88話 一体何者?
全面に広がる大自然。
絶景と言ってもいい景色だった。
「すごーい、ダンジョンの中とは思えない景色ですね…」
「あぁ、ダンジョンは別世界と繋がっていると言われる所以なんだ。空も
あるし、明るく太陽も照らしている。だけど、あれは太陽なんかじゃな
いし、決して日も暮れない。それが、ダンジョンなんだ」
「ずっと昼間ってすごいと思ってたけど、不便ですね?」
のほほんとエルドラが言うと、一気に力が抜ける。
「まぁ、早いところ次のエリアに行くか」
「そうですね。」
「じゃ、手取り早く僕がやるから次のエリアは任せるけどいい?」
「えぇ、いいけど……どうやって……?」
初めて来た割にはカイトに迷いはなかった。
あらかじめ索敵スキルで周りが手に取るようにわかっていたからだった。
一気に火球を出すと森全体に火を落とす。
それもすごい膨大な量の炎の玉が産み落とされては森に広がる。
落ちて終わりではない。
縦横無尽に動き回るせいで、次々に火の手が上がる。
最終的に、数分のうちに森全体が焼けて魔物すら戦う前に火のせいで
瀕死の状態で目の前に現れたのだった。
見ているだけといっても、これはダンジョンでなかったら大事になっ
ている事だろう。
「いつ見ても……すごいわね……」
「やっぱりカイトさんはすごい魔術師ですわ〜」
もう何を見ても驚かないと思っていたが、これは予想以上だった。
エルドラに教えていた土魔法に加え、今使っている火魔法。
そしてm消化の為に使った水魔法と、属性を完全に無視した魔法と
その制御に驚きしかなかった。
それよりも、炎を自由に動かすなんて聞いたこともない。
あれは一体なんなのだろう。
シェナは開いた口が閉じないくらいに眺めてしまっていた。
「すごいよね〜シェナちゃん、火の魔法に風魔法を合わせて自由に
動かすなんて…そんな発想なかったよ〜。それに同時に使えるっ
てこと自体すごいよね〜」
「風も!」
「そうだよ?もしかしたらカイトさんって全部の属性が使えるのか
もしれないよね〜。ほら、これで回復もできたら……あ!」
「それって私を治したっていう?」
「そうだった。シェナちゃんを一瞬で治したんだったわ。いくら
ヒールでもあんな状態を完全完治させるなんて、聞いたことも
ないよ〜」
教科書をよく読み込み、英雄の功績を何度も読み返していたエル
ドラが言うのだから、間違いないのだろう。




