第25話
ここはウエス国の森の中。
リリィ救出作戦に向かったフィーネとイブは、ゴブリン村に寄った。
「ゴブロー!いる? 」
「どうした?フィーネ? 」
ゴブローが部屋の奥から出てきた。
「リリィが誘拐されたの」
「なんだって!? 」
「それで私たちで助けに行くの、手伝ってくれる? 」
「もちろんだ!俺も戦うよ」
ゴブローが仲間に加わった。
3人になった一行は、森の外の町でオルガの家に立ち寄った。
「オルガ、あなたにはお母さんがいるから無理強いはしない」
「リリィは、僕にとっても大事な友達です。一緒に行きますよ」
「そう言ってもらえると、頼もしいわ」
フィーネはほっとした。
こうして、フィーネ、イブ、ゴブロー、オルガの4人は、リリィ救出のため、エルドランド王国に向かった。
「エルドランドで、まずどこに行くんだ? 」
ゴブローが聞く。
「ガルムヘルムで聞き込みをしようと思うの」
フィーネが答える。
「ガルムヘルムは、闇の情報も集まりやすい街だから」
オルガが言う。
「よし、ガルムヘルムに向かおう」
イブが言った。
徒歩の旅となると、2~3週間はかかる。その間、フィーネたちはリリィの無事を祈りながら、急いだ。
そして、ついにガルムヘルムの町が見えてきた。
「やっと、ついたね。あれが、ガルムヘルムよ」
草原の中に石造りの建物が固まって立っている。その横には、丘があって大きな木が立っている。
フィーネたちは、宿屋を確保して、情報収集のため酒場に向かった。
宿主に紹介された「ドラゴンの牙」という店だ。
店に入ると、あらゆる種族が集まっているのが判る。フィーネたちはテーブルについて、ビールを頼んだ、
「この店のおすすめは何? 」
フィーネが聞くと店員が答える。
「何てったって、骨付きドラゴンの肉だね。数量限定だよ」
「じゃあ、それをもらうわ」
「まいど! 」
すぐに骨付きドラゴンの肉が運ばれてきた。
鶏肉のようで、独特の脂の風味があって美味い。
「これは、ビールが進む味だな」
ゴブローが言う。
「聞き込みが目的なのを忘れないでくださいよ」
オルガが釘を刺す。
フィーネが店員を呼んだ。
「はい、なんでしょう? 」
「お兄さん、この辺で、人買いの噂を聞いたことある? 」
店員の顔色が変わった。
「やばい話は勘弁してくださいよ」
「何か知ってたら教えてほしいの」
「僕が知ってるのは、北の町はずれの一軒だけ離れた建物に人買いが出入りしてるっていう話だけです」
「ありがとう。助かったわ」
そういうとフィーネは店員にチップを渡した。
「北の街はずれの一軒家に行ってみましょう」
「わかった」
ゴブローが真剣な顔で答える。
決行は、明日の夜。フィーネたちは、情報収集と潜入の準備を整えた。
人買い組織の地下牢。
「スザク、見回りが行ったわ。作戦決行よ」
「わかった。肩に乗って」
スザクがそういうと、リリィはスザクの肩に乗った。
「行くよ、いっせいのせ! 」
スザクが立ち上げると窓に向かって歩いた。
リリィの手がちょうど格子窓に届く高さだ。
「よし!いけそう!やってみる」
リリィは、まず両手で格子窓を持ち力を込めて押してみる。
ギギギギギ
少し動いた!リリィはさらに力を込める。
ガリガリガリ
確実に動いている。これならいけそうだ。
ギリギリギリ
あともう少しで外れそうだ。
その時、
カツカツカツ
見張りの巡回が戻ってきた!
スザクとリリィは慌てて元の場所に戻る。
見張りがいぶかし気に牢の中を見回すが、気づかなかったようだ。
また、別の場所に行ってしまった。
気を取り直して、
スザクがリリィを肩車する。
格子窓はもう少しで外れそうだ。
リリィは、体勢を変えて足で蹴って押していくことにした。
ガンガンガン
一気に格子窓がズレる。もう少しだ。
ガッガッガッガッ……カシャン!
ついに窓格子が外れた。人が一人通れるくらいの穴が出来た。
「私が先に行くわ」
リリィが先に穴から出る。
そして穴から手を伸ばす。
「スザク、つかまって! 」
スザクはリリィの手を取り、壁をよじ登る。
そして、スザクも脱出に成功した。
「やったわ、脱出成功! 」
リリィが小声で喜ぶ。
目の前にはすぐに壁がある。壁と建物の間を進んでいくと、庭らしい場所に出た。人買い組織の人間だろうか?何人かうろうろしている。
リリィとスザクは、その場から動けなくなった。
「あいつらが居なくなるまで動けないね」
スザクがいう。
リリィたちはしばらく様子を見ることにした。
侵入作戦決行の夜が来た。
フィーネたちは、目的の建物の前で物陰に隠れて様子を見ている。
すると、いかにも怪しい男たちが、建物の中に入っていくのが見えた。
「よし、行くよ」
フィーネの合図で、ほかの3人も動く。
建物の入り口は、普通の家のようだ、扉を開けて中に入る。
すると、中は、大きな広間になっていて、男たちが慌ただしく動いていた。
男たちが一斉にフィーネたちを見る。
「これは、マズい」
オルガが言った瞬間。
「拘束せよ!フリーズ! 」
フィーネの魔法で、その場にいる男たちが一瞬で拘束された。
フィーネたちは大広間の中に入っていく。
そのころ、スザクとリリィは壁の隙間から身動きが取れずにいた。
その時、男たちが、何かがあったのか、別の場所に移動した。
今がチャンスだ。
「行こう!スザク! 」
「リリィ、気を付けて。慎重に」
2人は庭に出て、出口を探す。周りは高い壁に囲まれていて、出口は無さそうだ。
「家の中に入るしかなさそうね」
リリィとスザクは決心した。
同じころ。
「ビャッコ様、大変です! 」
「どうした」
「侵入者が現れました! 」
ビャッコは驚いた顔をしたが、すぐに平静を取り戻した。
「ゲンブ、ホウオウ、行くぞ」
「ははっ」
ビャッコたちが動き出した。




