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日本人はお米が大好き ~一番米のためならばこれは普通~

作者: 北見晶

 ノクターンの長編ぶった切って投稿しました、お米ネタ。書きたかったんですマジで!


 日本人はお米が大好きと言われている。

 根拠の一つはこんな逸話。

 

 アメリカとの合同惑星探索中、異なった環境を持つ二つの星が発見された。

 片方は地球より小さくて農業に最適。

 もう片方は地球より大きくて、レアメタルや宝石が大量に確認された。

 日本はアメリカと会議の末、前者を選んだ。

 理由は簡単。


「米を作るのに最適なんだろう?」


「だからさあ、日本人がみんな真っ白いご飯はばっか食べてるっていうのは偏見なの! へ・ん・け・ん! そんなんだったらパン屋さんとかラーメン屋さんなんてあるわけないでしょうが! 仮にそういう人がいるにしても! あたしはそうじゃないの! 勝手に決めつけないでよね!」


 機関銃の勢いで舌を躍らせてから、多々内(ただうち)舞花(まいか)米麹(こめこうじ)の甘酒を一気にあおった。


 事情があってそれまで勤めていた会社を辞め、家事代行サービス会社に就職した舞花。現在はシェアハウスで三人の女性と一緒に暮らしている。

 ヨガインストラクターで、イギリスから日本に帰国した小野寺(おのでら)絢菜(あやな)

 エステティシャンでフィンランド出身のピルヨ・スオミ。

 はるばるアーダ星から地球に移り住み、日本の自動車会社で営業に所属している、元第五王女フォルツァ・ギギン。

 皆、舞花と同じく二十代だ。幅があると言われてもそれくらいの誤差は可愛いもの。


 昼食を終えてしばらくの時を経て、小腹も空いたところで舞花は三人を誘って話をしていた。飲み物と茶菓子を用意して。

 始めのうちは緩やかなトークであったが、日頃のストレスがたまり、ついエキサイトしてしまった。


「……でも、わたしから見ればあなたは充分お米好きよ。この間買ってきたコッペパンだって、具材チャーハンだったし、パンも米粉が入っていたやつでしょ? まあ、おいしかったけど」

 絢菜は目の前にあるおこしをかじる。繊細な容姿に似合わぬ豪快さだが、文句は言わない。


「あれは具材よ。具材。それにチャーハンはチャーハン。お米を使っていればご飯なわけじゃないのよ」

 そもそもあなた日本人でしょうが、とはあえて言葉に出さない。


「食事も“ごはん”と言いますけどね」

 フォルツァが割り込んでくる。

「それは今言うことじゃないでしょうが」


「……でもさ、さっきラーメン屋の(はなし)してたけど、キミラーメン屋でもライス頼むよね。真っ白いの」

 ピルヨがアイスブルーの瞳で見つめる。

「お腹がすくのはしかたないでしょう?」

 迷いなく日本人女子が答えると、フィンランド女子はライスパフのチョコレートを口に入れた。


「なら他の頼めばいいじゃないですか?」

 フォルツァの声音は静かだが、鋭い。

「ご飯はお腹にたまるのよ」

 舞花は胸を反らしてみせた。


「……ですが、普通“コスモライス”一番米(いちばんまい)目当てにホワイティアへの切符買って、有給休暇取ろうなんて思いませんよ」

「何言ってんのよ! 一番米よ一番米! それをあのクソ野郎、自分が買いに行きたいからって、あたしの有給取得許可しないでさあ……」


 米粉サブレを一枚消費してから述べる元第五王女に、日本人女子はいきり立つ。


 そう、日本が獲得した星、ホワイティアでようやく稲穂が実りを迎え、製品化されたのが半年前。

 予約が殺到するのを見越して宇宙船のチケットを購入し、有給休暇の申請を求めたが、無惨にも当時の上司に断られた。


 それまでの仕打ちもあって、翌日辞表を出した。上司も先輩も好き勝手に喚いていたが、知らない。

 しばらくしたら会社自体吸収合併されていたが、舞花の考える事象に非ず。


「それにいくらあたしだって、それだけで会社は辞めないわよ。いろんなものの積み重ねの結果だってば」

 舞花は息を大きくついた。


「-ーで、一番米はどうなったんです?」

 先を促すフォルツァに、


「買えたわよ~。三日前から待っていた甲斐があったわ。オムツと宇宙食と寝袋も持っていったし」

 頬を緩める舞花。


「「「オムツぅ!?」」」

 顔色を変えて叫ぶ三人。絢菜もピルヨもフォルツァも目を見開いていた。


「そうよ。並んでいても、トイレに行ってたらまた後ろに並ぶことになると思ったし。あ、勘違いしないでね。ちゃんと新しいのとたびたび交換したわよ。水着着替える用のタオル腰に巻いてね」


「「「そんなこと言わなくていいわよ!!」」」

 またも響く見事な三重唱。

 

「それでお米だけのと簡易炊飯器つきのがあったけど、お米だけのにしたの。売場とは別のところでお米が炊けるっていうから、持ってきた炊飯器で炊いて。あ、もちろんお水入れてよ、ホワイティアのミネラルウォーター。それで炊けたらまず何もつけないで食べて……あ、炊けたのはお茶碗三杯分ね。次に卵かけで、最後は周りの人とおかず交換したのよね。あたしはナメタケで、他の人は明太子だとか塩辛だとか高菜漬けだとか……どれも合ってね、逆にご飯が足りなくなったぐらい。配分を考えるべきだったわよね」


 相好を崩す舞花。


……三人のたじろいだ面持ちに気づくのに、しばしの時を要した。 


  


 ラーメンやパスタも充分主食なのに、ついご飯が欲しくなります。

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