84話 攻略方法
どんなに強くても冒険者は下から順番にクエストをこなして上がっていく
しかないのだった。
いきなり上級冒険者になり得る事はない。
地道な努力があってこその知識と強さなのだ。
そう、学んできたはずだった。
19という年齢で早々目の前の圧倒的な戦闘ができるようになるとは思えな
かった。
学生のシェナもエルドラも未だ17という年齢だったが、酒は16歳から飲
めるし大人という証だ。
さっきカイトが一人で倒した魔物の魔石を剥ぎ取りながら考えてしまう。
このまま一緒にいたら、もっと強くなれるのではないのか……と。
「あのっ…カイトさん。ここのダンジョンをクリアしたら次はどこへ行く
んですか?」
「ん〜そうだな〜……一度、王都へ行っていようと思ってるよ」
王都には魔法学園がある。
一回ここを終えたら帰ろうと思っていたので、ちょうどいい機会だった。
「私達も、ここが終わったら学校へ帰ろうと思ってるんです。一緒にどう
ですか?」
「いや、遠慮しておくよ。ちょっと寄り道もしたいし……」
「なら、私達も……」
「あ……えーっと、そうじゃなくて……多分ついてこれないと思うから…」
そんな険しい道をいくにだろうか?と考えてしまった。
「ごめんなさい、シェナちゃんがこんな事言い出して、もういいじゃん。
確かに、私も一緒に行きたいけど、きっとついて行けないよ。きっと
私の使えないような魔法を使うんでしょ?」
「うん……そうだね」
「えーー」
シェナが好意的になったのはいいが、そこまで積極的にこられても困る。
エルドラは魔法を教えているせいか、人懐っこく飲み込みも早い。
「明日はここを二人で戦ってもらう。さっき見た通り、奥にある装置から
言って時間に魔物が排出される。それを駆除しながら奥の装置を叩けば
いい。それには二人で協力しなければならないんだけど…明日までに考
えておく事!」
「「はーい」」
その為に見本を見せたのだ。
ダンジョン攻略は見本などまずない。
当たって砕けろというのは普通だ。
だが、先にカイトがそこの謎解きをしてしまえば、あとは同じ状況をど
うやって作ればいいかを考えて行動に移せばいい。
これで難易度は一気に下がったと言ってもいい。
身体を休ませながら、頭を使わせる。
明日、どうやって攻略するかが見ものだった。
カイトは一人で踏破した。
これにはリリーにもらった魔力よ、魔法、剣術が大きく関わっている。
これを無闇やたらと人に刻むわけにもいかんない。
野宿の時に、一回自分に鑑定をかけた時があった。
そこで、自分に刻まれた刻印を知ったのだった。
これはスキル自体を身体に刻み込む事で、持っていないスキルを使う
事ができるようになるのだ。
これには想像を絶するような痛みが伴うが、これをきっと広めてはい
けない気がした。
カイトは自分もポーションもこれからは売る気はない。
これが世の中に出回る事は決していいことではないからだった。
リリーのあの泉ほどの力はなくても、それに近いものにはなってきて
いた。
ダンジョンを攻略したら、王都の図書館で、もっと魔法の事や、リリー
の事。
そしてとにかく自分に足らない知識を積もうと思う。
「王都に行くのが楽しみだな〜」
まだ、追っ手が来ているとは知りもしないカイトはロイエンの街での元
パーティーメンバー殺害事件の首謀者にされつつある事を、まだ知らな
かったのだった。




