83話 見本の戦い
先ほどまでの戦いを見ているシェナが言葉を失っていた。
「カイトさんって前衛にしても後衛にしても、どっちも一流みたい
だね」
「そうだけど……これは……すごいなんてもんじゃないよ……」
「シェナっ………後ろ…」
「こっちにもきたわね!私だって……」
「まって、カイトさんは、ここから出るなって……」
「そうだけど……少しくらいなら……」
そう言って前に出ようとした瞬間、目の前まで迫ってきていた魔物の
身体がバラバラに崩れていた。
「これって……」
「結界とかとは違うようだけど……」
「私達…本当に足手纏いだったんだね……」
「そうね……」
結界のように弾かれるわけでもない。
本当にバラバラに切り刻まれたのだ。
周りには血が伝い、張られている糸が可視化されていた。
「これって糸?」
「それも、すっごい切れ味のね」
こっそり剣の先で突くとパキッと欠けてしまった。
「嘘っ!これ結構硬い金属だよ!」
「黙って見てよ?シェナちゃん」
「そうだね……」
じっとカイトの戦い方を見る事にしたのだった。
実に興味深い戦闘だった。
魔法使いのような高度な魔法も使いながらそれを揺動に使うと、一気
に距離を詰めてからの剣での応戦。
剣には付与魔法が施されている。
それもシェナが使うような物ではない。
切れ味も格段に違う。
あんな付与魔法シェナでは使えない。
常に魔法がかかったままを維持しながらの戦闘。
これは何人かのパーティーが分担してやるのなら、納得がいくが、カ
イト一人でやってのけるには、非常識な程に知識と魔法に対してのス
キル習得が必須だった。
しかしカイトの持っているスキルは魔法に関する物ではない。
エルドラと同じ土魔法を起用に使いこなしているのだった。
「私ね…土魔法しか使えないって事に少し苛立ちを感じてたんだ…も
し、炎だったら?そうしたらもっと火力があるし強くなるんじゃ
ないかって……、でもこんな戦い方を見せられるとさ〜、土でよか
ったかもって思うよ」
「そっか……そうだね。私は自分の剣に自信を持ってたけど……まだ
まだなんだなって実感したよ。まだ、私達強くなれるよね?」
「うん…これからだよ。」
二人が決意を新たにした頃には全滅した魔物を山ができていたのだっ
た。
「カイトさーん、私達も手伝います!ここのなんとかしてもらえます?」
「あぁ、すぐに解除するよ」
こうして、ある程度の魔石と素材の部位を手に入れることができたの
だった。




