51話 勇者の資格
それから、幾度となく傷ついた魔物達と対峙する事が多かった。
「なんだかおかしいねぇ〜、どの魔物も手負いばかりじゃないか」
「そうなんですよね〜、どこかから逃げてきたみたいな気がして」
「それなんだよ、ジャイアントベアの縄張りはもっと奥のはずな
んだ…こんな森の浅い場所に出ていい魔物じゃない。それに、こ
のまま奥へいけばワンバーンの棲家がある場所じゃないか!もし
それが原因なら、大変な事になるよ?」
セオドアが言うことにも頷ける。
メンデは地図を広げると、今の場所を指した。
「ここが今いる場所です。ジャイアントベアの棲家はここだと思わ
れていたので……、ワイバーンの棲家の谷まではこのくらい距離
があるわけですが……その間に幾つかの村が点在してます」
ワイバーンの棲家で何かあったのなら、この近くの村でも魔物の
侵入を許してしまっているのではないか?
と言うのである。
「一回近隣の村に立ち寄って情報だけでも入れておくべきかと」
「賛成です。もし、何か異変が起こっているならギルドへ知らせ
るべきかと…」
カイトの賛成もあり、みんな納得したのだった。
ついでに肉と毛皮も売りたいのでちょうどよかった。
ちょうど日暮前には村に辿り付く事ができた。
ギルドの支店があるのでそこで情報を入手する事にしたのだった。
「すいません、ギルドから森の調査を依頼されてきたんですけど」
「はーい、森の調査ですね。ちょっと待っててくださいね……えー
っと、こちらですね……この付近でジャイアントベアですか〜、
最近見てないですけど、毛皮も間違いないですね……」
買取の手続きを進めながら、最近の話題になった。
「そういえば、最近では勇者様一向のパーティーが滞在していたん
ですよ〜、なんでもワイバーンの谷に向かうとか……」
「それっていつですか?」
カイトの投げかけにギルドの受付けの人は少し考えてから、答えて
くれた。
「そうですね〜、もう1週間くらい前ですかね〜」
「…!?」
その言葉に、なんとなく嫌な予感がした。
まさかと思うが、勇者の仕業なのでは?……と。
問答無用に魔物を狩る事で生態系が崩れ、強い魔物が地域を追われ
逃げ出す事は稀にあるが、ここ最近となると、可能性が非常に高い。
「それって、まさかと思うけど勇者パーティーのせいかもしれない
ね〜」
「勇者パーティーってどうしてですか?」
ナナにはまだ理解できていないのだろう。
「ナナ、魔物にも自分の住み慣れた住処があるんだ。それをいきなり
襲われたらどうすると思う?」
「それは……逃げちゃいますね〜」
「そう、逃げる先は自分より弱い魔物のいる場所でしょ?」
「あーー!それで最近見ない場所でジャイアントベアが目撃された
んですね!」
「そう言う事!」
カイトに言われてやっと納得したようだった。
そうなると、問題は山積みだった。
勇者パーティーを止める必要がある。
それも、自信過剰な奴が多いとされる勇者というスキル持ちは実に
厄介だった。
「勇者というスキル持ちは厄介なんだよ〜、どいつもこいつも、自
分が一番だと思ってやがるからね〜」
セオドアは前にぶつかった事があるらしい。
それで悪い印象しかないという。
「仕方ないですよ〜、勇者は本当に強いんですから、傲慢にもなり
ますよ?」
メンデも知っているのかしっかり解析していた。
「それにしても、困りましたね〜、あの人達を追ったとしてもそれ
からできる事はなさそうですけど……」
止めることも、説得することも出来ないという。
「でも、こっちに逃げてくる魔物を退治して食い止める事はできま
すよね?」
「たしかに。カイトくんのいう通りですね。ギルドには一報入れて
おいて、明日先に進みましょうか?」
「はい、そうしましょう」
非常食を買いだめると、宿屋に泊まったのだった。




