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最弱冒険者はパーティーから捨てられる  作者: 秋元智也
旅の始まり
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94話 リッチ

シェナが前に飛び出して行くと、さっきまで見向きもしなかったリッチが

ゾワっとするくらいにさっきを放ってきた。


部屋は広い大広間のようで、周りには何本もの柱が立っている。

視界は以外と広そうだが、隠れる場所もあり、いきなり消えられたら分が

悪い。


「ちょっとだけ時間稼いで貰えるか?」

「分かりました」


シェナ同様にエルドラも、魔力を込めると柱の影から攻撃を加える。


シェナほど避けて走ってという回避が苦手な分、距離を取っての攻撃に

切り替える。


その間、カイトはずっと一つの事に集中していた。


水属性は効かない。

それは知っている。

だが、こう言う考えは試したことがない。


聖属性が効くので、聖水を武器にかけて戦う事があると聞いたので、その

逆はどうなのだろう?


水のように水蒸気を大気に細かい粒子として満遍なく充満させて行く。


それも聖水という水蒸気で満たすのだ。


これには少し時間がかかるが、ゆっくりと柱の後ろを充満させて、は背後

から来るのを防ぎつつ、ゆっくりとエリア中に広げていく。


目の前で攻撃を仕掛けているシェナに夢中でリッチはこっちには気づいて

居なかった。


「カイトさん!リッチが消えました!」

「了解、エルドラさん、こっちに…」

「はい」

「シェナさんも一旦こっちに」

「はいっ……でも、どこに出るかわからないから固まるのは……」


その瞬間、背後で大きな叫び声が上がった。


アァァァッァァアアアァッァァーーーーーー!!


おぞましいような声に一斉に振り返った。


ボロボロだった布切れが、ボロボロと崩れて行く。

それでも地面にうずくまり必死に足掻く。


「これって……」

「後ろから来ると思って聖水で辺りを充満させておいたんだ」

「……」

「……酷いわね……」


リッチにとって毒のようなものを充満させていたのだ。

人間には無害だが、目に見えない分、行ってから効果が現れるのだ。


身動きの取れなくなったリッチにシェナが飛びかかるとそのまま霧散

してしまった。


多分体力が限界だったのだろう。

さっきまでピンピンしていたのが、この有様だ。


よっぽどダメージが大きかったのだろう。


「呆気ないわね……これって普通なら苦労するはずなんでしょうけど…」

「まぁ、楽でよかったんじゃないかな?」

「もしカイトさん一人だったらどうやって倒すつもりだったんですか?」

「ん?……僕だったらかぁ〜、そうだなぁ〜この部屋に入っただけだった

 ら向こうはまだ気づいてなかったし…そのまま部屋全体に充満させるか

 エリアヒールの範囲を部屋の全体にして浄化するのもありかな〜」


あまりの恐ろしい攻撃に、誰も真似できないと確信したのだった。


すると、奥の壁が自動的に開いていった。

光るものが見えたので中に入ると、二つの宝箱が置いてあったのだった。


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