85話 陰謀
朝、ギルドへ行くと、すぐに周りの空気がおかしかった。
「すいません、今日もダンジョンへの立ち入り許可を…」
「カイトさん、すいませんが今日は許可を出せません。それより
少しお話しをいいですか?」
「えぇ〜、なんでですか〜」
シェナが一番疑問をもった。
昨日までは普通に入れたはずのダンジョンの入場許可が降りない
など滅多にない事だった。
「私達、昨日も普通にダンジョン入れたじゃないですか〜」
「えぇ、貴方達だけなら許可を出すわ。でもね……カイトさんは…」
「理由を聞かせて貰ってもいいですか?」
「ええ、でも奥でいいかしら?」
「それなら私達もいいですか?」
「そうですよ!同じパーティーなんですから!」
押し切るようにシェナとエルドラも話を聞く事になった。
部屋は2階の奥に部屋に案内された。
するとギルドマスターの女性が入ってきた。
鑑定で見てもレベルが非常に高かった。
「こんにちわ、会うのは初めてよね?私はこの街のギルドマスターを
しているステラよ。よろしくね。」
当たり障りもない挨拶だったが、まるで値踏みされたような殺気を感
じた。
多分、それはカイトにだけなのだろう。
シェナもエルドラも平然としていたからだった。
「それで、単刀直入に聞いてもいいですか?」
「えぇ、そうね。カイトくん……君には殺人疑惑がかかってるのよ」
「殺人ですか?……詳しくお願いしても?」
「えぇ、もちろんよ。」
それからロイエンを出た後の事を詳しく聞かれたのだった。
夜のうちにロイエンを出た事にして、そのまままっすぐこの街へ来たと
話した。
殺害はその夜と、次の日に渡って行われたという。
ロイエンに置いてきたバン、ゲイル。
森の入り口ではセオドア、メンデの死体があったという。
毒でも使われたのか、傷口が変色していたとある。
「薬草取りは得意だと聞くが?」
「えぇ、それは村の近くの薬草をとってポーションを作っていたので」
「ポーションか……毒も作れたりは?」
「できますね。ですが…仲間だった人を殺すメリットがないです。それに
彼女はレベルだって高い冒険者だ。僕でどうにかなるとでも?」
「そうだね……それもそうだ。だが、ロイエンのギルドでは指名手配書が
作られたらしくてね…このままいけば冒険者証も取り消しもあるんだよ」
「……!!」
「そんなの酷いですよ!」
「そうですよ!カイトさんがそんな事するはずないです!」
横でシェナとエルドラが必死に抗議する。
「それにだ……もう少し離れた場所で少女の遺体が見つかっているんだ。ま
るでなぶり殺しに慣れたような……手足を切り裂く真似をされて殺されて
いたらしい」
「ナナ………どうしてそんな事を……」
「それはこっちが聞きたいかな…切り口は同じ犯人で間違いないはずだ……
2日前だね、どこでどうしていたかな?」
「それなら……」
「私達と一緒にいました!夕暮れだったと思います。ダンジョン内で絡ま
れていたのを助けて貰ったんです。パーティー登録は次の日にしましたけ
ど……これ……」
魔法で仮りパーティー申請を見せた。
一応ダンジョン内では魔法でのパーティー登録をする人も増えていた。
ギルドではなく、個人間での登録は簡単で、魔力の残滓は1週間は残る。
それを見せると、いつ、何時に登録したか見る事ができた。
「そうだな……一緒にいた事が証明されたようだ。では、これはこちら
で処理することにしよう」
「でも、どうしてこんな……」
「何かまずい事もで見たとかだったら是非にも私も知っておきたいな!
ロイエンのギルドマスターのタークには幾度となく出世を邪魔された
からな。いつかは地べたに叩きつけたやると思っていたんだ!」
何か個人的な恨みがあるらしい。
それは個人間でやっていて欲しい。
そして帰り際に、ふと思い出した事を話しておいた。
勇者パーティーの所業を映像に残した事をタークに見せたのだと。
それを知っているのは、殺されたメンバーと、自分だけなのだ……と。
「それは面白い。是非見たかったな〜」
「ありますけど?」
「なっ!なんと!いいだろう、いくらで売るつもりだ?言い値で買い
取ってやろう」
ギルド本部に渡ったらイケナイような映像に、ステラは苦笑いを浮か
べたのだった。
「いい……これは使える……」
勇者の失態。
それを見た目撃者の暗殺。
これは重罪だった。




