70話 暗殺ギルドの日常
暗殺ギルドには腕利きの冒険者がいる事が多い。
その理由は単純に冒険者になって活躍していたのだが、ひょんな
事から民間人を犠牲にしてしまって、冒険者の登録を抹消されて
しまう事がある。
自分でやった事なので自業自得とも取れなくはないが、強い魔物
を討伐するために村を一個犠牲にしてしまうような冒険者には、
ギルドも免許の発行を差し押さえる事があった。
確かに、先の未来を見越して倒してしまうのはいい事だが、それ
に対しての犠牲というのは許されるものではなかった。
金の為に人身売買などに手を染めた冒険者も同様だった。
食いぶちがなくなった人が力さえあれば入れる暗殺ギルドに入っ
てくるというのが単純な理由だった。
それでも、無法地帯にならないのには理由があった。
その理由は冒険者ギルドマスターがあまりに酷い人間を間引いて
いるせいでもあった。
冒険者ギルドのギルドマスターがまさか、暗殺などしているとは
誰も思わないだろう。
しかし、無法者を止めるにはそれなりの力だいるのだ。
そうして、暗殺ギルドは統制の取れた部隊並みの連携が取れてい
るのだった。
と、言っても完璧な任務遂行とは言い難かった。
むしろ烏合の衆だったのが、内部でのいざこざがなくなって、暗殺
対象になっただけだった。
それも、暗殺対象の付近にいる者も一緒に屠るのだから、そこは目
を瞑ることにした。
こん回のように、暗殺対象を取り逃すなんてことはたまにある事で
はあった。
数人の手練を送ったが、どうなる事か……。
取り逃したのはまだ年端もいかない新人冒険者2名だった。
ちょうど追加の報告が入った。
途中で一人止めを刺したと…。
残りはあと1人。
スキルは絶対回避。
厄介だが、魔力が尽きればそれも終わりだ。
暗殺ギルドは今日も暇だった。
ただ報告を待つ間に、他の依頼を割り振る。
今日は一体どんな依頼が舞い込んでくるのだろう。
荒くれ者達をまとめあげ、仕事を斡旋する。
そんなお気楽な受付けは酒場の奥の部屋にいつものんびりと構え
ていたのだった。
見た目は普通の酒場だ。
依頼人は合言葉で奥の部屋に案内される。
そこでは多額の報酬でなんでもやる屈強な男が睨みを利かせてい
た。
今日も、奥へ案内される客が出たようだ。
受付けの男は笑顔を振り撒き、客を出迎える。
「はい、こちらの事はどこでお聞きに?知っての通りここは荒く
れ者の巣窟。どんなご用件で起こしに?ここでの事を他所で話
たりしたら……お分かりですね?命で償っていただきますよ?
では、ご用件を聞きましょうか」
今日も1人の客が、大金を落としていくのだった。




