55話 撤収
寝静まった頃だっただろうか?
カイト達のいる場所にまで轟音が鳴り響いてきていた。
空が真っ赤に燃えて見える。
巨大な魔法の影響だろう。
地面を揺らすほどの大魔法。
それが今使えるのは、誰もが知っている中ではイーサという
魔法使いくらいだろう。
「おい、何があったんだい?」
「あぁ………これは。」
「おい、メンデ、これはどういう事だい!こんな魔法放てる
のは……」
「はい、おそらくは……。という事はワイバーンの殲滅が始ま
ってしまったという事でしょう」
「かぁ〜、余計な事をしてくれたよ!全く……」
眠そうな顔でテントから出てきたナナ達に真剣な顔のカイトに
セオドア、そしてメンデが説明したのだった。
「それじゃ〜、これって勇者パーティーが谷で暴れてるって事
なんですか?」
「あぁ、間違いないだろうね〜。こんな離れた場所まで影響が
出るとはね〜。甘く見てたよ。これ以上は危険だよ。私らも
巻き込まれかねないからね〜。一旦ロイエンへ帰るよ」
「でも、異変の調査は………」
「それは私らが言っておくよ、それにほとんどは勇者パーティー
が無駄に暴れたせいで、居場所を追われた魔物がこっちに逃げ
てきたって事で報告は十分だよ」
「そうですね〜、これ以上ここに留まるのは危険かもしれません」
カイトも賛成すると、夜が明けたら、すぐに撤収することになっ
たのだった。
「メンデさん、ちょっといいですか?」
「なんでしょう?俺だけにって事ですか?」
「はい……、いいですか?」
「分かりました。セオドア、ちょっと席を外しますよ。彼らは任
せますよ?」
「あぁ、分かった」
メンデにだけ、少し話をした。
この後の行動についてだった。
カイトは別行動を取る。
そう伝えたのだ。
「そうでしょうね。分かりました。ですが、気をつけてください。
いくら強くても一人の力はしれてますから。」
「分かってます、ただちょっと近くまで行ってみるつもりです。確
かめたらすぐにあとを追いかけますよ?」
「止めても無駄でしょうから、止めませんが…冒険者は生き死にも
自己責任ですよ?」
「はい…分かってます」
「なら、いいです。朝になったら俺から伝えておきます。それとコレ
を持って行ってください」
「すいません、助かります」
カイトが皆がそのまま寝る時にはこの場から立ち去る事を決意した
のだった。
メンデに渡されたのは録画できる魔法アイテムだった。
結構値段が張ったはずだが、自分たちの証言だけよりも確実性のあ
るものがあればいいと思ったのだろう。カイトに預けたのだった。
朝になった時には、カイトの姿はどこにもなかった。
「あれ?カイトさんは?」
「ほら、戻りますよ〜」
「メンデ、そういう事なんだね?」
「はい、そうです」
「止めなかったのかい?」
「彼を俺で止めれると思いますか?」
「……」
「……」
「分かった。ナナ、バン、ゲイル、しっかり聞きな!カイトは後
で追いつく。だから、私達は先に行くよ!いいね?反論は気か
ない。すぐに立つよ!」
「え……あ、はい……」
何か言いたげなナナを無視して早いご飯にすると、すぐに来た道
を戻っていったのだった。




