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最弱冒険者はパーティーから捨てられる  作者: 秋元智也
旅の始まり
48/163

47話 一大事

追い立てられるように魔物が逃げ惑う。


「おい、そっち行ったぞ!」

「はいよっ!」


煌びやかな剣を振り回すのはラキスという男性。

勇者の称号が出て、国から賞金を手にしてからは気に入ったメンバー

を自分のパーティーにいれては冒険を続けていた。


それに応えるように、魔物を拳で吹っ飛ばしたのはアンという女性。

格闘家のスキル持ちで、豪快な戦闘に周りも目を見張るものがある。


「ちょっと、そんなに飛ばさないでよね?魔石取りに行くのが大変じ

 ゃないの!」


魔物に突っ込んでいくメンバーを常に正常な状態へと回復をするのは

このメンバーの要でもある、聖女イザベルだった。


「大丈夫、私が取ってくる」


物静かだが、確実に仕留める事で有名な暗殺者スキル持ちの小柄な少

女は足早におっていく。

彼女はハニエル。どんな武器でも扱える武器のエキスパートだ。


「せっかくなら森ごと焼き払ってもいいかしら?」

「おいおい、それじゃ〜楽しめないだろ?」


眠そうに腰掛けると杖で遊んでいるのは魔法師のイーサだった。

彼女は大きな魔法を得意とし、簡単な一匹焼き払うというのを苦手

としていた。


なので、彼女が手を出すと森ごと焼き払われてしまうのだ。


勇者パーティーが森を焼き払ったなど聞こえが悪い。


ここはロイエンから大分南に位置する森の中。

ワイバーンがたまに悪さをするというのできたのだが、いっそ魔物を

一掃しようとラキスが提案したのだ。


「どいだ?いい案だろ?」

「そんな事していいの?」

「だって、俺は勇者だから!それに魔物がいなくなれば街も楽だろ?」

「それも……そうなのかしら?」

「そうに決まってるだろ?依頼だってしなくていいし、困る人がいる

 訳ないだろ?」


山の奥地に住むというワンバーンの退治を受けるとその付近の魔物

の掃討も一緒にやるつもりで森の中に入ったのだった。


ゴブリン、オーク、コボルト…弱い魔物を退治しているうちにラキス

が飽きてきているのに、気づいた。


「ラキス、ちょっと休憩しましょう」

「あぁ……そうだな」

「みんなもいいわね?」

「はーい」


そこは聖女イザベル。

テキパキとした手つきでシートを敷くとおやつとお茶を出す。


イザベルの持つアイテムにはアイテム収納という効果が付いてい

る。


高くてなかなか手が出ないが、聖女イザベルは国からの支給を受け

られる


「それ、いいよな〜。俺も欲しいなぁ〜」

「それなら勇者ランクを上げればいいのでは?」

「そうだよ!私たちに勝てる奴なんかいないだろ?いっそ、今の勇

 者から奪えばいいんじゃないか?」


アンが提案すると、ラキスが頷くようにその提案にのった。


「いいね〜、それ」

「私は反対です。勇者ランクは国が定めたものです。国の許可なく

 殺害などダメです。堂々と奪うべきです」


聖女イザベルが言いたいのは三年に一度開かれる勇者同士のランク

戦を言っている。


今現在勇者という称号スキルを持っているのは5人いる。

その中でもラキスは最下位なのだ。


その理由は、最近勇者のスキルを手に入れたばかりだから…だ。


次のランク戦で順位を変えれば、問題ない。


それに、パーティーに聖女がいるのが一番大きい。

ちょっと前に寄った街ロイエンでイーサがポーションを大量買いし

ていた。


それを手に持ちうっとりしている。


「イーサ何してるんだ?」

「うーん、そうね〜。ラキスにはわからないわよね〜。これなんだ

 と思う?」

「回復ポーションだろ?イザベルがいるし要らないだろ?」


ラキスの言葉にイーサは首を振った。


「ただの回復ポーションじゃないわ、傷だけじゃない。魔力も回復

 するの!こんなの初めてよ。これがあれば無限に魔法が打てるわ。

 もちろん、魔力だけじゃないわ、気力もいるけど、気力も回復し

 てくれるって言ったらどう?」

「ん〜〜〜?どうって言われてもな〜」


ラキスには別にたいしていいものとも思えなかったらしい。


が、聖女イザベルには目を見張るほど欲しい品物となった。


「それは本当ですの!」

「えぇ、ちょっと飲んで試してみたの。間違いないわ」

「それは………神聖力で作られているという事……すなわち教会が

 売るならまだしも、一般の薬屋で売っていい品物じゃないわ」

「そう!そこよ!………これは教会が一手に掌握すべきものなの」


聖女ならわかる。

外に出してはいけない力なのだと…。


全て教会が握っているから力をつけれているというのに、これが一般

化し、流通するようになったらどうなる?


教会にいく必要がなくなるのだ。



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