62話 ギルドの対応
ギルドホールの2階に上がると、ギルドマスターであるタークの
自室がある。
そこに通されるとベテラン冒険者のセオドアが口を開いた。
「今回の任務なんだが…森での魔物の生態系が変わったって話の
調査だったろ?それの報告の前に少し聞いてもらいたい事があ
ったんだよ」
「ほぉ〜それはぜひ聞かせてくれ」
「では、僭越ながら私の方から説明させてもらいましょう」
セオドアの言葉に続くようにメンデが話始めた。
森ではコボルトや、ゴブリンくらいしか見かけなかったはずの場
所に突然現れたジャイアントベア。
それを調査すべく、即席冒険者パーティーを組んだのが、ナナ達
とセオドア達だった。
そこに受付嬢がカイトを合流させたのだ。
カイトの回避能力は知っている。
だからこそ、一緒に行かせたのだ。
そして、そこで得た情報は信じがたい事実を含んでいた。
まず、ジャイアントベアは無闇に狩られ縄張りを追われた事。
それ以外にも奥地に生息しているはずの魔物がどんどん棲家を追
われている事。
ギルドの依頼でもないのに、狩りをしているパーティーがいる事。
そして、そのパーティーはワイバーンの住処で暴れて殺し回った
と言う事だった。
その付近の森を全部焼き払うと、一面焼け野原にした事。
これにはカイトが撮ってきた映像がものがたっていた。
「これは………また……派手にやってくれたようだ……」
タークも呆れるように画像を眺めた。
遠目でもわかる。
こんな事が出来るのは勇者と言う称号を与えられた人間だろう。
ただ、魔法が強いだけではここまでの威力にはならない。
だが、勇者のバフがかかることで、より火力が増し、被害も甚大な
ものになるのだ。
それに、最近勇者と合流したとされる聖女の魔法もしっかり映って
いた。
あとは史上最年少の魔法使い、イーサの姿も確認されたのだった。
もし、このままワイバーンを撃ち漏らしていたら?
近隣の村は報復の為に消滅させられていただろう。
映像では、延々に火炎が空を舞い残り一匹まで追い詰め焼き払って
いた。
「こんな事が出来るのは、早々いないからな。今回の調査ご苦労
だった。報酬は下で貰ってくれ」
「分かりました」
タークは、よくも気づかれずにこんな映像を残せたものだと感心し
ていた。
いくら戦いに集中していても映像記録媒体が起動すれば魔力の流れ
で普通はバレるだろう。
それを隠すほどの隠密スキルもちでもない限りは不可能だった。
「これをどうやって報告するかな……」
領主にも報告を入れなければならない。
しかし、勇者がやったなど、言えるはずもなかった。
なまじ証拠が残っている分、間違いでは済ませれないのだ。
「胃が痛い……」
ぽつりとつぶやくと領主へと連絡を入れたのだった。




