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4-5 特別講義②

バレンティ公爵夫人による特別講義、開講です。



 俺が大きな不安と戦っている間に、バレンティ夫人は教壇に戻って講義を始めた。内容は勿論、魔力管についてだ。


「私達人間の身体には、全身に魔力管というものが伸びているの。私達が魔法を使う時、この魔力官に無数に開いている魔力穴から魔力が体外に出て魔法になる。

 魔力管は身体中に網目状に広がっていると言われているけれど、魔力管そのものに決まった形はないとされているわ。何故なら、魔力管はその人自身の魔力でできているから。魔力は形の無いものだから、その魔力でできている魔力管が変幻自在なのは理解できるでしょう?

 だから、身体のよく魔法を使う部位に魔力管は多くなると言われているわ。右手から魔法を出すことが多い人は、左手よりも右手の魔力管が多くなるし、手より足から魔法を使うことが多い人なら、足の魔力管が発達するでしょうね。

 さて、ここで前の単元のおさらいをしましょう。魔力は基本、全ての生物が持っていて、魔力がなくなったらその生き物は死んでしまうとされているわね?だから、魔法の使いすぎで魔力枯渇状態になっても、生命維持できるだけの魔力は身体に残るのよ。ここまでは復習ね。

 実はね、魔力無しと言われる人が稀にいるけれど、そういう人にも生命維持できるだけの魔力はあるの。ただ、魔力枯渇状態の人や、魔力無しと呼ばれる人には、魔力管を身体に張り巡らせる程の魔力が残っていないの。だから、魔法が使えないのよ」


 バレンティ夫人の講義の中に出てくる「魔力無し」の単語に、思わずマイト先生の方を見てしまった。先生は意に介した風もなく、黙って夫人の講義を聞いている。俺は思わず俯いた。


「魔力判定で使用する水晶玉は、手まで伸びている魔力管から魔力を吸い出す機能があるの。殆どの人の手には魔力管が伸びているから、手で水晶玉に触れることで魔力を吸い出され、その吸い出された魔力の属性によって反応を変えるのが、あの水晶玉の性質なのよ。つまり、どんなに小さな変化でも、水晶玉が変化したってことは、手に魔力管がある、魔法を使える素養があるということなの。

 でも、魔力管に流せる魔力が少ないと、魔法を発動できるだけの魔力の勢いが足りない。魔法って、体内の魔力を魔力穴から一気に放出することで発動するんだけれど、魔力が少ないとその勢いが足りないのね」


 そう言いながら、バレンティ夫人は教卓の上にあった水槽の前に立った。そして、何やらガラスの筒のようなものを取り出す。


「これを見て頂戴。このガラスの筒が魔力管だとします。この筒の先には栓がしてあるのだけれど、この栓が抜けたら魔法が発動すると思って頂戴。このガラスの筒に、今からあなた達の魔力に見立てて水を注ぐわ。マイト先生、少し手伝ってくださる?」


 夫人に言われて、マイト先生が大きな水差しを持つ。注ぎ口も大きくてたくさん水が入りそうな水差しだが、先生の持ち上げ方的に中身はあまり入っていないようだ。


「今、マイト先生に持って頂いた水差しには、あなた達の魔力のように少量の水が入っています。マイト先生、その水差しからガラスの筒に水を注いで下さい」


 先生が、ガラスの筒に水を注ぎ始めた。水差しからはチョロチョロと水が出るが、勢いなど全くなく、ガラスの筒の栓は抜けそうにない。


「この様に、少ない魔力では魔法は発動しません。では、栓を抜くためにはどうしたらいいかしら?」


「水をいっぱい流せばいいと思います」


 バレンティ夫人に当てられた男子生徒が答える。


「そうですわね。でも、あなた達の魔力量だと、魔法発動には足りない。そこで、私の魔力を足します」


 そう言って、バレンティ夫人は水槽の中の水を水差しに杓子で移し替え始めた。たっぷり水の入った水差しを、マイト先生が重そうに持つ。


「ではマイト先生、お願いします」


 バレンティ夫人の言葉で、マイト先生は水差しを傾けた。

 途端に水差しから勢いよく水が出て、ガラスの筒に注がれる。そして、すぐに栓は抜け、水槽へ向けられたガラスの筒から水が流れ出す。

 男子生徒が、おぉーと声を上げた。


「このように、魔力管に流せる魔力が多いと、魔法を発動させ易くなりますね。しかし、今のあなた達の体内には、魔法を発動させられるだけの魔力がありません。そこでこれから、私の魔力をあなた達の体内に流します」


「あの、先生。質問いいですか?」


 女子生徒が、控えめに手をあげた。


「ええ、勿論」

「先生の魔力と私達の魔力の属性が違っても、魔法は発動できるのでしょうか?」


 女子生徒の質問に、バレンティ夫人はにこりと微笑む。


「良い質問ですね。確かに、私の魔力は闇属性ですから、皆様の魔力属性と一致する可能性は低いでしょう。でも安心なさい。魔力量が必要なのは、魔法を発動する為のスイッチを押すためであって、魔法発動の条件である、属性の一致は関係ないのよ。そうね……イメージ的には、魔力属性は魔法を発動させるための鍵だと思って頂戴。

魔力穴には鍵のかかった扉が付いていて、魔法を発動させるには、その扉を開けて魔力穴から魔力を出さなければならないとイメージしてみて。例えばファイアーボールの魔法を発動させるには、ファイアーボールと同じ属性の火属性の魔力でまず鍵を開ける必要があるの。でも、鍵を開けただけでは扉は動かない。魔法発動という扉を開くには、魔力量で押し開ける必要があるということよ。

あなた達の少ない魔力でも、扉の鍵を開けることはできるわ。私の魔力は、あくまで鍵の開いた扉を押し開けるお手伝いをするものよ。イメージできたかしら?」


 女子生徒は大きく頷いた。その瞳は希望に輝いている。夫人はそんな女子生徒を優しい眼差しで見ていた。


「では、そろそろ魔力を渡しましょうか。まず貴女から。私の手を、主にこれから魔法を使いたい方の手で握って頂戴」


 バレンティ夫人はそう言って、女子生徒の前に手を差し出した。その夫人の手を、女子生徒がおずおずと握る。


「では、私の魔力を貴女にお渡しするわね。私は、他者の体内に魔力を入れることで、その人の身体や魔力管の状態が分かるのよ。そういう闇魔法を使うから、私は他者に魔力をあげるのが得意なの。だからね、魔力の多い人全てが、魔力の少ない人に魔力をあげられるわけではないのよ。私がたまたま、魔力も多くて、他者に魔力をあげるのが得意だっただけなの。あなた達は平民だから、お知り合いに魔力の少ない人がいるかもしれない。けれど、そんな人に安易に、魔力の多い人から貰えば良いなんて勧めては駄目よ?」


 そんなことを言いながら、夫人は女子生徒への魔力譲渡を終えた。


「これで貴女も魔法を使えるはずよ。さぁ、ちょっと使ってみましょうか?貴女は聖属性だから、簡単な結界を張ってみましょう」


 夫人に促されて魔法を使ってみた女子生徒は、無事に小さな聖属性の結界を張ってみせた。それは人一人も囲えないほど小さなものだったが、彼女は感激に顔を紅潮させている。


「さぁ、次は貴方よ」


 次いで夫人に手招きされた男子生徒は、促されるままにそっと夫人の手を握った。


「もしも知り合いに、魔力が少なくて悩んでいる方がいらしたら、王都の治癒院を訪ねるといいわ。私もよく顔を出しているから、運が良ければ私が直接魔力をあげられるし、私じゃなくても、聖属性の方は他者の身体に魔力を流すのが得意だから、聖属性の治癒士に協力してもらえるかもしれないわ。ただ、ベアステラの聖属性の方は魔力量が少ない方が多いから、なかなか難しいのだけれど……はい、終わったわ」


 こうして男子生徒も魔力譲渡を受けた。珍しいことに彼も聖属性だったらしく、先程の女子生徒より一回り大きな結界を張って大喜びしていた。


 そしてとうとう、俺の番が来た。


「さぁ、こちらへ」


 他の二人と同じように、夫人に呼ばれて彼女の手を握る。そして少ししてから、夫人は俺の手を離した。正直、何かが変わった感じは全くしなくて、俺は不安になる。

 そんな俺の不安を見透かすように、夫人は俺の顔を見てにこりと笑った。


「貴方はどうやら、特殊な属性を持っているみたいね。自己理解を深めながら、どんな魔法が使えるのか試した方がいいわ。ここに残って、私と少し練習しましょう。後の二人は、今日の講義はもうおしまいです。よく頑張りましたね」


 夫人の言葉に、俺は戸惑う。水晶玉が全く光らなかった俺にも、魔法は使えるのか?嬉しいような、しかし俄かに信じがたいこの感情は何だろう?

 俺の不安をよそに、講義の終わりを告げられた二人は満面の笑みでお礼を言いながら教室を出て行った。ここに残されたのは、俺と、バレンティ夫人と、マイト先生だけだ。


 教室の扉が完全に閉まってから、マイト先生が夫人に目を向けた。


「バレンティ夫人……やはり、ルーカスは魔力無しでしたか?」


お読みいただきありがとうございました。


前回、明日続きをあげると言っておきながらその次の日になってしまいすみません……我が家の突然の雨漏りに動揺してしまい……


あ、バイオレットが生徒達に自分の魔法の説明をしていますが、彼女の読心魔法は国家機密なので、もちろん話せません。ただ、今回の講義で嘘はついてないです。


文章の切りどころが分からなくて、変な所で続いていますが、次回もよろしくお願いします。

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