58話 炙り出し
ハニエルの言った通り、少し離れた場所にカイトは身を隠し
ていた。
「本当に私達以外にいるのかしら?確かに、私が使った魔法
じゃないけど…魔力が切れてからも継続してただけかもし
れないじゃない?」
苦し紛れの言い訳に、イザベルが即座に否定した。
「攻撃魔法は切れた瞬間霧散してたでしょ?あんな味方を避け
るんなんて、イーサが出来るとは思えないわ。多分隠密スキ
ルで隠れたまま出てこない気ね!」
「それなら、こっちから炙り出してやれないだろうか?」
「どうやって…?」
「イーサ、確かロイエンの街で買い込んだポーションがあった
だろう?」
「えぇ、でも、あげないわよ?」
ハニエルに言うと、鞄を抱えた。
「そうじゃなくて…今すぐに飲めば最大級の火力で魔法が使える
んだろう?」
「……」
「なるほど……あたり一面にぶちかませばいいのね?」
「そういう事だ!あたり一面焼け野原にすれば、無傷では済まな
いだろうしもし結界的なアイテムを使ったとしても、そこだけ
不自然になるだろう?」
ハニエルが自信満々でいうと、早速イーサが一気にポーションを
飲み干した。
聞いていて呆れているアンを横目にやる気満々のようだった。
「ちょっと、待ちなさいよ!私達まで巻き込む気?」
「あぁ、そうね。仕方ないから、分けてあげるわ。」
ポーションをイザベルに投げてよこすと飲むように促した。
全部を飲み干すと、さっきまっで空っぽだった魔力が一気に回復
したようだった。
「嘘でしょ?これ、どうなってるのよ…」
「でしょ?ロイエンの街に行ったらすぐに買い込まなきゃ損…でし
ょ?」
「そうね、今度私も連れていってもらえるかしら?」
「う〜ん、考えておくわ」
すぐに教えないのは教会が買い占めると困るからだった。
「教会に言って買い占めたりなんかしないわよ〜」
「それならいいけど……じゃ〜行くわね!」
最大火力を持って、一気に魔力を練り上げた。
ワイバーン討伐の時と違って、長引かせる必要はない。
一気にぶちかませばいい。
魔力を温存する必要もないので、出し惜しみなく一気に行く。
聖女イザベルが防御魔法を展開し終わるタイミングで、空に真
っ赤に燃えた火の塊が振り下ろされた。
隠れていたはずのカイトは急いでその場を離れた。
簡易的な結界を張っていたが、嫌な予感がして、その場を離れ
一気に走り去る。
射程範囲外まで来ると後ろを振り返った。
真っ赤に燃える太陽のような明るさが森を包み、あたり一面を
燃え上がらせていた。
終わった後には、大きなクレーターが出来上がっていた。
さっきまでカイトがいた場所だけは草が残っている。
だが、人の姿はない。
ただ、その場所だけが異様に感じるくらい、不自然に草が生え
たまま残っていたのだ。
ラキスや、イザベルが確認したが、痕跡すら残っていなかった
のだった。




