67話 暗殺の失敗?
朝になって、宿屋では大きな騒ぎになっていた。
どう言うわけか、駆け出し冒険者がベッドの上で亡くなっていた
のが見つかったからだった。
どうしてこうなったのか?
仲間割れだろうか?
一部ではそう囁かれたほどだった。
2対の死体はその日のうちに火葬されたのだった。
それと同時に森へ行ってきた冒険者からの報告によれば、森の中
にも死体があったと言う。
それもベテラン冒険者のだった。
野党にでも襲われたのかと思うほど残酷な殺し方だったらしい。
「ギルドの方でもその調査に乗り出した方がいいかと……」
「いや、どこかの盗賊の仕業だろう。調べる必要なはい」
「ですが、マスター……」
「いいと言ったのが聞こえないのか?」
「いえ……分かりました。」
「それはそうと、森の調査を依頼した冒険者ばかりだったな?もう
一人はどこへ行ったんだ?」
「あぁ、カイトさんですね。彼なら帰って来て早々にこの街を出て
行きましたよ?」
「!?」
それは初耳だった。
ギルドマスターのタークは受付嬢のヘレニアの言葉に耳を傾け、足
取りを追う事にしたのだった。
昨日の襲撃のせいで、暗殺ギルドの人数が減った。
返り討ちになったからだった。
「それと、宿屋で死体が見つかったと言っていたが、3人ではない
のか?」
「いえ、二人と報告がありました。男性二人だったと。」
「そうか……ならいい……」
舌打ちをすると、すぐに裏ギルドへと向かった。
本当なら夜に行きたいところだったが、報告する事があるからだっ
た。
「失礼するぞ〜」
「ターク様ではありませんか?こんな場所にご用件とは?」
「依頼の事だ、依頼主からの伝言だ。二人取り逃したそうだな?」
「二人でございますか?それはどなたの事ですかな?」
「女だ。冒険者なりたてのナナと名乗っていた女が死んでなかった
ようだぞ?それと、カイトと言ったか?あいつはとうにここを立
ったそうだ」
「それは………こちらの不手際でした、すぐに追わせましょう」
「残りの金は始末が終わってからだ」
帰り際にそれだけ言うと、出ていったのだった。
それを陰で聞いていた男が、ゆっくりと出て来た。
「ギルドマスター自ら依頼してくるとはね〜」
「依頼主はギルドマスターではなくそのバックにいる領主様って
ところでしょうね」
「なるほど……それで打ち損じって本当か?」
「そのようです。止めはしっかりさせって教えておいたんだがな」
下っ端の事だから、詰めが甘いと口にした。
その頃、夜首を掻っ切られたはずのナナは必死に逃げていたのだ
った。
あの日、カイトから貰ったポーションを大事に枕の下に入れて眠
った。
いきなり布団を捲られ、痛みが一気に走った。
何がどうなたのかわからず意識が遠のいた時、枕の下のポーション
を最後の力を振り絞ってかけたのだった。
目が覚めると、血まみれで横たわっていた。
傷は……ない。
「うそっ………私、生きてる……」
服もベッドも血塗れだった。
すぐに隣の部屋に向かったが、鍵を魔法で開けるとバンもゲイル
もすでに亡くなっていたのだった。
いてもたってもいられず、ナナは急いで荷物をまとめると裏口か
ら抜け出し次の街へと向かったのだった。
一人で森の中を突っ切るのは自殺行為だった。
が、ここにいては殺されるだけだろう。
ここは、森の入り口で野宿をすると言っていたセオドア達と合流
するしかないと思ったのだった。
が、それも一足遅く。
無惨な死体と成り果てていたのだった。




