第12話
ここはウエス国の森の中。
フィーネたちは、今日は薬草を取りに森の中に来ていた。
「みんな、私から離れないでね」
「わかった! 」
「わかってるッキー! 」
「まあ、迷子になっても、ぼくがすぐに探せるから大丈夫」
それぞれにバラバラになって薬になりそうな植物を探す。
「ねえ、フィーネ、これは? 」
「これは雑草ね」
「こればどうだキー? 」
「これは毒草よ、捨ててきて」
「まったく。勉強の成果が出てないじゃない」
薬草を見つけられないリリィとモックにフィーネも呆れ顔だ。
順調に薬草を集め続け、疲れたので休憩をすることにした。
「今日のお弁当は、フィーネ特製サンドウィッチよ」
「やったー!サンドイッチだ! 」
「サンドイッチって何だキー? 」
「野菜とかお肉とかをパンで挟んだ食べ物よ」
モックの疑問にフィーネが答える。
「お、懐かしいな。サンドイッチか」
「イブもサンドイッチを知ってるの? 」
リリィが尋ねる。
「ぼくも日本にいたことがあるからな」
イブが答えた。
「そうなの?女神様が日本で何してたの? 」
リリィは興味津々だ。
「それは内緒だ」
「えー、つまんない。教えてよー」
「いやだ」
「つまんないの! 」
リリィはむくれてしまった。
「でも、本当にイブが日本を知ってるなんて意外だわ」
「まあ、この世界と向こうの世界は繋がってるからな。これ以上は内緒だ」
「ふーん。それで私は向こうの世界に転生したことがあるのか......」
フィーネは納得したようにつぶやいた。
夕方になり、フィーネたちは家に帰った。
「今回もたくさん、薬草が集められたわ。みんな、ありがとう」
持って帰ってきた薬草を種類ごとに分けて、倉庫にしまう。
一仕事終えて、フィーネたちはいつも通りロッキングチェアーに座って、ティータイムを楽しんだ。
「やっぱり、一人よりもみんなでやると薬草集めも速く終わるわね」
「私、頑張ったもん! 」
「モックも頑張ったキー! 」
「そうね、ホントにありがとう」
「むにゃむにゃ、またカレーか、もう飽きたぞ。むにゃ」
イブは、疲れてもう寝てしまったようだ。
ドカーン!!
突然の爆発音にフィーネたちは飛び起きた。
何事かと思い、家を見ると。玄関に小さな穴が開いている。
フィーネがドアを開けて中を見ると、小さなドリアードがのびていた。
「ちょっと!大丈夫? 」
ドリアードの子供が正気に戻った。
「キキ!へいきだッキキ!この間は、助けてくれて、ありがとうだキキ! 」
フィーナは、また余計なことが増えたと思いながらも、
「あなたの名前は? 」
と聞いた。
「ドンキーだキキ! 」
「ドンキー、何があったの? 」
「モック兄ちゃんに会いたくて、走ってきたら、勢いがつき過ぎたキキ! 」
「まったくもう。面倒くさいなあ。時代戻れ、リバース」
フィーネの呪文で玄関のドアがあっという間に直った。
ドンキーは、どうやらモックに会いに来ただけらしい。
追い返すのも悪いので、フィーネは一緒に夕食を食べることにした。
とは言え、ドンキーとモックは水だけだが。
魔法で夕食の支度をして、ドンキーを加えた5人(?)で食卓を囲む。
「我が家も賑やかになったわね」
フィーネがつぶやく。
モックとドンキーはすっかり打ち解けた様子で、兄弟のようにじゃれ合っている。
フィーネは、イブに気になっていることを聞いてみた。
「ねえ、イブ。女神の魂をもつ子供って、どうやって探すの? 」
「その子供は、ぼくが見ればわかる」
「どの辺にいるとか、種族とか、何かヒントは無いの? 」
「女神とその子供は、自然に引かれ合う。待ってれば向こうから来るはずだ」
フィーネは納得いかないような顔をしている。
「そんな適当で良いの?世界の存亡がかかってるんでしょ? 」
「だから、こうしてぼくがココに来たんだ。信用して準備だけしてればいい」
「なんだか腑に落ちないわね……」
フィーネとイブが話し込んでいるうちに、リリィとモックとドンキーが追いかけっこを始めた。
「待てー! 」
「お兄ちゃん待てキキー! 」
「待たないキー! 」
「3人とも、家は壊さないでね! 」
フィーネが3人に言う。
フィーネとイブは、ロッキングチェアに座って、食後の紅茶を楽しんだ。
「ねえ、イブ? 」
「なんだ?フィーネ」
「私が99回も転生した理由って何なの? 」
「フィーネの魂は、世界を救う鍵なんだ」
「世界を救う鍵? 」
フィーネは驚いて聞いた。
「その魂の準備のために、99回の転生、つまり99回の人生経験が必要だった」
「私って、そんなに大きな運命を背負ってたの? 」
「まあ、ぼくが居れば、フィーネは何も心配することはない」
「なんだか、のんびりもしてられなくなりそうね……」
「とにかく、女神の魂を持つ子供と、99回転生した魂を持つフィーネが揃えば、世界を救える。そういうことだ」
「待てー! 」
「待つキキー! 」
「待たないキー! 」
相変わらず3人は追いかけっこをしている。
フィーネは深いため息をついて、紅茶を一口飲んだ。
「なんにせよ、みんなが居れば良いか」
星空を見上げながら、つぶやくフィーネであった。




