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2-5 エマと王子殿下

お読み頂きありがとうございます!

♢♢♢♢


 エマと初めて会ってから数日、俺たちは三人で行動することが多くなっていた。何故ならエマが、事あるごとに俺とピーターの元へやって来るのだ。


 エマは思っていたより話しやすかったし、初めて会った時に感じた貴族の御令嬢感はどこへやら、本当に普通の平民のように活発で明るい女の子だった。

 最初は恐れ多くて遠巻きに見ていたクラスメイト達も次第に彼女に慣れて、貴族平民問わず普通に会話ができるようになっている。


 そんなエマが、女子とも話しているところを見かけるのに、何故俺たちのところにばかり来るのか謎である。


 昼休憩。俺は教科書を机にしまうと、いつものようにピーターに声をかけた。


「今日はランチボックス持ってきたから、中庭で食べようか」


 俺とピーターは、入学してからずっと学園の食堂で昼食をとっていた。しかし昨日、食堂の窓から綺麗な中庭を見ていたら、そこで昼食をとっている生徒を発見したのだ。俺たちは即座に顔を見合わせて、どちらからともなく「明日は中庭で食べよう」という話になった。


「用意がいいね。僕はてっきり、学食のトレーを持って外に出るのかと思ってたよ」

「そんなの面倒だろ?スコット家のシェフに頼んだら作ってくれたんだ」

「なんだ。ルークが作ったんじゃないんだ」

「いや、作ろうとしたら止められたんだよ。自分の仕事を取らないでくれって」


 そう言って俺が肩をすくめると、ポールはくすくすと笑って、

「シェフを困らせちゃ駄目だよ」

と笑った。


 そんなポールも先日、花壇の花に水遣りをした上、雑草をむしり、肥料を撒いていたところを庭師に咎められていたのを知っている。


 スコット家は、叙勲してから王都に新しく邸宅を買い、専属の使用人を雇った。貴族になるまでは家族で手分けして行っていた雑用は、今や殆どが使用人の仕事になっている。


 今までもお金はあったから、料理人を雇ったり庭師を頼んだりしたことはあったのだが、彼らはあくまで家族の手の届かない家事の補助をしてくれる存在であり、常に家にいるわけではなかった。だからもちろん、俺もピーターも一通りの家事はこなせるのだが、今まで通り色々やってしまうと、使用人の仕事を奪うことになるらしい。


 貴族になるというのも、なかなか難しいものだ。


 俺が二人分のランチボックスを持って席を立つと、ピーターもゆっくりと立ち上がる。そこに、横から声がかけられた。


「私も混ぜてー」


 エマだ。今まで昼休憩は一人で何処かに行っていたのに、珍しい。


 それにしても、本当に何故、わざわざ俺たちのところへ?


「まさか、女の子の友達ができないのか?」

とうっかり言ったら、失礼な!と返された。


「まぁ、女の子の話題についていけないというのはあるけど。私、ライオネル領では鍛錬に明け暮れていたから、流行り物の話とかよく分からないの」


 苦笑気味にエマがそういうのを聞きながら、鍛錬って、騎士みたいなこと言うな。聖女候補も大変なんだな。と思った。


「ちょっと、お友達になりたい子がいるんだけど、なかなか会えないのよね。邪魔が入ることも多いし……」


 エマはそう言うと、溜息をついて遠い目をした。


 そこへ、クラスメイトの一人がエマに話しかけてきた。


「ラ、ライオネルさん、お客様だよ」


 クラスに打ち解けてきたエマと話すにしては緊張気味のクラスメイトに、エマは眉を顰める。

 そして、教室のドアの方を見ると、チッと舌打ちをした。

 俺もドアの方を見ると、そこにはプラチナブロンドの髪にアイスブルーの瞳の美形男子が立っている。


 あれって、第一王子殿下じゃ……

 今エマ、王子殿下の顔を見て舌打ちしたよな?今もすごく嫌そうな顔をして……なんて不敬なんだ!


 しかし王子はエマの態度を意に介さず、笑顔で手を振っていた。……が、王子を見ていた俺とうっかり目が合うと、その瞳が驚愕に見開かれた。そして、


「ルーカス!!」

「え?」


 俺の名前を呼び、ズカズカと教室に入ってくる。そして、何故か俺は王子に抱きしめられていた。


「え?え?」

「よかった。無事だったのか……」


 俺の耳元で、王子の小さな声が響く。俺はますます混乱した。


 クラス中も何事かと騒然となっている。昼休憩中で人数がまばらなのが幸いだ。


 そんな中、エマが多少強引に俺から王子を引き離し、王子に向かって

「目立ってる。場所を移動しましょう」

と強めに言った。


 そして、王子の返事を待つことなく、

「どうせ今日も、プライベートサロン取ってるんでしょ?ルーカス、ピーター、クリス殿下について行くわよ」

と顎をしゃくった。


 王子も我に返ったのか、俺に一言謝罪して、

「昼食がてら、少し話せないか?」

と仰った。


 俺は訳もわからず、ただ首肯した。ピーターに至っては、不安からか涙目になっている。


 エマが王子に何か耳打ちし、王子がそれに頷いた。


「さぁ、こっちだ」

「二人とも、行くよ。皆、今見たことは他言無用でお願いね」


 その後、歩き出す殿下とクラスメイトに釘を刺すエマに促され、俺たちは騒然とする教室を後にした。


書き溜めていたものがなくなってきました…続きを書かねば…!


ということで、読んでくださりありがとうございます。

 なろうのサイトに投稿したのがこの作品で初めてだったのですが、アクセス解析で読んでくれている人がいるのが目に見えて、嬉しくて、続きを書く原動力になっています。すごいサイトですね!

 これからもよろしくお願いします。

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