表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!  作者: DAI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/60

第10話

ここはウエス国の森の中。


はるか昔に滅びた町の遺跡が残る場所。

巨大なクモとエルフのフィーネが対峙していた。


「ねえ、みんな捕まってるみたい。どうしよう? 」

リリィが怯えた声で言う。

ゴブロー、イブ、モック、そして行方不明だったドリアードの子供も捕まっているようだった。

大きな繭のような白い球体が4つ、巨大グモの近くにある。


「ああもう、面倒くさいなあ」

フィーネは大きくため息をついた。

「風よ吹け、ウインド」

フィーネが呪文を唱えると、風の刃が繭に繋がった糸を切り裂いていく。

ゴロンゴロンと繭が4つ、フィーネたちのところまで転がってきた。

「みんな生きてるみたい! 」

リリィが繭に触れて確認する。

「じゃあ、これでお終いね。炎よ出でよ、インフェルノ」

炎の矢が巨大グモに直撃する。


ギヤーーーー!!


巨大グモが、断末魔の声を上げ、燃え上がった。

バタバタと無数の足を動かしていたが、やがて動かなくなった。


リリィとフィーネは手分けをして繭を破って開ける。

「助かったキー! 」

「ありがとう。死ぬかと思ったよ」

「女神が、こんなざまとは情けない」

モック、ゴブロー、イブが無事に出てきた。

最後の一つの繭を開けると、中からモックよりも一回り小さなドリアードの子供が出てきた。かなり弱っているようだ。


「急いで、仲間のドリアードの所に連れて行きましょう」

フィーネが言うと、ゴブローが立ち上がって言った。

「俺が案内する」

ドリアードのいる場所まで、フィーネたちは急いだ。


日没の時間が近い。ゴブリンの村が襲われるタイムリミットまで、あとわずかだ。


「ここだ! 」

ゴブローが叫ぶ。そこは開けていて何もない場所だった。

「何にもないじゃない」

リリィが言う。

フィーネは両腕に抱いていたドリアードの子供をそっと地面に置いた。

その時、


ゴゴゴゴ


地響きのような音が聞こえた。

そして、


ドーン!ドーン!


周囲の木が動き出す。幹に顔が現れ、土から引き抜いた根が両足になった。


「ドリアード!居なくなった子供を取り返してきた!巨大な蜘蛛に捕まっていたんだ! 」

ゴブローが叫ぶと、

「ゴブリンよ。わし達は誤解していたようだな。子供を助けてくれてありがとう」

ドリアードが野太い声で話す。どうやら、誤解は解けたようだ。

モックがドリアードの子供を仲間の元に連れていく。

「これで安心だキー」


ドリアードの子供は、フィーネたちの方を振り向くと手を振った。

「誤解が解けて良かったね」

リリィがゴブローに言う。

「そうだな。これで村は救われた」

ドリアードたちは、森の中に消えていった。



フィーネたちは、ゴブリンの村に戻り、事の顛末を村長に報告した。

「エルフ殿、本当にありがとう」

「もう、面倒はごめんよ」

フィーネは、村長から薬草や紅茶の葉を報酬として受け取った。


「フィーネ!ありがとう」

ゴブローに見送られて、フィーネたちは、家に戻ったのだった。



「すごい冒険だったね!私、もっと冒険したい! 」

リリィは、まだ冒険したりないようだ。

「もう、こんなのはコリゴリよ」

フィーネは、もうウンザリという顔で言う。

「ぼくは女神なのに、本当に情けない。もう油断はしないぞ」

イブは、さっきから反省しきりだ。

「キー!モックは、あの子と友達になったキー! 」

モックはいつの間にか、ドリアードの子供と友達になったようだ。


家にたどり着くと、フィーネはロッキングチェアに座って、紅茶を淹れた。

「あー、本当に疲れた。紅茶が体に染みるわ」

「なんだか眠くなってきちゃった」

さすがのリリィも疲れてしまったようだ。座ったとたんにウトウトとうたた寝を始めた。膝の上ではモックが寝息を立てている。

「それにしても、あの巨大グモ……気になるな」

イブは、何か引っかかることがあるようだった。



その夜、

フィーネたちは、いつもより豪華な食事を楽しんだ。

「モック、あのドリアードたちは知り合いじゃないの? 」

フィーネが気になっていたことを尋ねた。

「モックは、別のところに住んでいたキー。だから、あの人たちは知らないキー」

「そうなんだ。モックは寂しくないの? 」

「フィーネとリリィがいるから平気だキー」

モックはフィーネとリリィの手を握って言った。

「私たちは家族だもんね。モック」

リリィが言う。

「そうだキー。モックたちは家族だキー」

モックの言葉に、フィーネはつぶやいた。

「家族、か……」


食事のあと、

ロッキングチェアに座って、紅茶を飲みながら、フィーネは考え事をしていた。

「里のみんなが生きていたら、私はどんな人生を送ってたんだろう?普通に結婚して、子供がいたのかな……」

夜空の星が滲んで見える。フィーネの頬を涙がつたっていった。

「フィーネ、泣いてるの? 」

リリィが心配そうにのぞき込む。

「ううん、大丈夫。私にはリリィやモックがいるから」

「フィーネ、変なの」



フィーネは、こんなのんびりもありかな?と思うのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ