45話 取捨選択
朝になると、各自テントを仕舞うと朝食の準備に取り掛かる。
カイトは先に沢へと向かうと静かなうちに雷の魔法を放った。
森の中が鎮まり返った中で使うと少々派手なモーションが気に
なるが、感電した魚を回収し帰ってきた。
火を起こしたナナに内蔵を取り除いた物を渡すと串に刺して塩
で焼いてくれた。
「お?今日は魚かぁ〜ってどこで手に入れたんだ?」
「さっきカイトさんが取ってきてくれたんです。新鮮でさっき
まで生きてたんですよ〜」
ナナが嬉しそうに自慢していた。ゲイルとバンも森の中で見つ
けたきのこを持参してきた。
「これって食べられるっけ?」
自信なさげなのは元々の性格らしい。
ゲイルはナナに確認するように渡す。
バンは大雑把なのか、あまり気にもしていないようだった。
「入れちゃえばいいんじゃね?火を通せばいけるだろ?」
「ちょっとぉ〜、そんなわけないじゃん!待ってて、調べるか
ら」
カイトにとっては見た事があるきのこだった。
いつも食卓に並んでいたのでよく覚えている。
確かそのまま食べると、嘔吐、下痢、発熱を引き起こすはずだ。
ただ、煮込む時にポーションを入れて、浄化をかければ美味し
くいただけるはずだ。
「僕がやるよ」
「でも……カイトさんは休んでて下さいよ。私が……」
「そうじゃなくて……それ、普通じゃ食べれないんだよ…」
カイトが指差した方を見ると、大量にあったきのこは鍋の中へ
と放り込まれた後だったのだ。
「あーーーー!ちょっとぉっ勝手に入れないでよ!」
「いいだろ?別に〜食べれられそうだし?」
「それでも調べないとわからないでしょ?」
ガミガミ言うナナにうんざりするバンが朝から元気そうに騒い
でいた。
後から起きてきたセオドアが鍋を見た瞬間固まったのに、カイ
トは気がついた。
あのきのこの事を知っているのだろう。
「なんだい、美味しそうな匂いがするね〜美味そうだ」
「メンデ……あんた………」
「どうしたんだい?セオドア、彼らが作ってくれたのが嫌なの
かい?」
苦虫を潰したような顔をしたセオドアにカイトが笑顔で答えた。
「大丈夫ですよ?これ、下痢や嘔吐しないように作りますから」
「あんた…知ってたのかい?」
「えぇ、まぁ。親がいつも食材として食べてたものなので」
「へぇ〜、変わった親だね〜。」
余計に興味を持たれてしまった気がする。
「ほらぁ〜、食べれるってよ〜」
鍋に入れた張本人がいうと、ナナが心配そうに聞いてきていた。
「これって本当に食べてもいいんですか?本には毒キノコと……」
おずおずと本を見せるナナにカイトとセオドアは苦笑いを浮かべ
た。
「もちろん、毒きのこであってるよ。普通だったら食べれないん
だけど……ちょっと工夫すれば美味しく食べれるんだよ」
そう言うと手持ちのポーションを取り出した。
もちろんただのポーションではない。
聖水で作られた浄化機能付きの高級ポーションだった。
「ちょっと!それ………」
「これをこうやって入れれば〜、毒気も消えてしっかり食べれる
普通のきのこになるんです」
セオドアは頭を抑えると、ため息を漏らした。
「どこの世に高級ポーションを食事に使うバカがいるんだい?浄
化効果と回復効果が同時に発動するから、毒が調和されるってん
だろ?」
「ご明察」
「あんたね〜。そんな風に使ってたらポーションが足りなくなるよ!」
「あはははっ……」
確かにそうだった。
普通ポーションは買うもので自分で作るものではない。
だから高価なポーションをこんな形で使う人間などカイトくらいだろう。
いや。カイトの母親もそうだった。




