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最弱冒険者はパーティーから捨てられる  作者: 秋元智也
旅の始まり
89/163

87話 一人がいい

どんな戦い方でも、最後に勝てばいい。

結局はそれが最善なのだ。


人は足掻いて強くなる。

その為にどんな努力も惜しまない。


戦い方は人によって、いく通りもあるし、魔物との戦いは対人戦

に比べれば楽な方だった。


フェイントもないし、相手を油断させてくる事もない。


魔力も隠さないのでどこにいるかもわかる。



カイトの探知魔法はレベルがアップした事でかなりの範囲まで、

広がった。


ダンジョン全部とまではいかないが、同じフロアくらいは見渡せ

るほどには、万能だと言ってもいい。


「シェナさん、前出すぎです。エルドラさんの魔法が届く位置で

 戦ってください」

「分かってるけど……」

「待って、私が前に……」

「エルドラさんはそれ以上前に出ないで!」


魔法職が前に出過ぎていい事など全くない。

安全で後ろの壁を背にした事で、3方向だけに集中出来る。

カイトのように全方向の位置がわかるならいいが、そうではない

のであれば、壁を背にした状態から離れてはならない。


「シェナさん、疲労が見えます!一旦下がって!僕が前に出ます!」

「分かったわ…」


スイッチするように、場所を入れ替わると、カイトが前にでる。

剣に魔法を乗せて付与状態を維持すると、一気に走り出た。


スパスパッと切り裂くと、シェナが後ろに後退してポーションを飲み

干す。


「すぐに行けます!」

「分かった、変わるよっ!」

「はいっ!」


魔物のタゲを常に交互に変える事で、お互いの消耗を防ぐのだ。

大量の魔物にはこうやって時間をかけて削っていく。


もう1時間近く戦い続けている。

昨日の復習を終えたあと、先に進んだのだが、見る景色一面の魔物

の群れに、今対応していた。


「ここのフロアボスはなんなのでしょう」

「この量を考えると、全員討伐ってのもありそうだね」

「え〜〜〜。マジ〜〜〜!」

「どうして持っていうなら僕が片付けるけど?」


軽く言うと、エルドラの顔が嫌だと言っている気がした。


「それって、一人でもなんとかなったと言いたそうですよね〜」

「まぁ〜、元々一人で行くつもりだったし…?」


確かにそうだった。

シェナとエルドラが無理を言って一緒にいてもらっているだけなの

だった。


ここまできたら、最後まで戦いたい。

そう思うシェナにとって諦めると、妥協はあり得なかった。


「まだ行けます。」

「そうならいいけど……」


華麗な剣捌きで、軽く当てているだけなのに、魔物の身体がスパッ

と真っ二つになる。


この前剣を見せてもらったが、どこにでも売ってそうなシンプル

なものだった。


たまに討伐中に折れるとどこからか剣を出していた。


全部掃討し終わると、今度は魔石集めと解体が待っていた。


「もう、疲れたぁ〜、カイトさんは、どうして一人でダンジョンに

 来てるんですか?」

「一人が気楽だから……かな」

「でもそれって大変じゃないですか?仲間がいればもっと楽なのに」

「そう思うなら、君たちも信用できる仲間を見つけるといい。僕は

 もう、仲間には頼らない……そう決めたから…」


黙々と手を動かすと魔石を取っていく。

シェナも、エルドラもそれ以上は聞く気にはなれなかった。

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