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4-3 魔力判定②


 壇上へ上がると、マイト先生と学園長に左側の水晶玉の方へ誘導される。俺が水晶玉の前に立つと、学園長が確認のために、もう一度俺の名前を呼んだ。


「君がルーカスで間違いないな?」

「はい」


 俺が頷くと、学園長はマイト先生に確認を取るように目配せしたあと、頷き返した。


「では、ルーカスの魔力判定を行う。こちらの水晶玉は基本属性の魔力、あちらの水晶玉は特殊属性の魔力を持つ者が触れると、水晶になんらかの異変が生じる。では、まずはこちらの基本属性用の水晶玉に両手で触れてみよ」


 俺は小さく息を吸い、両手でそっと水晶玉に触れた。


 分かっていたことだが、水晶玉に何一つ変化はない。知っていた。分かっていた。それでも、何も変わらない水晶玉を目の当たりにすると、少し気分が落ち込む。


「君の魔力は基本属性ではないようだな」


 学園長の声に思わず俯くと、マイト先生が俺の肩を励ますように叩いた。


「ほらルーカス、次は特殊属性の水晶だ」


 明るい声で隣の水晶玉の方へ促してくるマイト先生を見上げると、分厚い眼鏡の向こうの瞳が優しく笑っていた。


 安心させるようなその瞳に促され、俺は隣の水晶玉の前に立つ。そして、意を決して両手を特殊属性の水晶玉に伸ばした。


 伸ばした手が水晶玉に触れる瞬間、なんだか怖くて目をつぶってしまった俺は、掌に伝わる硬質な水晶の感触と、先生達から一向に声のかからない状況を訝しんで目を開けた。そして、愕然とする。


 俺の両手に包まれた特殊属性の水晶玉には、全く変化がなかった。


 俺は大きく目を見開き、水晶玉の中をしっかりと覗き込んだ。手は決して離さず、何度も、何度も。少しの変化も見逃すことのないように、見る角度を幾度も変えながら。

 学園長とマイト先生も、同じように目を凝らして水晶玉を覗き込んでいた。しかし、誰の目にも水晶玉に変化を見つけることはできなかった。


 そして、しばらく俺が触ったままの水晶玉を調べていた学園長は、小さく首を振り、俺に憐憫の目を向けてきた。


「あーー、ルーカス。君には残念ながら、魔力が無いようだ」


 学園長の言葉に、俺は大きなショックを受けた。


 確かに、こうなるかもしれないと不安に思ってはいた。だけど、クリストファー殿下が仰っていたように、この国では魔力の無い人間は非常に珍しいから、まさか自分が該当することはないだろうとも思っていたのだ。


 俺はまともに頭が回らず、目を見開いたまま口をぱくぱくさせるだけで精一杯だった。このまま瞬きをすると涙が溢れそうで、必死に瞼を開け続けた。後ろから常にしていたはずのクラスメイトの話し声も聞こえない。

 硬直している俺の肩に、マイト先生が手を置く。そして、耳元で慰めるように囁いた。


「お前の気持ちはよく分かる。……俺も同じ経験をしてきたからな。だが、まだ悲観するには早いぞ。この後はここで学園長に講義をしてもらう予定だが、魔力判定で魔力の少なかった者達には、別教室で特別講師による講義を受けてもらう。後で呼ぶから、お前も来るように。もしかしたら、特別講師が魔法を使えるようにしてくれるかもしれん。……まぁ、それでももし魔法が使えないようなら、俺と全く同じだからな。特別に俺の全ての魔道具の知識を授けてやろう」


 マイト先生は俺の頭をひと撫ですると、ニッと口角を上げた。そんな先生の優しさに、余計に涙が込み上げる。


「…………ありがとうございます」


 俺が絞り出すようにそう言うと、先生は俺の背中を叩いて明るく笑った。


 俺がとぼとぼとクラスメイト達の下へ戻ると、真っ先にピーターが駆けつけてきた。


「ルーク、大丈夫?なんか長引いてたけど……」

「あーー……俺、魔力無しだったみたいだ」

「え……」


 俺の告白に、ピーターがヘーゼル色の瞳を溢れんばかりに見開く。それを見たらまた涙が込み上げそうになったが、なんとか無理して笑顔を作った。


「本当は魔法を使ってみたかったけどさ、魔力が無いなら使えないよな。…………仕方ないさ」

「ルーク……」


 ピーターが泣きそうな顔をする。やめてくれ、泣きたいのはこっちだ。


 やっぱり、クリストファー殿下が言っていた、俺が第二王子云々の話は勘違いだったんだ。この国の王子様の魔力がゼロなわけない。国王陛下の魔力は王国随一だと謳われるし、第二王子の母親は聖女様だ。魔力は遺伝するらしいから、そんな二人から俺が生まれたのだとしたら、俺だってそれなりに魔力があるはずだ。だから…………


「やっぱり違ったんだ」


 だとしたら、俺はやっぱりただの平民で、マリーとは関わり合いになれない身分だ。それがすごく悲しい。

 元々、マリーとは絶対に結ばれることのない立場だった。それなのに、うっかり自分は第二王子だと思い込んで、彼女と縁を結んでしまった。最初から一緒になれる未来を期待しなければ、こんなに落ち込むこともなかっただろうに。


 思わず溜息を吐いていると、なんとなく視線を感じた。そちらに目を向けると、エマがなんとも言えない複雑な表情でこちらを見ていた。目が合うと、彼女はこっちに近づいてきた。


「あー、ルーカス」


 エマはいつもからは考えられないほど歯切れ悪くそう言うと、言葉を探すように意味のない様々な音を発した。


「えー、あー、えぇーとね、うぅーん……その……」


 慰めの言葉を探してくれているんだろうことが伝わって、思わず吹き出す。


「ふっ、エマ、無理しなくていいから」

「なによ。人の頑張りを笑わないでくれる?」


 エマが、怒った顔を作る。その態度も、俺を元気づけるためのものだと分かった。本当に優しいヤツだ。


「ありがとう」


 俺がそう言うと、エマは軽く目を見開いた後、ニヤリと笑って、

「どういたしまして」


と言った。聖女候補にしては随分邪悪な笑顔だったが、これも彼女なりのユーモアだろう。


 ピーターやエマと話しているうちに、クラスメイト全員の魔力判定が終わっていた。二人のおかげでかなりメンタルも持ち直せた。持つべきものは友達だ。本当にありがとう。心の中で再度お礼を言って、俺は先生に呼ばれるのを待った。


「以上で、魔力判定は終わりだ。次はこのまま、学園長に魔力管についての講義をしてもらう。この講義で、魔法学における全ての座学は終わりだ。次回から魔法学第二単元、魔法実習が始まるから、心しておくように。それから、一部の生徒には、同じ講義を特別講師にやってもらうことになる。先程の魔力判定で俺から声をかけられた者は、別の教室に移動するから俺のところへ集まるように。他の者は、学園長の講義をしっかり聴くんだぞ」


 マイト先生がそう言うと、学園長がゆっくりと壇上に上がった。


「じゃあ俺、行ってくる」


 学園長を横目に見ながら、俺はピーターとエマにそう告げて歩き出した。


「いってらっしゃ〜い」

「かますのよ!」


 笑顔で手を振るピーターと、なぜかガッツポーズを作るエマに見送られながら、俺はマイト先生の下へ向かった。



思った以上にルーカスが判定結果にショックを受けていて、作者ビックリです。


お読みいただきありがとうございます!


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あと、ブックマークもして頂けると、私が小躍りして喜びます。


では、次回もどうぞよろしくお願いします!

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