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05S.ログゼルとの再会

先程の腐った熊の件は、どうやら「魔神リーリス」が、リアンナ達の戦闘訓練用に、設けてくれたイベントのようでした。リアンナに取っては、初めての戦闘体験でした。彼女は、中々「上手く対応出来た」と、思いました。4獣達は自分の化身でしたので、声に出さなくても「思うだけ」で、自分の意志通りに動きました。全く以って、良い体験でした。それに魔神から、嬉しい「巨獣のカード」のプレゼントも、有ったので彼女は、感謝の気持ちで一杯でした。


もう日が暮れて、暗く成りました。お腹も減ったので、一先ず解散して、各自が狩猟して、飢えを満たすようにと、4獣達に思いを伝えました。彼らも皆、分かって居たようでした。それぞれ気配を消すと、暫く何処かに消えました。リアンナは、留守番です。すると早速、獲物を仕留めたようでイヌンが、何かを食べました。


ネコンも、狩りが成功したようでした。トリスもイグアンも獲物を仕留めて、何かを食べました。4獣達が一斉に、食事を始めると、瞬く間にリアンナは、お腹が一杯に成りました。4獣達が何を食べたのか、リアンナには、不安が有りましたが、今晩は、考えることを、止めました。皆、戻って来るようにと、思いを伝えると4獣達は、代わる代わりに、リアンナの元へと、帰って来ました。


今晩は、ここで野宿です。体温が無かったイグアンのみは、存在が消滅しましたが、他の3獣達とリアンナは、丸く成り、お互いの体温の中で、温め合いながら、眠りに就きました。


朝が明けました。今日は、ふもとまで降りて、人の町に入る予定でした。リアンナ達は、イヌンと成り、走り抜けるつもりでした。「飛んだ方が、早いだろう」と、思われましたが、ここでの飛行は、危険で有ると「御守護」からの警告が、出たので犬に成り、走り抜けることにしました。イヌンは、斜面を走りました。


暫く走ると「人の町」が、見えました。町の様子は、リアンナ達が居た時代の、町の佇まいと、良く似て居ました。今は、まだ早朝でしたので、人の姿は見られませんでした。所々に鳩に似た生き物が、ボウガンの矢に、突き刺されて死んだような、死骸が、転がって居ました。誰かが狙って「故意に殺傷した」と、思われました。


町の中に入ると、同じような小動物の死体が、転がって居ました。この町は、動物達に取っては、とても危険な町でした。イヌンも警戒しながら、走りました。建物の中では、あちらこちらで人が、朝っぱらから、言い争って居るような言動が、聞こえました。皆、苛立って居ました。


イヌンは、少しペースを上げて、走りました。すると無事に、この町を駆け抜けることが、出来ました。暫く畦道のような場所を駆け抜けると、小高い山の中腹が、見えました。リアンナが弟と、2人で暮らした家は、この中腹に在りました。


この山の斜面は、小石が多くて足が滑り易い小道でした。歩くには「コツ」が、有りました。リアンナも、この道のことを、思い出しました。何で、こんな道の先の家に、住んで居るのか、理由は良く分かりませんでした。しかし彼女達は、子供の頃から、馴染んで居たので、平気に成りました。


しかし、あの当時は、雨が降って居た「翌日の朝」と、言うことも有り、リアンナが家から出て、斜面を下って歩いて行くと、運悪く足を滑らしてしまい、危険な段差から、落下しました。彼女は、そのときに背面から落下したので、臀部を強打しました。そして運悪く彼女は、そのまま死んでしまいました。


彼女は、その場所で何日間も、放置状態のままで、誰にも気付かれずに「キューブィ第1世代」の最後の日を迎えました。彼女は、そこで「死にました」が、幸いにも、空間に飲み込まれてからの「永遠死」では無かったので、その後、何十回も、生まれ変わることが、出来ました。


しかし残念ながら、彼女の弟を初めとした、たくさんのこの時代の人々は、空間に飲み込まれると、二度と転生することの無い「消滅」を、しました。リアンナは、その当時のことを、ハッキリと思い出すことが、出来ました。当時の記憶は、決して忘れることがない程に、彼女の「アニマス(根源)」に、深く刻み込まれました。


イヌンは、坂道の前方に、誰かが足を滑らして、落下したような形跡の有る場所まで、来ました。イヌンは、リアンナの指示も有ったので、その場所に近づくと、気を付けながら、顔を突き出して、段差下を覗きました。すると結構下の方に、上空を見据えて、仰向けで倒れて居る「若い娘の血だらけの死体」が、そこに有りました。イヌンは、ジッと見ました。「御守護」は「早く弟の所へ行け。」と、指示されました。


イヌンは、踵を返すと「弟の家」に、向かいました。「魔神リーリス」に、近くの空間まで送られて、そこから「タイムリトア(時間遡行)」して、ここまで来ました。結構な、移動距離でした。しかし「魔神リーリスの御守護」が、有ったので、迷うことも無く「直線距離」で、ここまで来ました。イヌンは、家の前まで来ました。


イヌンは「リアンナ」に、変わりました。彼女は、起き上がると右手を差し出して、玄関の「ドアノブ」を、回しました。鍵が掛かって居ます。リアンナは、知って居たので、鍵の隠し場所を調べると、鍵が置いて有りました。この場所は、弟と彼女しか知らない「秘密の場所」でした。早速それを取り出して、鍵を開けて中に入りました。


「リアンナ」は、弟に呼び掛けました。「ログゼル、私よ。エレナが、帰って来たのよ。ここに来て、顔を見せてよ。」・・・暫くすると無言で、誰かの足音が、近づきました。壁際から、小さい男の子が、顔を出して、こちらを見ました。小学生位の「エレナ」に、良く似た男の子でした。


男の子は、リアンナの顔を見ると「お前は、おねぇちゃんじゃない。おねぇちゃんは、何故帰ってこない。」と言って、大分機嫌が悪い様子でした。この時代の人々は、子供でも苛立って居るようでした。ログゼルは、全身を表すと、その背後から、大きくて黒い、リアンナのイヌンと、良く似た「オス犬」が現れて、リアンナを威嚇する様子を、見せました。


この犬の名前は「ジョン」と言って、ログゼルが可愛がって居る犬でした。彼が1人で、居るときは、いつも傍に付いて彼を、守って居た「不思議な犬」でした。この犬は、突然居なく成ったり、現れたりした「ログゼルの分身」のような犬でした。当時のエレナには、理解が出来なかったのですが、ジョンは「ログゼルのキュービアン」でした。しかしログゼルのキュービアンは、このジョンしか現れなかったようです。


リアンナは「ジョンの威嚇」にもめげずに、ログゼルに言いました。「ごめんなさい、ログゼル。私は正確には、貴方のおねぇさんの転生態よ。残念ながら、この時代の貴方のおねぇさんで有った私は、もう事故に遭い〝既に死んで居るの″戻って来なかったのは、死んだから帰れなかったの。・・・。」


「私は、あれから何十回も、生まれ変わって今日、やっと貴方を、迎えに来ることが、出来たのよ。遅く成って、御免なさいね。もっと早く、ここに来たかったのよ。」と、リアンナは、ログゼルに語りました。しかしログゼルは、全く理解出来ませんでした。ジョンは「激しい威嚇」を、始めました。リアンナも「危険だ」と、思いました。


リアンナは、彼が見て居る前で、4獣達を出現させました。「リアンナのイヌン」は、彼のジョンよりも、遥かに大きくて黒い、立派な「犬型キュービアン」でした。イヌンは、ジョンに向かって「狂暴な声」で、吠えました。


イヌンに、吠えられたジョンは、一溜まりもなく、怯えてしまい、ログゼルの後ろに隠れると、消えてしまいました。ログゼルは、とても驚いたように、泣き出しました。リアンナは「しょうがないな」と、思いました。あのまま黙って居たら「ジョン」に、食い殺されたかも知れません。リアンナは、ログゼルが、泣き止むのを、待ちました。


リアンナは、知って居ました。ログゼルが泣いて居るのは「噓泣き」で、有ることを。彼の周りを4獣達が、取り囲むと、ログゼルが泣き止むのを、待ちました。暫く泣いた振りをしたログゼルが、とても気に成ったのか、泣き止むと、ネコンの顔を、優しく撫でました。すると彼が、言いました。


「おねぇさん。この猫は、おねぇさんの猫なのかい。それにこの鳥も、この蜥蜴も皆、おねぇさんのものなのかい。どうすれば、おねぇさんのように、たくさんの動物達を、出すことが出来るのか。やり方が有れば、僕にも教えて欲しい。」とログゼルは、真剣に成り、彼女に話し掛けました。


リアンナは、言いました。「大人しく、私の言うことを、良く聞けば、特別に貴方に、教えて上げても良いわ。良いかなログゼル君。」彼女は、この弟の扱い方を、良く知って居ました。そこで交換条件を付けて弟に、話し掛けたのです。


彼は、怖いもの知らずで、有ったのか。リアンナの「大きな蜥蜴」で有るイグアンを、抱き締めると「おねぇさん、この蜥蜴が凄くカッコいいよ。僕にも、この蜥蜴が、出せるように成れば、おねぇさんと一緒に、付いて行っても良いよ。」と、目を輝かして、答えました。また本音も、語ってくれました。


「僕は、おねぇさんのことを、初めて見たときから、分かって居たのだよ。おねぇさんは、僕の本当の〝おねぇちゃん″じゃないかと。しかし顔も声も違って居たので、ジョンを、けしかけて、みたのだよ。本当のおねぇちゃんは、僕と違って、犬の1匹も、出せない姉で有ったから。」と、言いました。


「しかしいつかは、僕よりもたくさんの動物達を、出現させて、僕に見せて、くれるんじゃないかと、いつも思って居たのだよ。」と彼は、リアンナに語りました。彼女には、彼の理屈が、良く分かりませんが「彼女の4獣達」を、披露したことで、彼成りに、心を開いてくれたようでした。


リアンナは、言いました。「早くここから逃げないと、二度と転生出来無く成るのよ。もうじき〝この世界が終わる″のよ。私は、先に事故死したのでこうして、転生後に、貴方を迎えに、来ることが出来たのよ。早く逃げるわよ。もう時間が無いのよ。」彼女の言ったことが、ログゼルには、何となく「理解出来た」ようでした。幼い彼にも、この世界が、終わることを、彼は身を以って、感じて居るようでした。


「ログゼル。早く出発の支度をしなさい。持って行けるものが有れば、持って行けるわ。私も持って帰りたいものが有るの。」と、彼女は言うと、嘗ての自分の部屋に、向かいました。リアンナは、自分の部屋に入ると、とても大事なものを数点、持ち出して「自分のリュック」に、入れました。


そして自分の用事が済むと、ログゼルの部屋に、向かいました。彼は、まだ子供でしたので、要領が良く分から無いらしく、間誤付いて居たので彼女が、必要と思われるものを選ぶと「彼のリュック」に、詰め込みました。まだ滅亡までは、数日有るようでしたので、少し時間が残されました。この家には、それ程大事なものは、残って居ませんでした。リアンナは「これでよし」と、しました。


「リアンナ」は、暫く考え込むと「1番大事な弟の身柄」を、確保出来たので「これで帰ろう」と、思いました。リアンナは、4獣達を回収すると、それを見たログゼルが「尊敬の眼差し」で、彼女を見ました。リアンナが、言いました。「さぁ、ログゼル帰るわよ。」するとログゼルは「分かったよ、おねぇちゃん。」と、言いました。


リアンナは、2人揃って、元の世界に帰れる準備に入りました。まず「魔神リーリス」に「弟を確保出来たので、これから戻りたい」と言う「思念」を、送りました。すると直ぐに、返答が来ました。「ハマーの〝サキュレス・ホーム″のリアンナ専用の別棟に、帰るようなイメージを持ちなさい。」との思念が、来たので、そのまま彼女は、弟を抱き締めると「別棟のイメージ」をしました。


すると何処かに、引き込まれるような「不快な感じ」が、しました。そして次の瞬間には、もう別棟の中に帰って来ました。リアンナは此処が、ハマーが自分の為に、用意した「ハマーの別棟」で有ることを、確認しました。タイムリトアの帰還も、出発のときと同じで「妙な負荷」を、身体に感じながらの帰還でした。早速、無事に戻れたことを「魔神リーリス」に「報告の思念」を、送りました。すると魔神からの返答は「暫し待て」とのことでした。

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