76話 生活魔法
カイト達は、このダンジョンをまずは攻略するまでは行動を
共にする事になった。
「では、パーティーを組むって事でいいですか?」
「構わないけど、君達はいいの?」
「大丈夫です。カイトさんはいい人だってわかったし、それ
に……」
「それに?」
「なんでもないですっ!」
シェナは恥ずかしがりやのようだった。
エルドラも随分と成長したと思う。
階層を重ねるごとに、成長していったのだった。
「次、右から来るよ!シェナそのまま真っ直ぐ正面2体。右か
らのはエルドラいけるかい?」
「はいっ!」
「いけます!」
「いい返事だよ。僕は左から来るのを止める、いくよっ!」
一斉に走りだす。
数は魔力探知で分かっている。
いくらダンジョンでも、探知の性能には変わりはなかった。
だからこそ、どこから何体来るのかが先に知る事が出来るの
だった。
これは盗賊のスキルなのだろうが、リリーにとっては初歩的な
ものだと言っていたのを思い出す。
「本当に言ってた通りの数ですね〜」
「本当にすごいです!先にわかっていれば私でも対応できまし
たもん」
「謙遜しなくてもいいよ。多分見えてからでも、多分間に合っ
たと思うよ?今の君達ならこの程度なら問題ないよ。でも、
決して油断はしちゃいけないよ?」
「はいっ!」
「えぇ、もちろんよ!」
素直な子達で、教え甲斐があった。
まさか、カイトがこんな気持ちになるなんて思いもしなかった。
昔の自分だったら、助けることも、しなかったし教えられるよ
うな実力もなかっただろう。
縁とは不思議なものだった。
ダルカ達とパーティー組んだ事でロイエンの街まで来れたし、
パーティーを追い出された事で、リリーに出会えた。
運命とは不思議な繋がりを持っているものだと実感したのだった。
「さぁ、食事にしようか」
「わーい!カイトさんの料理大好き〜」
「ちょっと〜、私も〜」
「ちょっと待ってて、すぐに用意するから」
まずは魔法で空中に水を出して中で回るようにする。
そこに手を入れれば綺麗に洗われる。
あとは食材を出して、順番に燻製肉、ゆで卵、野菜を取り出す。
パンを薄く切ってその中の挟んでいく。
「よし、これで完成!ついでにスープも作ろうか、温まってお
きたいし」
そう言うと、何もない場所に火が付く。
燃えるものなどないけれど、ゆっくりとした炎がその場で燃え
続けた。
「本当に不思議ですよね〜。これっていたって普通の生活魔法
なのに、私じゃ同じ事ができないなんて……」
「それは練習じゃないかな?魔力操作もそうだっただろう?」
「それはそうなんだけどね〜。ほら、水を出す事は誰でもでき
るのよ〜……でもね〜、その場に留めてしかも、中の水を回転
させるって……どうなってるのよ〜」
この世の中には、生きてく上で欠かせない魔法。
生活魔法というのがある。
あたりの水分を集めて水を出す魔法。
これはただその場に水がちょろちょろちょろと出る程度だった。
薪に火をつける魔法。
一瞬火花を起こして燃える素材に充てるだけの炎と呼べるほどでは
ない、ただの静電気を起こす程度のものだ。
そしてもう一つは光の魔法。
夜に小さな光の玉を出して、数秒明るく出来るだけの魔法だった。




