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最弱冒険者はパーティーから捨てられる  作者: 秋元智也
旅の始まり
56/163

54話 冒険者の心得

魔物よりも怖いもの。

それは一つしかない。


バンも最初は考えていたが、何かを思いついたようにハッと

なった。

ゲイルはナナと同じく分かってはいない様子だった。


「カイト、あんたは分かってるだろ?」

「はい……そうですね。即席のパーティーメンバーですよね?」

「あぁ、その通りだ。盗賊もやばいが、一番は初心者を狙った

 上級者によるPKだ。冒険者はどんなに危険な場所に行っても

 全ては自己責任なんだ。だから、危なくなったら置き去りに

 したり、魔物の囮に使ったりして仕留めるベテラン冒険者も

 少なくないんだよ。こうやって今の私達みたいに即席のパー

 ティーは特に警戒しなくちゃいけないんだ」

「そんな………、でも、でも、セオドアさや、メンデさんは私達

 にいろんな事を教えてくれるし、カイトさんは、命の恩人です

 そんな事しないです!」


ナナの熱い信頼を得てしまっているようだった。


「そうじゃないよ、ナナ。いつでも誰でも警戒しておけって事」

「あぁ、そういう事だ。今回は私達だったからいいが、次はどう

 なるかわからないだろう?」

「なるほど……」


確かにナナ達には3人で依頼を続けるだけの戦闘能力はない。

知識も足りないし、、経験も足りないのだ。


だから、今のうちにセオドアは生き残る為のノウハウを教えている

のだった。

少しお節介かもしれないが、知ってて損はないはずだ。


先輩冒険者としての優しさだった。


「まぁ〜、私よりもカイトの方が賢い気がするけどね〜。昨日の夜

 も、どこで寝てたんだか……気配すら消してただろう?」

「気づいてたんですか?」

「あぁ、いきなり消えたからね〜、ちょっと驚いたよ。」

「上で寝てたんです。地上は何かあった時に対応できませんから」

「あんた達も、見習うべきだね。まぁ〜私達のように返り討ちにで

 きるようになればそれでも構わないけどね〜」


セオドアは笑いながら諭していく。

今日は寝るまでに学んだ事はたくさんあった気がする。


ナナと、バン、そしてゲイルは少しずつだが、これからも成長して

いくだろう。


願わくば、今回の依頼も無事に終わらせてあげたい。

その手助けができたらいいとカイトは思っていたのだった。





その頃、谷に着いた勇者ラキスが初めにしたのは、眠っているワイ

バーンの群れの頭上にイーサの魔法をぶちかます事だった。

それまで、のんびりと村々を転々とし、酒盛りをして退治するかわ

りとしていい待遇を受けていた。

やっと腰を上げると谷へと向かったのだ。

それまで、その辺の弱い魔物を借り尽くすという遊びをしていたせ

いで、この近くには魔物すら見なくなった。


「イーサ、でかいのを頼むぜ?」

「分かったわ〜、近隣の村まで焼き払うつもりで行くわよ〜」

「ちょっと、イーサ、ほどほどよ?」


聖女イザベルは自分達に被害が出ないように障壁を展開した。


大きな轟音と共に、大きな炎が天から降り注ぐ。

眠っていたワイバーンの群れの長はすぐに羽根を広げて威嚇し

たが、目の当たりにした光景にキィィィィーーーーと大声で叫

んだ。


眠っていた他の仲間も一斉に起きると飛び立つ。


足元の卵をつかむと、散り散りに羽ばたいていく。

あたり一面に広がる炎と燃え盛る空。

逃げ場をなくした仲間達が次々に地上に落ちていった。


空へ逃げれば炎の餌食になるとわかると、低い場所スレスレを飛

び交う。


「よーし、イーサ、上出来だ!いくぞ〜」

「任せときな!」


ラキスが立ち上がるとイザベルの障壁から出て走り出す。それに

続くようにアンも飛び出した。


「ちょっとっ、危ないじゃない!」


聖女だけが気を揉み、慌てて走っていくラキスとアンに合わせて

障壁を展開していく。

イーサの魔法が止まるまでずっと庇い続けなければ、危なくてい

けない。


「聖女様は器用なんだね〜」

「貴方の魔法が雑なんでしょ?半数も逃してるじゃない!一気に

 仕留めなさいよ?こっちはみんながまる焦げにならないように

 してるっていうのに……」


文句たらたらに言いながらも、回復と障壁の位置を変えていくの

だった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] カイト達のパーティーの依頼は森の奥、魔物の生態系調査だった。 だから必ずしも戦わなければならない事はない と言う事で依頼は終わってるのでは? 勇者が暴れまくって生息地が乱れてるどころか…
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