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最弱冒険者はパーティーから捨てられる  作者: 秋元智也
旅の始まり
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82話 説教

一瞬の油断が死を招く。

それがダンジョンという場所だった。


どんなにしっかりとしていても、死んでしまう場合もある。

だからこそ、ダンジョン内では何があってもいいように、お互い

が信頼できるような相手とパーティーを組んで攻略するのがセオ

リーなのだ。


「今回の敗因はわかるかい?」

「えーっと……深追いした事?」


シェナが目覚めてからと言うもの、ダンジョン内で正座して説教を

受けるなど前代未聞だった。


「でもね……あのくらいならね?私でもいけるかなって……」

「その結果が理解できてない?あのままだったらエルドラさんも一緒

 に亡くなるところだったって自覚しているかい?」

「それは……ごめんなさい」


シェナがしゅんと落ち込むと、横からエルドラが口を挟んだ。


「でも…今回は助かったんだし、そのくらいで……ね?」

「では、聞くけどエルドラさんは、あんな場所でポーション数本で 

 何が出来たと思ってるの?」

「それは……矢を抜いてポーションをかけていこうかと……」

「それって全身に刺さったのを一個ずつやってく気でいたって事?」

「あ……うん……」

「それで?残った魔物が戻ってないってなんで言えるの?」

「それは……」

「どんな危険な場所で治療をしようとしてたのか理解した?あのまま

 向かってこられてたらどうするつもりだったの?治療しながら応戦

 出来た?」


実に正論だった。


的確に、シェナに戻るように言ったのも、怪我したシェナよりも先に

魔物を倒す判断をしたのも、シェナの傷を跡形もなく綺麗に治してし

まったのも、全部カイトがやった事だった。


反論のしようもない。


的確な判断に行動。

これでまだE級冒険者というのだから不思議だった。


散々説教をされると、だいぶんと時間を使ってしまった。


「今日はもう少し奥まで行きたかったんですが……そろそろ引き返し

 ましょうか」

「そ……そんな………」

「傷は治っても減った分の血液は補充できていない事を理解してい 

 ますか?」

「あ………」


カイトの作ったポーションを飲ませればそんな心配はないのだが、そ

れをすると、他のポーションも同じだと思ってしまう可能性があるの

で、あえて言及しなかったし、ヒールだけでの効果を教えておく。


「そもそもヒールは身体の治癒力を極限まで高めた魔法ですから……

 それが万能じゃないことくらいは知ってますよね?」

「はい…」

「では、帰還しましょうか」

「はい……」


二人とも異議を唱える事はなかった。

冒険には失敗もつきものだ。

だから、失敗しても生きてさえいれば、やり直しが効く。


そうやって学んで行けるように、先輩冒険者として教えてやらねば

と思う。


前に組んだ冒険者のセオドアとメンデのように尊敬出来る冒険者に

なろうと思ったのだった。


「でも、帰る前に少し狩りの報酬を増やしていこうか…」

「報酬ですか?」

「でも、もう帰るんじゃ……」

「うん。帰るよ。でも、今からは少し見てて。」


カイトが言うと、先に進んでいく。

開けた場所に出ると、通路の一角に糸を巡らせておく。


「そこから決して出ないでね、それと、後ろから何がきても無視

 する事」

「無視……ですか?」

「そう。無視。こっちには来れないから…」


カイトが言うと、地面に線を書くと、そこから決して出ないよう

にと言い渡したのだった。




さぁ〜久しぶりに戦う事になった。

鈍ってないか、気になってはいたのだ。

索敵や、補助魔法、遠距離支援などに徹していたので直に身体を

動かすのは彼女達とパーティーを組む前くらいだ。


自分に腕力強化、スピードアップ、命中率アップをかけると目の

前から出てくる数体の魔物へと突っ走っていく。


風を切るように一瞬で距離を詰めると、全部一撃で急所を当てる。

仕損じる事なく仕留めると、次々と湧いて出てくる。


この奥に魔物が湧く装置があるらしい。

それを止めるには、まず目の前に湧いてしまった魔物を屠る必要が

あった。


湧いて出るスピードより、先に倒していけば問題ない。

彼女達も、あそこから出なければ安全だった。


回り込んで彼女達を狙う魔物もいたが、それは周りに張り巡らされ

た糸によって切り刻まれる事となった。



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