89話 ワイバーンって…
全面焼け野原になって、見やすくなった。
次の階へと向かう階段を見つけると、歩き出す。
「森が……一瞬で無くなりましたね」
「ダンジョンだからすぐに再生されるよ?」
「そうなんだろうけど……カイトさんって本当に規格外ですよね?」
「うーん、師匠のがもっとだと思うけど……」
「カイトさんの師匠ってどんな人なんですか!」
「そうですよ!こんな魔法教える師匠って一体……」
「内緒です。僕もあの人の事はあまり知らないので、いつか会って
聞いてみたいんですけど」
確かに、リリーの事は詳しくは知らない。
有名な人なのだとしたら、きっと王都の図書館にでも行けば何かが
わかるかも…と思っていた。
「この先からはちょっと厄介な敵が多そうですので、気を引き締め
て下さいね」
「厄介って、カイトさんが言うと余計に怖い気がするかも」
「確かにね……」
「そう言う意味じゃなくて〜、僕の事どう言うふうにかんがえてる
んですかぁ〜。全く、人をなんだと……来ますよ!」
前を見ても全く見当たらない。
断崖絶壁の岩肌があるだけだった。
前の階と異なり草木より岩という言葉しか出て来なかった。
「上から来ますよ。高度を下げてきてるからもうすぐ肉眼でえるはず」
「上から?高度ってまさか………!」
空を飛べる魔物となると、種類は限られている。
しかもこんな岩場を根城にする魔物といえば……ワイバーンか、ドラ
ゴンかグリフォンかの選択肢を余儀なくされる。
「ワイバーンじゃん!」
「これ、私じゃどうにもならないじゃん!」
エルドラならまだしも、シェナには太刀打ちのしようがない。
「ワイバーンの特徴は?」
「え……特徴?背中の光る部分を攻撃すればいいけど……」
「頭部か、羽の付け根の攻撃で地面に落とせます!」
「正解!じゃーそのあとは分かると思うけど、シェナが言った通りに
背中にある石を壊せばいい。そこは魔法で攻撃できないから直接攻
撃になる。とまぁ〜結構簡単なんだ。」
「どこがですか!」
シェナのツッコミに、カイトは狙いを定めるように岩を固く、そして
細く魔法で練る。
一気に投げつけると、羽の付け根に当たると真っ逆様に落下していっ
た。
「止めを指すぞ〜」
「マジであたった……」
「エルドラはさっきのを練習、危なそうなら僕も手伝うから」
「はいっ!」
魔法のコントロールの練習をしていたエルドラなら、そのくらい出来
るだろう。
あとはシェナが飛び乗って剣に魔法を付与して切りつければ終わりだ
った。
どんなに空を自由に飛べても、落ちれば弱い。
特にワイバーンは飛翔する魔物の中で一番弱いとされていたのだった。




