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マリ×ルカ〜第一王子に婚約解消されたので、好きに恋愛させてもらいます!〜  作者: 岩永久子
第一章 マリアンヌ・バレンティ公爵令嬢
3/25

1-2

ちょっと話が長かったので、ふたつに分けました。その分今回は短めです。

♦︎♦︎♦︎♦︎



 放課後、私は図書館に来ていた。


 ベアステラ王国立学園、通称王立学園は、中等部と高等部があり、同じ敷地内にそれぞれ校舎は建っているが、土地が広大すぎて滅多なことでは行き来されない。それぞれの校舎にそれぞれ独立した食堂、特別教室、運動場などがあるため、同じ敷地内に二つの別の学校が建っているようなものだ。

 もちろん、図書館も中等部と高等部に一つずつある。


 私は高等部の生徒なため、当然高等部の図書館に来ている。

 しかし、殿下がいない。


 キョロキョロと辺りを見回すも、そもそも人があまりいない。

 試験前やレポート提出日間際には多くの学生で賑わう図書館も、何もない普段だととても静かだ。

 

 と言うのも、ここには本に用がある人しか来ない。


 勉強する人には自習室があるし、自習室にも参考書は置いてある。むしろ、参考書しかない分、勉強には自習室の方が向いているのだ。

 魔法関連の本を読むにしても、図書館は利用者の魔法の使用を禁止している。大事な書物を守るためであるが、それだと本を片手に実践ができない。そういうことがしたい生徒は、魔法実習棟の練習室を利用する。そこにはもちろん、魔法関連の本が揃えられている。


 だから、ここに来るのは本当に本に用がある人……つまり、読書好きしか来ないのだ。


 そして、私も本は大好きなのです……!


 私は、クリストファー殿下が見当たらないのを良いことに、大好きな恋愛小説を読み耽ることにした。……読むのではない。読み耽るのだ。

 

 よくよく考えてみると、どうしてついさっき振られた相手に殿方を紹介してもらわなければならないのか。どう考えても非常識だ。いくら政略的な婚約で、お互いに恋愛感情はなかったとはいえ、いくら王子と公爵令嬢という身分差があるとはいえ、あまりにも失礼がすぎないだろうか?


 そして、そんな失礼に輪をかけて遅れてくるという始末。これにはこちらも「本を読み耽って殿下の事に気づきませんでした」という状況を作り出さねばなるまい。失礼には失礼を。いくら王子殿下でも、私はやり返しますからね!


 私は内心プンスカしながら本棚をうろつく。くるくるとウェーブしたピンクブロンドの髪を靡かせながら歩けば、迷わず目的の本棚の前に辿り着く。もちろん、大好きな恋愛小説が多数収められている棚である。


 どれにしようかしら?背表紙のタイトルを指でなぞりながら、私は考える。


 正直、どれも一度は読んだことのあるものばかりなのだ。公爵家の財力を持ってすれば、本を手に入れることなど容易い。そしてこの国では、こういう恋愛小説よりも学術書の方が多く出版されていて、小説の新作が少ないのだ。


 いっそ、外国語を勉強して他国の物語を読み漁るというのもありよね……


 そう思った私は、外国の書籍のある棚の方へと足を進めた。

 目は本棚を追いつつ徐に足を動かす。相変わらず、指で背表紙のタイトルをなぞりながら進んでいると、うっかりと誰かの手にぶつかってしまった。


『あっ』


 お互いの、驚いた声が重なる。


 私はすぐに謝罪しようと前を向いたが、思ったよりも相手との距離が近くてもう一度驚きの悲鳴を上げてしまった。

 咄嗟に距離を取ろうと後ずさったが、体のバランスを崩して後ろに倒れそうになってしまう。

 仰向けに倒れたせいで、天井の魔力灯の光が眩しくて、思わず瞼をギュッと瞑った。


「危ない!」


 そんな私の背中の方に腕を回して、目の前の人が支えてくれる。

 目を開けると、綺麗な青い瞳と目が合った。

 そのまま、思わず二人見つめ合う。


 私の体を支えてくれたのは、この国では非常に珍しい黒髪の男子生徒だった。彼は、青い瞳をまんまるくして私を見ている。左右の耳に紫と赤の色の違う小さなピアスをしており、それも珍しくて印象的だった。


 時が止まったかのように、見つめ合ったまま数秒間動けなかった。


 たっぷりと見つめ合った後、ようやく意識を取り戻した私は、恥ずかしくなって少し顔を伏せながらお礼を言った。


「あの……ありがとうございます」


 我ながら、今までで出したこともないほど可愛い音が口から漏れた。その声は震えて、少し掠れていたし、恥ずかしさから極端に小さかった。

 それでも、かなり密着していた相手にはしっかりと聞こえたようだ。

 伏せていた目をちろりと上げると、目の前の彼の頬が真っ赤に染まってゆくのが見えた。


「いえ……」


 そう言いながら、彼はそっと私から腕を外し、距離を取った。

 真っ赤な顔を伏せて黒い前髪で隠してしまった彼が可愛くて、可愛くて、私は今までに感じたことのない感情に戸惑っていた。


 もっと、彼のことが知りたい





続きのもう一つはすぐにあげる予定です。

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