96話 一足遅く
本当は宿屋にでも泊まろうと思ったのだが、すぐに街を出る事にした。
カイトのその判断はある意味正しかったのかもしれない。
追いかけてきた暗殺ギルドの手練れ達数人は、カイトの足取りを追って
この街まで来ていたのだった。
人探しを街の中継屋に依頼すると、しばらくこの街に逗留することを決
めたのだ。
そして、2日後、意外な報告を受ける事になった。
「カイトという冒険者でしたね……それなら数日ダンジョン攻略をして
ミミックを2体も見つけて倒したって言われてるラッキーボーイだね〜」
「そんな事はどうでもいいんだよ、今どこに泊まっているのか聞いてん
だよ!分かったまら呼び出したんだろ?」
「はい、2日までに街を出て行くのを門番が見ています。東の方に向か
ったとか……」
それだけ言うと、追加の賃金を要求してきた。
「2日前って俺たちが到着した日じゃねーか!」
「目的地は知りたくないですか?」
「なんだよ、どこに行くか知ってるのか?」
「えぇ、パーティーを組んだ人と話していたとか?」
「チッ……」
追加で金を置くと、すぐに仕舞った。
「王都……王都に向かうと言っていたそうですよ」
「王都ね〜。また距離があるじゃねーか…」
「ですが、お探しのお人は一人で旅立たれたとか…しかも荷物も最小限だ
ったとか…」
「何が言いたい?」
「あの荷物では、直接王都へと無理かと……でしたら、次に向かうのは…」
地図を出すと、王都までの最短ルートではなく、大きく迂回したルートだ
った。
まさかアイテムボックスを持っているとは思っていないせいか本当は最短
ルートで森を突っ切っているのだが、彼らには安全な村々を経由して行く
ルートで行ったのだろうと推測したのだった。
「なるほどな……村までは馬車が出てるのか?」
「はい、出ております、しかし、彼は夕方に出ていったので徒歩で行った
と考えるべきかと…」
「なるほどな……いつでも追いつけるってわけか…。分かった。」
コインを弾くと投げてよこした。
「追加だ、取っとけよ」
「ありがとうございます」
間違った情報だったが、彼らには正当性などわからない。
ただ、目的を達しさえすればいいのだ。
首を持って帰る。
死体を晒すか首を持って帰る。
それが彼らの仕事の報告の仕方だった。
見える場所の死体を晒すのは簡単だ。
だが、あまり目立つ事ばかりはできない。
ましてや王都となれば、近くってだけでも警備隊が目を光らせている。
もっと手前で始末をつけて起きたところだった。




