46話 前を向いて
食事を終えると、何度もナナ達に謝られてしまった。
「本当にごめんなさい。このバカのせいで大事なポーションを」
「すまない………つい美味そうに見えたから……」
「美味そうに見えたらなんでも食べれるわけじゃないの!前で
一回懲りたでしょ?何度やれば気が済むのよ!」
何度かやっていたらしい。
「大丈夫だよ、そんな高いポーションじゃないし……」
「そうなの?弁償させて!このままじゃダメよ!仲間としてやっ
ていくのに支障が出ちゃうわ」
「本当に大丈夫だって〜」
まさか簡単に作れますなんて言えないからだ。
「それにしても、珍しいポーションだよね〜、最近ロイエンで出
回りはじめたと聞いているよ?」
「へぇ〜そうなんですか?」
「あぁ、それも誰かが持ち込みで売り回っているとか………それも
結構不思議な事に、魔力も同時に回復すると最近人気になって
きていてね〜、そしたら販売元が忽然と姿を消してしまったら
しいんだ〜」
メンデは自分も欲しかったと嘆いていた。
「そうなんですね〜、残念でしたね?」
「あぁ、是非とも詳しく調べたいものだね」
メンデはこういう事を研究するのが好きなのだろうか?
冒険者は戦闘だけだと思われがちだが、たまに研究職も冒険者とし
て活動する人もいるくらいだ。
今日はもっと奥まで行く予定だ。
のんびりなどしていられない。
「さぁ〜、ご飯食べちゃいましょう?」
にっこりと出来上がったスープを差し出したのだった。
思いの外、美味しく出来たと自負している。
ナナも、おかわりするくらい気に行ったらしい。
バンに関しては意地汚くおかわりを何度もしていた。
ゲイルは味を噛み締め、セオドアに対しては恐々と少しずつ食べ
ていた。
「味……微妙でしたか?」
「そうではないのだがな………これはアレが入っていると思うと…
ちょっと……」
苦笑いを浮かべるセオドアにメンデが付け足した。
「昔、これをそのまま食べて大変なめにあったんです。それを思い
出しているんでしょう。それにしても美味しいですね〜。毒きの
こだけど、この美味さならポーション使っても食べたいくらいだ」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
カイトは手慣れた手つきでおかわりを盛っていく。
「カイト、君の両親はどうしてこんな物を食べていたんだい?食事
なら別に食べれるものはあるだろう?」
「うちは………村の嫌われものなので……作物も割高に買わされるん
です。だから、森の中のもので食べれる物を探すしかなかったん
です」
「それは大変だったね…」
「まぁ〜でも、僕を育ててくれた家族ですから…」
「強いんだな…」
「セオドアさん、おかわりいりますか?」
「あぁ、もらおう」
なんだか親の事を話すとむず痒い気がする。
どんなに過酷な場所でも頑張っている両親を思うと、カイトも諦め
られなかった。
立派な冒険者になって、帰った時に自慢するんだ。
そんな気持ちで前を向いて行こうと決意したのだった。




