59話 合流
高火力の火球が空一面に現れた時には流石に避け切るのを飽きら
めた。
「あっぶなかったぁ〜」
カイトは安全な距離まで来ると、来た道を振り返った。
そこには囂々と燃える森が目に映った。
こんな派手な事をしてもお咎めがないのは勇者パーティーだけだ
ろう。
普通の冒険者が同じ事をやれば、すぐに資格剥奪か、それ以上の
ペナルティを課されるだろう。
それでも、勇者だからとて、やっていいことではない。
記憶アイテムでさっきの戦闘は撮っておいたので、誰がいたかは
後で見ればいい。
今はこの場から離れる方が先決だろう。
すぐに立ち上がるとセオドアの後を追うように駆け出していたの
だった。
風魔法は本当に便利だった。
遠くでの会話や、足音、どこに生物がいるかをあらかじめ察知で
きるからだった。
それにただ走っているだけなのに、風のように体が軽い。
さっき通り過ぎた鳥達は、カイトが通り過ぎた事さえも気づかれて
いないかもしれない。
足音だって消している。
きっと今頃、あの勇者パーティーはどうしているのだろう。
追いつかれる事はないけど、こちらの存在には気づいているだろう。
あんな派手な魔法を放ったのだからそれもそうだろう。
ちょうど魔力切れを起こしたタイミングで代わりにカイトが火球を
放ったのだ。
もちろんコントロールはイーサほど雑ではない。
勇者パーティーを避けるように攻撃した。
聖女イザベルが仲間を庇うように防御魔法を展開していたのを知っ
ている。
そろそろこっちも限界だろうと思ったからだ。
魔力が切れれば、魔力探知もつかえないだろう。
もし使われたとしても、掻い潜って逃げ切る自信はあった。
だからあえて、イーサと同じ威力の魔法を使ったのだ。
だが、ちょっと予想外な出来事が起きた。
魔力が切れたはずなのに、再びあの最大級の火炎魔法を撃って来た
のだ。
「流石に、回復するの早過ぎでしょ?ってどんな高級なポーション
使ったんだよ……」
カイトは知らなかった。
自分がロイエンの街で販売したポーションを全て買い占めていた人
物の存在に。
前を行く、ナナ達を見つけるとスピードを揺るめると、魔法を解く。
「ナナー、セオドアさーん!」
「おー!もう追いついたのかい?」
「えぇ、ちょっと予想外でしたけど、ばっちりですよ!」
「それはよかった。合流が早くてよかったよ、さっきまた馬鹿げた
魔法が使われたんだ。まぁーったく勇者パーティーの魔法職はど
んだけバカなんだかね〜」
セオドアが悪態をつくと、ナナは嬉しそうに迎え入れてくれた。
このまま近隣の街へ行き、ギルドへと連絡を入れる。
ギルド同士の連絡は水晶宮で行われる。
そこにメッセージを飛ばして、暫く待つと返事が返ってくる。
そして、ロイエンの街への馬車が来るまで1日村で過ごす事になった
のだった。
「カイトさーん、見てください!ここの薬草凄くないですかぁ〜」
「あぁ、そうだな。村のそばに水辺があるせいか育ちがいい」
「ですよね〜、少し採取していきませんか?」
「そうだね、でも……ここが村から近いから少し離れたところまで行
こうか?」
どうして?と言わんばかりのナナにカイトは村の人が取りやすい場所
のをとってしまうよりは、森の奥にある薬草を取った方が害がないと
説明したのだった。




