63話 暗殺ギルド
ギルドから証拠と一緒に報告を受けたのはロイエンの領主
オデンだった。
ギルドマスターのタークからの報告は信じがたい内容だっ
た。
しかも証拠の映像が事実である事を示している。
王都にこの事実を告げれば、立場が悪くなるのは領主の方
だった。
勇者とはそれほど、優遇されるべき存在なのだった。
「ターク、これを知っている奴は何人いるんだ?」
「それは…調査をした学生が3名とベテラン冒険者が2名、
最近パーティーを追い出された者が1名の6名です」
「では、その者達の暗殺を依頼しなさい」
「……!?」
それは唐突に言われた言葉だった。
調査を依頼した立場上、まずい事実を知ってしまったから、
殺せと言うのはどうにも聞き間違いであって欲しかった。
「何をしている?この事実はなかった。そうだろう?」
「……はい」
ロイエンの街は王都に次いで栄えている街だった。
ダンジョンがあるというのもそうだが、昔の賢者の遺産が
眠っているとされているからだった。
誰も見たことのない、賢者の秘宝。
それがなんなのか、知る人は誰もいない。
昔、賢者と呼ばれ、最近弟子を取ったリリーの事など、誰
も覚えていない。
それもそのはずだった。
いつも勇者を使ってダンジョンをクリアしていると言って
も最下層の隠しボスではなく、ただのボスなのだ。
カイトが倒したのは最下層の隠しボスであって、一番厄介
な魔物だった。
ここまでたどり着いた冒険者は一人もいない。
なぜなら、賢者の試練というダンジョンは5階層で、弱い
ボス。
10階層で中ボス。最下層である15階層でボス部屋に入り倒
せたら、奥の部屋へいって宝箱を開ける。
そこでみんな帰って行ってしまうのだ。
その奥にもう一つの道がぽっかり空いている事に誰も気づ
かなかった。
そこに最後のボスがいて、賢者の財宝を与えてくれるはず
だった。
そして、ギルドはそれを直接管理しているというわけだっ
た。
そんなギルドには出来る事と、できない事があった。
ギルドの裏組織、暗殺ギルド。
通常のギルドでは手に余る依頼や、秘密裏に要人の暗殺な
ど表でやれない仕事をしている人達がいた。
「あれ。タークさんじゃないか。珍しいな〜今日はどう言
った依頼だ?」
「あぁ、ちょっと頼みたい事があるんだ。」
タークは依頼料と一緒にターゲットの写真を渡す。
「なるほどな……こっちの四人はいいが、こっちの二人が
問題だな………結構名の知れてる冒険者じゃねーか。そ
れにこいつは……死んだら厄介だぞ?」
「どうしてだ?」
「こいつは学者んなだよ。メンデって言って有名な人物だ。
まさか冒険者としてこんなところにいるとはね〜」
「学者といえば国の宝だからな……しかし、これは依頼主
が決めた事だ。撤回はしないだろう。」
「なら、仕方ねー。これを含めて……もうちょっと必要だな」
足元を見ているのか、値踏みしているのだ。
表のギルドと違って、ここではタークはただの依頼主に過ぎ
ないのだ。
「分かった言い値で払う。すぐに取り掛かってくれ」
「早速、明日にでも行ってもらうだろう。数日のうちに決着
は着くだろう。」
それを聞くとタークは戻って行ったのだった。




