのかしら」

 リリィは、フィーネののんびり過ぎる生活に我慢がならないのだ。

森の中をドンドン奥に進んでいく。

 そんなリリィの様子を陰から伺う何者かがいることに、彼女はまだ気づいていなかった。

「疲れてきちゃった。少し休もう」

 そう言うとリリィは、その場に座り込んだ。

リリィの後ろから何かが忍び寄る……。


ガサガサッ


物音に気付いて、リリィは振り返った。



「キィー! 」

 そこにいたのは、木の魔物ドリアードの子供だった。

リリィは驚いて聞いた。

「あなた、何処から出てきたの? 」

「キィ。お友達になりたいキー」

「お友達に? いいわよ。私はリリィ。あなたの名前は? 」

「キキッ! モックだキ」

「モック。いい名前ね」

 モックはリリィが気に入ったようだ。枝(手?)を出して近づいてきた。

「じゃあ、私たちはもう友達ね」

 モックとリリィは握手をした。

モックは潤んだ純粋な瞳でリリィを見つめてくる。

「何だか怒ってるのがバカらしくなってきちゃった」

「リリィは、怒ってたのかキー? 」

「ううん、もう良いの。モック、私の家に一緒に来る? 」

「喜んで行くキー! 」

リリィとモックは、歩き出した。


 そのころ、森の中の一軒家。

「リリィ、まだ帰ってこないわね」

 エルフのフィーネが珍しく人の心配をしている。

「まさか、魔物に襲われたりしてないよね」

 フィーネは目を閉じて意識を集中しだした。

フィーネの意識は、森の遥か上空に上り、森全体を見下ろした。

すると、リリィの姿を見つけた。まっすぐに家に向かっている。

「どうやら無事なようね。良かった」

フィーネはそういうと、紅茶を一口飲んだ。



「ねえ、モックに会わせたい人がいるの! 」

「会わせたい人キ? 」

「そう、エルフのフィーネって言うの」

「モックもその人に会いたいッキ! 」

「じゃあ、急ぎましょう! 」


 リリィとモックは走り出した。

ドドドドッ

もの凄い勢いだ。一軒家が見えてきた。

リリィは急ブレーキをかけて止まった。

「フィーネ! 紹介したい人がいるの! 」

が、モックは止まらずにそのまま家に突っ込んだ。

ドーンッ!

壁に大きな穴が開いた。


「ちょっと! リリィ、何してるの?! 」

 家の中では、モックが気を失ってのびている。

「フィーネ! あの子はドリアードのモックって言うの。モック! 起きて! 」

 リリィは壁の穴から家に入ってモックを揺り起こそうとしている。

「それよりも、また家が壊れたじゃないの。まったくもう」

「ごめんなさい、モックに早く会わせたくて」

「もういいわよ。時よ戻れ、リバース」

 フィーネの手が光り、家がみるみる直っていく。

「モック! 起きて! 」

 リリィに激しく揺さぶられて、モックがやっと起きた。

「うーん、痛いッキ……」

「モック、あの人がフィーネ」

「ドリアードのモックだッキ。よろしくだッキ」

 フィーネは感心なさげに手を上げる。

「はいはい。よろしく。じゃあ、私は昼寝するから」

 そういうとフィーネは寝てしまった。

「フィーネ。今日からモックもココに住んで良い? 」

「むにゃむにゃ、いいわよ」

「ありがとう! フィーネ! モック、ここに住んでいいって! 」

 フィーネが寝ているのを良いことにリリィが勝手に話を進めてしまった。

「モックもここに住めるッキ? ありがとうッキ! 」


 そして、夕方。

「不覚だったわ。私としたことが……」

「フィーネが良いって言ったんだからね」

 フィーネがショックでうなだれている。

「まあ、ドリアードは水さえ与えておけば食事の心配は無いけど」

「モック、迷惑はかけないッキ! 」

「わかったから、大人しくしててね。モック」

「わかったッキ! 」

「フィーネ、ありがとう! 」

 こうして、フィーネの家にドリアードのモックも住むことになった。


「モックは、私と一緒に寝る? 」

「ドリアードは、眠るときは土に根を張るッキ。だから、外で寝るッキ」

「そうかー。でも、起きてるときは私の部屋を使って良いからね」

「ありがとうッキ」

 モックもリリィも楽しそうだ。


「じゃあ、夕食にするわよ」

 フィーネが手を動かすと、お皿に盛りつけされた料理が宙を舞いテーブルに置かれた。モックには深い皿に水を入れて目の前に用意されている。

「いただきます」

 3人揃っての初めての食事だ。

「モック、こんなに楽しい食事は初めてだッキ」

「モックのお父さんとお母さんは、どこにいるの? 」

「・・・火事で燃えて死んでしまったッキ・・・」

「あ、ごめんね。やなこと聞いて」

「大丈夫ッキ! 今は、リリィとフィーネがいるッキ! 」

 リリィはモックを抱きしめた。


「火事か……」

 フィーネは、何か引っかかるものを感じていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ