10S.淫魔サティアン 後編
「リアンナ」は、イヌンからトリスに変わると、羽ばたいて、上空より「富豪の屋敷」の中に、入りました。「トリス」は、屋敷の中に生えて居る、木に止まると、中の様子を、伺いました。「リーリスの御加護」は「屋敷の中へと、入るように」と指示を、出しました。
トリスは、羽ばたいて回廊沿いを飛びました。屋敷の中は、この時代の風習なのか、とても開放的な造りでした。中には、人の姿が見えませんでした。家人は何処かに、出掛けて居るようでした。「リーリスの御加護」は的確に、彼女に居場所を、示してくれました。指示通りに進んで行くと、大きくて「豪華な部屋」が、見えました。
どうやら「淫魔サティアン」の彫像は、この部屋に、仕舞われて居るようでした。トリスはドアの前で、リアンナに変わると、ドアノブを回して中に入りました。大きめの部屋の中で、富豪の大きなベッドの近くに、白いシーツのようなもので、隠された人型が、有りました。リアンナは、近づくとシーツを、捲りました。
中には「灰色をした、美しい裸の女性」の「等身大の彫像」が、立って居ました。まるで生きて居るような「妖艶な彫像」でした。「淫魔サティアン」は、そのように形を変えながら、男から男へと、持主を変えて「所有者のバイタリティ」を、奪いながら、生き長らえて居ました。今の彼女の所有者は、既に亡くなったようでした。今は、葬儀の最中かと、思われました。
逃げるので有れば、今がチャンスです。しかし「サティアン」は、彫像のままです。彼女の意識が、全く感じられません。彼女は、深い眠りに、落ちて居るようでした。「リアンナ」は、どうすれば良いのか、見当が付かなかったので「リーリスの御加護」に、尋ねました。すると御加護は「彼女に、何か〝強い衝撃″を、与えてみなさい。」と、伝えました。
「リアンナ」は、もっと集中すると「彼女の後頭部を、思い切り叩け」と、指示されました。そこで彼女は、部屋の中を見渡しました。すると近くに、モップの柄のようなものが、置かれて居ました。リアンナは、それを手にすると、狙いを定めて、思い切り「彫像の後頭部」を、叩きました。その反動で、モップの柄が、折れました。
すると彫像が、微妙に振動を始めました。振動が止まると「彫像の眼」が、開きました。それは「リアンナ」を、睨み付けました。リアンナは、彫像に丁寧に詫びを入れると、「自分は、魔神リーリス様の命令により、貴方を救済する為に、ここに来た。」と、告げました。
すると彫像の「怒りの眼」は、嬉しそうな眼に変わると「リアンナ」に、話し掛けました。「私は、長らく〝この身体″と、成って居る。元の肉体に戻るには〝男の精気″が必要だ。〝若い男を3人″ここに連れて来てくれないか。」と、リアンナに頼みました。また「この屋敷には、3人の若い男達が、留守番をして居る筈だ。」と、彫像が「男の情報」を、教えてくれました。
「その男達を、ここに連れて来れば良い」とのことでした。リアンナは、男達を連れて来る方法に、困ったので「リーリスの御加護」に、尋ねました。すると、御加護は「犬に成り、激しく吠えれば、番人達が来るだろう。」と、教えました。
早速「リアンナ」は「イヌン」に変わると、大きな声を出して、激しく吠えました。すると遠くの方から、慌ただしく、人の足音が、近づきました。イヌンは、彫像から少し離れると「イグアン」に、変わりました。そして透明に成り、番人が入って来るのを、待ちました。彫像は、一連のリアンナの行動を見ると、感心しました。
暫くすると部屋の中に、男が3人、入って来ました。男達は、慌てて犬を探します。しかし犬の姿は、何処にも有りませんでした。シーツが落ちて「全裸の女性像」が、立って居たのを、男達が見付けると彼らは、まるで吸い寄せられるように、彫像に近づきました。3人は、彫像の前に立つと、動きが止まりました。
彫像の魅力に、取り憑かれたようです。3人の様子が、少し変です。男達は、風船が萎んで行くように、みるみる内に、無言のまま、朽ちて逝きました。彫像の前には、骨と皮と成った、醜い「ミイラが3体」横たわって居ました。
すると灰色の石像は「淫魔サティアン」に、変わりました。彼女は、初め全裸でしたが、時間が経つと今では、赤い光沢の有る「ボディコンスーツ」を、着込んだ、あの姿と成りました。サティアンが言いました。「もっと〝男の精気″が欲しい。でも取り敢えず、これでも大丈夫よ。貴方はキュービアンね。」
「リーリス様、お気に入りのキュービアンを〝御使い″として、迎えに行かせたのね。助けに来てくれて、とても嬉しいわ。私は〝淫魔サティアン″リーリス様の4眷属の1人だわ。迎えに来てくれて有難う。貴方の名前は?」とサティアンは、とても機嫌が、良いようでした。リアンナが、言いました。「私の名前は、リアンナ。キュービアンのリアンナです。初めまして。」と軽く、挨拶しました。
リアンナは「今からリーリス様に、淫魔サティアン様の救助が、成功したことを伝えます。」と、彼女に言うと、サティアンは「貴方は、この時代からリーリス様に直接、話し掛けることが出来るのね。それは凄い能力よ。流石にリーリス様が、選んだ戦士ね。感心したわ。」と彼女は、リアンナのことを褒めました。リアンナは、深く念じて「サティアンの救助」が、無事に成功したことを、伝えました。すると早速リーリスからの返事が、来ました。「リーリスの加護に従え」とのことでした。
リアンナは、御加護に尋ねました。すると「そのまま飛行して、上空より屋敷を離脱して、離れた空地を目指せ。そしてそこから戻って来い。」とのことでした。早速リアンナは「淫魔サティアン」に、次の行動を説明すると、彼女はサキュレスなので「翼を持って居るから、飛行に関しては、何も問題は無いわ。」との返事でした。
2人は、部屋から出ると、リアンナは「トリス」に変わり、サティアンは、淫魔の翼を出すと2人で、その場を離れました。屋敷から、少し離れて飛行すると、丁度良い空地が、見えました。トリスは、サティアンを誘導すると、その地に降りました。トリスは、リアンナに変わると、念じて「桃色の魔法陣」を、出現させました。そして2人で、その中に飛び込むと、リアンナだけ意識が、遠のきました。
リアンナが次に目を覚ますと、ハマーの「サキュレス・ホーム」に、戻って居ました。彼女は、別棟の自分の屋敷のベッドの中で、寝て居ました。ハマーが見付けて、ここまで運んで、くれました。「キューブィ第1世代」からの帰路途中で「淫魔サティアン」は「魔神リーリス」のテリトリーに入ると、彼女だけ「リーリスの元」へと、連れて行かれました。
「淫魔サティアン」は、リアンナが助けに来てくれたことに、非常に感謝しました。ハマーが、彼女からの伝言を、頼まれたようで、後でリアンナに、伝えてくれました。その内容とは「リアンナ、私を助けてくれて有難う。貴方が私の後頭部を、殴り付けた件は、許してあげるから今度、淫魔界に来ることが有れば、私が貴方のことを、歓迎するわ。」と言う、内容でした。
これで「魔神リーリスの4眷属」の1人で有る「淫魔サティアン」の救出が、終わりました。リアンナの救出劇は、これで終わりでは有りません。まだまだ続きが、有りました。次の救済者の名前は「使役魔アシュロン」でした。
彼女も情報によれば「中央神ゼビス」の「捜索の眼」を恐れて、何処かの地脈の中で「大地のエネルギー」を、吸収しながら、生き長らえました。彼女も「魔神リーリス」からの救済を、待ち望んで居るようでした。彼女は、とても固い「岩盤の中」に、閉じ籠って居ました。噂では、その岩盤を破壊すのが「可成りの問題」でした。
☆この後は、残りの「4眷属」の救出が、続きます。また「スドレス(疑似淫魔)」も、複数出現する為、彼女達の回収が、始まります。また、この時代にしか居ない希少種の「リットン」も、回収されます。リアンナが、この「時代の任務」を、全て終わり「元の世界」に、帰還すると「神の代替わり」が、起きました。それは「右側神サタナス」の時代が終わり「新しい右側神の時代」が、始まることを、意味しました。そして、大きく成り過ぎた「右側神の世界」とのバランスを、取る為に「左側神の世界」が、起動した処で、この物語は終わります。




